糖質制限食ががんに効く、万病に効く、健康に良い万能のダイエットのように思われているようです。
糖質制限について否定するわけではありませんが、行きすぎではないでしょうか?

私は糖尿病患者だったことがあるので、ドクター江部のサイトは何度も読みましたし、参考になることがたくさんありました。

ドクター江部は糖尿病患者には神様のような存在ですが、しかし、糖質制限食に不利な事実を述べず、利点だけを強調するのは賛成しかねます。

ドクター江部が糖尿病患者を励まさなければならない立場はよくわかりますが、スーパー糖質制限食が、健康な人にとっても理想的な食事法との誤解を与えるのは、良いことではないと思います。


私はドクター江部のサイトを何度も読んで、スーパー糖質制限食を経験してみました。
私は、糖質制限食の元祖のアトキンス博士の原書を購入し、一日に数ページずつ読みながら、アトキンスダイエットを実行してみました。
アトキンスダイエットは、ドクター江部のスーパー糖質制限食よりも、もっと厳しく、糖質摂取量を総カロリーの5%以下にするものです。

糖質は、根菜はもとより、葉野菜やヨーグルトに入っていますから、摂取カロリーの5%以内にするには、ほぼ肉食オンリーになってしまいます。

食べて良いのは、チーズ、たまご、ささみ、鶏肉、こんにゃく、おから、プロテイン、魚くらいに限られます。
このような食事では、大腸腸内叢が悪くなるので、たちまち便秘します。


2日間でマイナス1.5キロ
スーパー糖質制限食の最初の2日間で、体重が1.5Kgも減ったので驚きました。
しかし、あとでわかったことは、便秘のせいでした。

最初の2日間は、それまでの腸管内の内容物が順次排泄されたいったせいで、体重が落ちたのでした。
その後も便秘がつづき、下剤を2回かけましたが、あまり効果がありませんでした。

睡眠障害
糖質制限食の欠点は、便秘のほかにあと2つあります。
1つは、睡眠障害です。

何しろ、大脳の血管関門はブドウ糖しか通りません。
糖質制限食では、脳のエネルギーがまったく足りませんから、脳が常にエネルギー不足を警戒します。
私は寝つきが良い方なのですが、なかなか眠られず、眠りが浅くなって、夜中に何度も夢を見て目が覚めました。
2週間の糖質制限食が終わって、元の玄米食を食べた日は、本当にぐっすり眠れました。

ドクター江部は、糖質を制限すると、脂肪のベータ酸化が亢進してケトン体が得られると説明します。
エスキモーがアザラシの肉だけで生きていけるのは、ケトン体が脳のエネルギーになるからだと説明します。
私は、ケトスティック試験紙を使って、毎朝ケトン体を調べましたが、ケトン体は検出できませんでした。

実は、絶食をすれば、脂肪のベータ酸化が亢進し、ケトン体が出ますが、肉食すると、ケトン体は出ないのです。
ケトン体が出ていれば、ケトスティック試験紙で検出できます。
糖質制限食をしている皆さんも本当にケトン体が出ているか、ケトスティック試験紙でテストしてみると良いと思います。
もしも、ケトン体が出ていなかったら、脳のエネルギーは糖新生によるしかありません。


ダイエット7

摂食障害のリスク
もう1つの欠点は、脳の摂取中枢と満腹中枢の機能を狂わしてしまうことです。
人が食事をすると血糖値が上がります。
血糖が上がると、脳がそれを検知して満腹信号を出し食事をストップさせます。
数時間が経過して、血糖値が下がると、脳が空腹信号を出して、次の食事を催促します。
脳はこのようにして、脳自身のエネルギーを確保しています。
私たちは、この食欲システムによって、外部から栄養を取り入れています。

ところが、スーパー糖質制限食では、血糖値が上がらないので、脳が満腹信号を出しません。
血糖が下がらないので、空腹信号も出しません。
このため、スーパー糖質制限食では、最初の2日間は猛烈にお腹がすきますが、3日目からは空腹感がまったくなくなります。
空腹感がなくなるので、体重がどんどん減り、糖質を制限している人は、自分の意志でダイエットを克服したつもりになってしまいます。体重がどんどん減るので自信に満ち、人生がばら色に輝き、あと5キロ、あと3キロと体重を減らしていきます。 このようにして、拒食症にまで行きついてしまう人が多いのです。

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糖質制限食は、糖尿病患者にとっては1つの救いです。
本当は、カーボカウントの方が優れていますが、もっとも簡易な糖尿病の治療食として糖質制限食は悪い方法ではありません。
ただし、糖質制限食は、健康な人にとって必ずしも良い食事法とはいえません。そのことを、ドクター江部は但し書きに書いておくべきだと思います。


