「役が決まった。」
ということは
次の作品に自分の役はない。
「仕方ないね。」
オーディションの日。特に理由もなくそこにいなければ、当然そうなる。
「自分は特別だと思ってた?」
嫌な笑い方だな。
〈特別〉なんて、オレには一番縁のない言葉だよ。
「別に、特に思い入れもないし。」
全国レベルの部活に凡人が飛び込んだ。そりゃ、楽なわけがない。体力も気力も全投入したってついていくのがやっと。実際ついていけてたのかどうかもあやしい。
けれど「必死にやった」という実感はない。「情熱」なんて言葉はどう振り返ってみてもあてはまらない。
英田の執念深い熱の入れようなんて、絶対にまねできない。サクラの……自分も周りも見えなくなるほどの没頭ぶりなんて、理解すらできない。
だからあれはあれ、これはこれ。自分のレベルでそれなりの努力でこなしていくことにしてた。無理はしないし、いちいち周りを見て焦ったりしない。別に部活に限らず、いつも通りの普通のこと。
そもそも紅時にそんなことを言われる筋合いはない。これまでさんざんサボっておいて、昨日行ったからって何を偉そうに。そんなんだから英田に役をとられて当たり前……
「……あ。」
「あ?」
違う。
「八つ当たり?」
「はあ?」
「英田をとられたような気がしてるんだろ。」
コレだ。
「サクラに。」
それで紅時はオレを道連れにしようとしてる。
不安とは認めたくないモノがあるのは紅時の方だ。
「何でイキナリそんな……」
そういや一つだけ、オレには〈特別〉な力がある……らしい。
根拠は何一つない。けど
「オレの『この手の勘』はよく当たるんだよ。」