ダンス・ダンス・ダンス 物語性に対する敬意 | 圭一ブログ

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圭一のブログです。1984年宮崎県生まれ

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)/村上 春樹


村上龍と村上春樹の比較考察をしている本があったけど
「愛と幻想のファシズム」に対応するのがこれですな。

自分は最近までアンチ春樹だったのだけれど
(村上龍が好きで春樹は嫌いという
 分かりやすいアレでした)
最近とても好きになっております。

インタビューで、自分は物語がこの先どうなっていくか分からない、
ストーリーの展開を自分も楽しんでいる、みたいな
「物語性への敬意」について話していたのを読んで、
それにはとても感銘を受けてしまいました。

この作品もそんな感じで、突然ハワイに行ったりとか
異界に迷い込んだりとか、伏線もなく超能力めいた能力を発揮したり
交通事故とか殺人が起こったりします。
主人公は働かずにブラブラして、「僕を導く何か、つながっている出来事」
をただ待っているという仕組みですやれやれ。

主人公の職業がコピーライターみたいなもので、
それを自嘲的に「文化的雪かき」と言ったり
映画やCMをくだらないと一蹴したり
マセラッティなんか海に突き落としてしまえと嘯いたり
バブル時代の空虚さを村上春樹なりに見事に描いています。

ダンス・ダンス・ダンスというのはつまり
時代とか運命みたいなものと、自分はダンスをせねばならんのだと。
朝になるまでへとへとになってステップを踏み続けねばならんのだと。
なんかそういうことを表現してるのだと思います。

「愛と幻想のファシズム」でクロマニヨンが
「池袋ウエストゲートパーク」のGボーイズ並みに暴れまわり
トウジがアジ演説してたのと対照的で面白い。
サザンオールスターズも「ミス・ブランニュー・デイ」で
バブル時代のいびつさを強烈に表現したけれども、
まーいろんな皮肉り方があるもんだと思います。

これ村上春樹の代表作って気がするなあ。
「1Q84」は2009年にヒットしたけど、
春樹は80年代から抜け出せてないんじゃないだろうか。

ラストの一行は秀逸。素晴らしい。これぞ文学。

「ユミヨシさん、朝だよ」


サザンオールスターズ - ミス・ブランニュー・ディ

MURAKAMI―龍と春樹の時代 (幻冬舎新書)/清水 良典