アトキンスダイエットの結果
アトキンスダイエットでは、最初の2週間をイントロダクションと呼び、この期間は糖質を総カロリーの5%以下に抑えます。
2週間のイントロダクションが過ぎると、ケトン体が検出できる範囲で、糖質を10gずつ増やしていってもかまいません。
アトキンスダイエットは、肉はいくら食べても良いというフレコミなですが、実際は、蛋白質を食べると、ピルビン酸が得られるので、脂肪のベータ酸化の亢進がおこりません。蛋白質も少なくしなければ、ケトン体が出てきません。
私の場合は、ケトン体が検出できなかったので、アトキンスダイエットは2週間で中止しました。

2週間の結果は、下図のようでした。
私は普段はジョギングをしているのですが、糖質制限食の効果を確かめるために、この期間中、一切の運動なしで実行しました。


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アメリカの論争
アメリカの農務省が健康食ガイドとして、「フードミラミッド」を発表しました。

ダイエット7
これに対して、ドクターアトキンスはフードミラミッドこそがアメリカ人の肥満を招いている元凶だと噛み付きました。その結果、論争になり、ハーバード大学教授とドクターアトキンスの公開討論が行われました。


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アメリカには、全米心臓病協会認証のマークがついたシュガーバーがあります。

ドクターアトキンスが、またしても、全米心臓病協会のシュガーバーこそが肥満を招く元凶だと噛み付きました。その結果、また論争が巻き起こりました。心臓病協会とドクターアトキンスの公開討論会が開かれました。


これらの論争は10年も前に起こりましたが、今も結論がでていません。
結論がでない理由は、アメリカ農務省や全米心臓病協会が健康な人のための食事法を目的にしているのに対して、ドクターアトキンスは肥満者のための食事法を提唱しているからだろうと思います。立場が違うので、論点がいつまでもすれ違うのです。


日本の論争
先日、日本糖尿病学会の門脇孝理事長が極端な「糖質制限食は勧められない」と発言して、今話題になっています。

この発言に対して、ドクター江部らが反発しています。

さらに、2013年3月18日に、日本糖尿病学会・食事療法に関する委員会が、「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」をまとめました。

提言は、糖尿病の治療食は従来どおりの方法でおこなうというものでした。

http://kenko100.jp/news/13/03/19/02


糖質制限食は、糖尿病もっとも簡易な治療食として良い方法だと思いますが、健康な人のための理想的なダイエット法とか、がんに効く、万病に効く食法とまで提唱するのは行きすぎだと思います。

糖質の過剰な摂取はもちろんいけませんが、どこかに最適値があると思います。糖質ゼロは行きすぎだろうと思います。



スーパー糖質制限食でケトン体がでない理由


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絶食をすると、3日目からケトン体が検出できます。

しかし、アトキンス式ではケトンが出ません。
アトキンスダイエットでは、2週間のイントロダクションがすぎたら、ケトンが出る範囲でなら、1週間に10gの割合で炭水化物を増やしても良いのですが、実際には蛋白質を食べると、ケトンが出ないのです。


上図の代謝経路で、絶食の場合は、脂肪が唯一のエネルギー源になるので、脂肪酸がベータ酸化が亢進して、ケトン体になり血液中に放出されます。
しかし、アトキンス式では肉を無制限に食べて良いので、アミノ酸からピルビン酸が得られて、脂肪酸がベータ酸化されたアセチルCoAがTCAサイクルに運べるので、ケトン体が生じないのです。


糖質制限食をしている皆さんも、ケトスティック試験紙でケトン体をチェックしてみてください。
もしも、ケトン体が出ていなかったら、体内で何が起こるでしょうか?
脳のエネルギーはグルコースかケトン体です。そのケトン体が出ていなかったら、考えられることは糖新生だけです。


デトロイトダイエットでケトン体
ケトン体が出れば良いというわけではありませんが、デトロイトダイエットをすると、ケトン体が検出できます。

ケトン体は糖質の摂取量を120gにし、総カロリーを基礎代謝程度にします。

そして、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動をします。


左図は、2003年3月19日~23日まで、デトロイトダイエット中に朝、昼、夕食前にジョギングをしたときのケトスティック試験紙の反応の様子です。5mg~15mg/dmのケトン体が常に検出されています。

糖質の摂取をゼロにしなくても、一日120gに制限し、有酸素運動をするとケトン体がよく出るのです。


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何も、糖質をゼロにまでしなくてもよいのです。