俊英・下野竜也がN響に挑んだ斬新なプログラむは観客への期待以上のクリスマスプレゼントになったはずだ。そんな演奏会に行ってきた。
曲はフンパーディンクのオペラ《ヘンゼルとグレーテル》前奏曲で幕は開き、プフィッツナーとリヒャルト・シュトラウスをはさんで、最後も《ヘンゼルとグレーテル》でしめる変則的なプログラムだが、全てが計算されており、下野とN響の至極のハーモニーが楽しめる内容だった。殊に、後半の『死と変容』で聞かせた後期のドイツ・ロマン派が孕む官能的な美しさはこの演奏会の白眉といえ、その美しさの余韻は「夕べの祈り」から「夢のパントマイム」へと受け継がれ、平穏なクリスマスを迎えられる「喜び」を感じながら演奏会を後に出来る…、そんな気になれる、下野とN響のぬかりない演出に感服である。今日の演奏会はこれに尽きる。〔横浜みなとみらいホール〕
【今日の出演者】
下野竜也/ライナー・キュッヒル/NHK交響楽団