イタリア人ドライバー不在で行われた53周のモンツァでのレースは、終わってみればハミルトンのポールトゥウィン。前戦スパでのバトンのポールトゥウィンもあり、マクラーレン勢の好調が続いています。
()内の数字はスターティンググリッド、Rはリタイヤです。
マクラーレン
1. ハミルトン(1)
R. バトン(2)
ポールスタートのハミルトンは、バトンにかわって2番手になったマッサをもろともせず、ギャップをどんどん広げていき、24周目のピットインまでに約13秒の空間を創ります。
その6周後にトップを走っていたペレスがピットに入ると、自然にルイスがトップに返り咲き、47周目からオプションタイヤ(今回はミディアム)で猛追してきたペレスから4.3秒のギャップで逃げ切り、表彰台のトップに立ちました。
バトンはスタートダッシュが決まらず、マッサに先行され序盤はギャップを広げられてしまいますが、11周目からはそれをどんどん縮めていき、ついに19周目に順位を取り戻します。
23周目にピットに入ったバトンは、ハミルトンとまだピットを済ませていなかったペレスの二人に続く3位でコースに復帰し、30周目のペレスのピットインで2番手になり、予選に続き決勝でも1・2を取るというマクラーレンの完璧なシナリオが完成しつつありました。
しかし34周目に突如起きたバトンのマシントラブルによりそのシナリオは崩れ去ってしまします。
バトンは最終コーナーの「パラボリカ」手前のコース脇にマシンを止め、ヨーロッパラウンドを終える事となりました。
ザウバー
2. ペレス(12)
9. 小林(8)
このレースの一番のヒーローは紛れもなくペレスでした。
ペレスは多くのドライバーがオプション→プライム(今回はハード)という作戦をとる中で、上位陣では唯一その逆のプライム→オプションという作戦を決行しました。
その結果は、ペースを落とさずにタイヤをいたわりながら走れるペレスのドライビングもあった大当たりし、かつライフが長いプライムの特徴も活かし25周目にはトップに躍り出ます。
誰よりも遅らせた5周後の30周目にピットインし、8番手でコースに復帰、その後はプライムで苦しくなるライバルをよりタイムの出やすいオプションを履いたペレスによるオーバーテイクショーの始まりです。
38周目にライコネン、44周目にマッサ、46周目にアロンソと次々に抜いた事に加え、バトンの脱落、ベッテルとミハエルのピットインもあり、あと7周の時点てトップのハミルトンに次ぐ2番手となります。
その時点でルイスとのギャップは11.2秒。1周当たり0.6秒から1秒を削りとっていきますが、ギャップが4.3秒になったところでチェッカーを振られ、2位でレースを終えました。
他人と違う作戦をうまいタイヤマネジメントで成功させ、フェラーリの二人もオーバーテイクするという結果を残したペレスは、ティフォシ(イタリアのフェラーリの熱狂的なファン)にかなりの印象を与えたはずです。
あとはフェラーリの会長であるモンテゼモロにフェラーリ昇格の条件として言われたという「優勝」を残りの7戦で達成できれば、来年のアロンソのチームメイトになる確立が一気に高くなると思います。
カムイはFP2でのトラブルが決勝にまで尾を引いてしまったのか、あまりいいレース展開ではありませんでした。
序盤にペレスやウェバーに抜かれ、アロンソ達と同じ21周目でピットインしプライムに履き替えると、16番手でコースに復帰、その後はライバルのピットイン、バトンとレッドブル二人の脱落により何とか9位入賞し、2ポイントを獲得しました。
フェラーリ
3. アロンソ(10)
4. マッサ(3)
アロンソは序盤からライバルをどんどん抜かし、21周目のピットインまでに4位に順位を上げます。
スターティンググリッドと同じ10番手でコースに復帰すると、ライバルのピットン、セナ、ベッテルのオーバーテイク、バトンの脱落、マッサの貢献で2位になり、47周目にペレスに抜かれてしまいますが、見事に3位入賞です。
マッサはスタートを決めバトンを1コーナーでパスし、マクラーレン1・2の牙城を切り崩す事に成功します。
20周目のピット後は11位でコースに戻り、順位を上げていき34周目のバトンの脱落により再びハミルトンの後ろの2番手に舞い戻ります。
そして41周目にチームプレイでアロンソに2番手を譲り、次の仕事は猛然と追い上げるペレスを4番手に留めておく事でしたが、あまりにもペースが異なり、44周目にペレスに抜かれてしまいます。
その後は5番のライコネンに猛追されますが、何とか4位を守りきりチェッカーを受けました。
ロータス
5. ライコネン(7)
13. ダンブロシオ(15)
ライコネンは17周目のピットインまで7番手をキープし、ピット後は15番手でコースに戻ります。
その後はライバルのピットイン、ピンチヒッターのダンブロシオ、ヒュルケンベルクのオーバーテイクなどで5番手となりました。
出場停止のグロージャンにかわりこの週末はリザーブドライバーのダンブロシオがカーナンバー10のE20をドライブしました。
来年のレギュラードライバー昇格もしくは他のチームでのシート獲得に向けて自分をアピールする絶好のチャンスでしたが、週末を通して特に目立った印象はありませんでした。
決勝も15番手スタートから13番手フィニッシュ。できれば入賞圏で、せめていつもは負ける事の無いトロロッソのリカルド(12番手フィニッシュ)の前でレースを終えたかったところです。
