徳島県は 恐ろしく交通事故が多い。

道がくねって 不思議な標札が乱立し 田畑の横の白いガードレールも たいがいくねっていて塗料が抽象画を描き かつての事故を物語っている。



小学生の私が 倒れている他人の家の植木鉢を見つけて起こしているのを見つけた祖母はこう言った。
「自分がやったと思われる。ややこしいことは 無視しなさい。」



がっしゃん。

バレンタイン間近 他の中学生は もちろんそんな季節柄の話をしながら
冬空とカラスの下を群れて自転車をこいでいる。
そして 一人ぼっちの私の目の前で
老人が乗った車椅子みたいなバイクみたいなものが 強引に曲がろうとしていた車と道の間に挟まった。車椅子風バイクには 杖がさしてある。



「いけるん(大丈夫)?」
私が声を掛けると 老人は驚いたような顔で
「ええ。ええ。」
と 答える。

それだけ聞いて 私が立ち去ろうとすると 車のドアが空きジャージとスーツが降りて来て
「傷ついとう(車が)。」
老人は事態を把握してない顔で
「ええ。大丈夫です。」
と答える。
「違うわ!車じゃ!」
ジャージとスーツ どっちがどうだか分からないけど 怒鳴る。

「けど 車の方が挟みに行ってましたよね?」
と私が言った瞬間 脳内に「ややこしいことは 無視しなさい。」と 祖母の声が響く。

「ああ?お前関係ないやろが!」
「見てました。」
もう一度 脳内で祖母の声がする。冬の風が冷たくて 逃げ出したくなる。

同級生の だっさいパーカーを着て ケバケバしい化粧をした下妻物語のヤンキーみたいな女の子達が 「どしたん?」と寄ってきて
何故かジャージとスーツに加勢する。

「別にあんたら 見てなかったやろ?お前らこそ関係ないやん。」
いつもは この子達がうっとうしいのと怖いのとで 結構私はへーこらしてた。というか 関わらないように気を使っていた私。

何故か平気。

老人は まだ 事態を把握していない様子。

警察 到着(交番の前での事故だった割に 来るの遅い)。





それがご縁で知り合ったジャージさんやスーツさんのお知り合いに
その数日後には私が算数とか理科とか教えてました。

半年後くらいに 田舎のヤンキーガール達が その人達に売られてました。

当時のBGMは テープに録ったニルヴァーナ J・マスシス(ダイナソーJrって言えばいいのに) 成田光三郎。

喫茶店には
カップル ヤンキー 寒い時の喫煙場所探しで落ち着いた 一人ぼっちの私。


徳島は 事故が多い。