いきなりの関西弁で失礼します。。。


以前の 時間外には要注意http://blog.so-net.ne.jp/Herr-Doktor/2005-02-25-4

とかぶる部分もありますが、夜間診療について一言。


前回は判りやすいところからと医療費の面から言及しましたが、

今回は当直とはなにか、という部分から示します。

 

夜間の時間外診療には問題点が多く、非常に不安定な医療事情から、

医療事故の発生医者の過労死という大きな問題が表面化してきています。


それに関して厚生労働省が本腰をあげ始めました。


 

当直月10回など過酷勤務、500救急病院にメス

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news_i/20040527so11.htm


夜間救急等の勤務は許可"宿日直"と認めがたい

http://www.ajha.or.jp/topnews/backnumber/2002/02_05_01_3.htm


以下抜粋。


『過労死にいたるような過剰労働は、医師の健康保全だけでなく、

医療過誤の可能性を排除する面からもちろん改善されるべきことです。

ただし、通知文 書で問題と思われることは、夜間・休日などに当直医が行なう

救急医療がすべて「断続的労働である宿日直勤務」に反しており、

許可の見直し・取り消しの対象 となりえると受け取れることです。』

 

これについて判りやすく説明したいと思います。

 

まず、夜間に病院で医療担当するのは、いわゆる当直医と呼ばれる医師です。


当直医とは、基本的には朝から勤務していた医師が引き続き夜間も病院に泊り込み

翌日もそのまま勤務につくという実質上は連続勤務の中に行われている状態です。


しかし、連続勤務は労働基準法違反にあたりますので、


労働基準法第41条と労働基準法施行規則第23条に基づく許可を受けることによって

断続的労働である宿日直勤務」として取り扱う事として、抜け道を作り上げました。

 

この断続的と定義させるための決まりとして、


『原則として通常の業務は行わず 非常事態に備えて待機する、

実質的な労働を伴わない勤務であると解釈』


つまり



「夜間は当直医は寝ていて、診察は行わないのが原則」


という決まりがあるのです。緊急事態だけに対処することになっています。

 

にもかかわらず、医者がいるところに病気があれば、


診察させる病院してもらう患者

 

という需要と供給の関係が成り立ってしまいます。

 

そこで、医師に夜間診察に対応することが求められ、

当直医がボランティア精神を発揮させてきた事によって、現在の夜間医療を支えてきました。


その一面には、夜間時間外診療により病院が儲かるという事を考えられる方も少なくないと思いますが、

人件費や夜間の過労、医療事故発生の危険を考えると、そんなおいしい仕事ではありません。

 

特に最近では、医師の過労死医療訴訟が問題となって、全体的に医師の

当直業務に対する熱意が冷めてきていることは間違いありません


夜中眠い目をこすって過労を押して診察に当たっても、訴えられたり、過労死する危険が高まっているのならば、

触らぬ神に祟りなし
となってしまいます。


昼間の仕事で十分給料をもらっている上級医師は、そんなリスクを犯す必要も無いので当直などしません。

昼間は無給で働いている大学病院の若い医師が、

過労を押してアルバイトに当直をしているわけです。


私も長い間、そのようにして生活の糧を得ていました。。。


経験の浅い若い医師が、疲れきった夜中に診療にあたるのは、

長距離バスの運転手が、居眠り運転をするのと

同じように危険のように思います。


そんなバスに乗りたい乗客はいないでしょう。

しかし、他にないので乗るしかないのが、現在の医療事情です。


そりゃ、運転手にとっても乗客にとってもいい関係が築けるわけがありません。

事故も起これば、トラブルも起こる。当然の結果でしょう。


そんなバスに乗り込むのが、「狼少年」だったり、「緊急性の無い」乗客だったりするのですから、

ストレスはたまる一方ということです。。。

 

連続勤務を断続的勤務と認める姑息な方法で当直医に夜間診療を任せていた

システム自体にもともと無理

があり、それを

利用する患者側のモラルの欠如があいまって、

当直を担当する医者が過労死し始めたために、


これではいけない、この制度を作りあげた厚生省の責任が問われてくる


と勇気を出して自らの過ちを認めて、現在の制度を見直そうとする動きが、今回のニュースです。。。

 

昔は社会的なモラルが保たれていたので、夜間診療に対して利用者が十分考慮して、


夜間は病院の先生も寝ているから、

こんな程度の病気なら朝になってから受診しよう


と判断していた時代は、本当に急病患者だけ相手にしていればよかったのでやってこれたわけですが、


24時間営業のコンビニが当たり前で、情報が氾濫した個別主義の現代においては、

急を要するとは思えない症状の患者が

『仕事の都合で昼間は受診できませんでした。』

と夜中にやってくるので、ボランティアでは到底やっていけません_| ̄|○

 

<医者の常識、世間の非常識 その6>


夜間診療は緊急事態の診察だけが仕事です!

実質的な労働を伴わない事が当直医の前提です。

 


・・・「だから、緊急かどうかの判断がつかないから、念のため来てるんじゃないか。」

と思われる方が多いでしょうか・・・。


要は緊急とは何か?

という問題に行き着いてしまいます。


この点に関しては以前の時間外に関する記事と救急車に関するいくつかの記事やリンクから考えてもらえればと思います。

しかし、問題意識の低さが伺えますので、根本的には教育の問題に行き着く気がします。


東京消防庁の公開情報 にあるとおり、

日常に接する可能性のある緊急事態に関して、十分に

小学校から教え込んでゆく必要があると思います

 

さて、夜間も安心して質の高い医療を提供するためには、いったいどうすればいいのでしょうか?

簡単に言えば、医者も2交代制にすべきでしょう

なぜそうならないのか、という問題については医者不足が原因でしょうが、いずれまた。