しかし普通に考えればいくらリザーブドライバーを勤めているとはいえ、ダンブロシオはウイリアムズのボッタスやフォースインディアのビアンキと違い、これまでフリー走行で走らせてもらえた事はなく、GP2でモンツァの経験もあるとは言え、やはり唐突すぎた感はあります。KERS無しでのレースも状況を難しくさせてしまいました。
マシンを壊さずにレースを完走したという結果はむしろ合格なのかもしれません。
メルセデス
6. シューマッハ(4)
7. ロズベルク(6)
メルセデスのマシンセッティングは他のトップチームとは明らかに違うものでした。
それはメルセデスエンジンのパワーを最大限に活かすある意味「直線番長」セッティングです。
ダウンフォースを削りストレートスピードを高める事によるタイムの短縮やストレートでのライバルのオーバーテイクがその狙いです。
しかし低ダウンフォースセッティングという事はトラクション不足によるリヤタイヤの空転を誘発し、タイヤの寿命を早めるというデメリットもあります。
それがトップ10フィニッシュ勢で唯一メルセデスだけが2ストップ作戦につながったという流れとなりました。
その作戦は上記のようにスターティンググリッドからは順位を落としてはいますが、結果的にダブル入賞を果たしていますので、一応は成功したと言えると思います。
しかし、タイヤに厳しいよりは優しい方がメリットは大きいので、そこを改善する事が来年のW04を開発する上での優先事項にするべきだと考えます。
フォースインディア
8. ディレスタ(9)
R. ヒュルケンベルク(24)
9番手スタートのディレスタは序盤にペレスとウェバーに抜かれますが、その後はライバルよりもピットインを遅らせた事で7番手に上がっていた23周目にピットインし15番手でコースに戻ります。
そしてライバルのピットインや脱落があり、8番手でフィニッシュです。
ヒュルケンベルクは予選でのマシントラブルによりタイムを記録できず最後尾スタートとなります。
しかしフリー走行ではメルセデスエンジンのパワーを活かし、相当なペースを見せていたので、ピットインの28周目に9番手まで順位を上げます。
16番手でコースに復帰し、また快進撃が続くかと思われましたが、ラスト3周となった時にマシンにトラブルが出てしまい緊急ピットインし、マシンを降りてしまいました。
ウイリアムズ
10. セナ(13)
11. マルドナド(22)
セナはオープニングラップでペレス、ウェバー、ロズベルクを抜く改心のスタートを決めます。
その後ピットを遅らせた事により、一時4番手にまで順位を上げ、25周目にピットイン、17番手でコースに戻るとライバルのピットンと脱落により10位入賞し貴重な1ポイントを獲得しました。
ラスト3周はチームメイトから猛追されますが、無事ポジションを守りきった事もチーム内での評価を上げる事になると思います。
マルドナドはペナルティーにより22番手スタート、36周目にタイヤ交換を済ませオプションタイヤで走り抜き、入賞にもう一歩の11番手フィニッシュでした。
本人も分かって入ると思いますが、光る速さは持っているため、今回のようなスターティンググリッドを下げてしまう無駄な素行が無ければ、チャンピオンシップでもいい位置につけているかもしれませんし、評価も上がる事でしょう。
何よりもグロージャンを反面教師とし、クリーンかつアツいバトルのできるドライバーになってもらいたいと思います。
トロロッソ
12. リカルド(14)
R. ベルニュ(16)
リカルドはピットインを遅らせた事により一時6番手を走行しますが、その後に順位を下げ、10番手走行中だった25周目にピットイン。
16番手から入賞をめざし走行し、ラスト2周で念願の10番手になります。
しかしファイナルラップでウイリアムズの二人を抑えきれず、12番手でチェッカーを受けました。
ベルニュはスタートでコバライネンに抜かれますが、3周目に抜きかえしダンブロシオを追っていた10周目のロッジアへのブレーキングでマシンのリヤに起きた何らかのトラブルが起きて姿勢を崩し、ハイスピードのまま縁石に乗り上げ激しく地面に打ち付けられます。
何とか自力でマシンから降りていましたが、その後の無線で本人が背中に痛みがあると応えていました。
2週間後のシンガポール出走に問題がない事を祈ります。
ケイターハム
14. コバライネン(17)
15. ペトロフ(18)
ケイターハムコンビは14~18番手での走行が続き上位のような結果に終わりました。
マルシャ
16. ピック(20)
17. グロック(19)
ピックは後方でのレース展開、グロックはスタートで順位を失ったのと8周目のピットインにより一時最後尾となったのが響き、ピックの後ろの17番手でレースを終えました。
HRT
18. デラロサ(23)
19. カーティケヤン(21)
こちらのコンビも終始後方でのレース展開となり上記の順位でフィニッシュです。
レッドブル
R. ウェバー(11)
R. ベッテル(5)
レッドブルは2010年の韓国GP以来となるダブルリタイヤという最悪の結果になってしまいました。
2010年と2011年の躍進を支えたブロウンディフューザーが今年は全面禁止された事により、大きなアドバンテージを失ったレッドブルでしたが、信頼性をも失ってきているのかもしれません。
それがモンツァという超高速な特異なサーキットによるものであればまだ安心ですが、またこのトラブルが出るようであれば残りの7戦は厳しい展開となってしまいます。
万全の体制による真剣勝負のチャンピオンシップとなるようにレッドブルとルノー(エンジン開発)は尽力して欲しいと思います。