SORTILÈGE

メタル不毛の地フランス。フランスにはろくなバンドがいないと当時よく言われていたが、実際はそうではない。
同時期のヨーロッパ諸国と同様、当時のフランスにも数多くのメタルバンドが存在していたのだが、ドイツや北欧のバンドと違いフランスのバンドは国内での活動を中心にしていたせいか日本ではあまり知られていないだけなのだ。

一般的には７０年代から活動する超ベテランのTRUST（ANTHRAXがカヴァーしたことで有名）やポリドールから国内盤がちゃんと出ていたWARNING、元MANOWARのロス・ザ・ボスの在籍していた女性Voバンド、SHAKIN' STREETなどが僅かに知られている程度だろうか。

一時期フランスのメタルにハマり、軽く追求しただけにもかかわらず想像以上にたくさんのバンドを知って、しかも品質もかなり高くてドイツ、スペイン、ベルギーと並んでフランスはメタルのプライオリティ的に非常に重要な国になった。
フランスNo.1の人気を誇ったADX、フランスのMOTÖRHEAD、VULCAIN、長い活動歴を持つKILLERS。
彼らを頂点として、他にもHIGH POWER、DEMON EYES、DER KAISER、BLASPHEME、SATAN JOKERS、ATTENTAT ROCK、VOIE DE FAIT、STEEL ANGEL、H-BOMB、FISCなどなど数多くのバンドが活動していた。

フランスのバンドが世界的な活動が出来なかったことの理由の１つにフランス語で歌っていたことが挙げられる。
世界一美しい言語だと言われるフランス語、フランス人はフランス語に誇りを持っているらしいからメタルバンドであれそれは同じなのだろう。フランスのバンドは基本的に皆、フランス語で歌っている。レビューなどでもフランス語はメタルに合わないと良く言われていた。

確かにフランス語独特の柔らかさはメタルに向かないのかもしれない。初めて聴いたときにかなりの違和感を覚える。でもそれはフランスのメタルを独特のものにしているとも言えた。
またフランスのバンドの作り出すメロディは米英とは違う独特の、ドイツ、スペインのバンドともちょっと違う、臭くなりすぎないメロディアスさ、言ってみればより日本人の感覚に近いものを持っていたのではないかと思う。

今日紹介するのは、そんなフランスメタルの中でも積極的に国外に売り出そうとする姿勢の見えたこのバンド。

SORTILÈGE

８１年にパリで結成される。イギリスのEBONYのオムニバス「METAL WARRIOR」に参加した後、８３年にオランダのRAVE-ON RECORDSより５曲入りミニアルバムでデビュー。

SORTILÈGE

その後ドイツのSTEAMHAMMERと契約、８４年に1stフルアルバムを発表する。

MÉTAMORPHOSE

このアルバムは英語バージョンも制作され、日本でも発売された。

METAMORPHOSIS ENGLISH VERSION

名盤中の名盤。これ聴かないと始まらない。フランスメタルの全てはここにあると言っていいほど。

８６年2nd。

LARMES DE HEROS

プロデューサーにヴィック・ヴァーガットを迎え、イメージがメジャー指向になった。その割に音質はあまり良くないのが残念。

やや考えすぎか？とも思える作り込んだ楽曲、それをこなすテクニックとパワーは十分、そこにフランスのバンドらしい独特のメロディ乗せ、どうしたら良い曲になるか？どうしたらこのメロディを生かせるか？そういうことを意識して曲を作っていることが分かる。良い曲を書こうという意識が伝わってくる。
2ndの１曲目、"La Hargne Des Tordus" （英語Ver.のタイトルは "Elephant Man"）、サビのメロディは胸を締め付けられる。さらに"Messager" もスピード感がありながら優しく柔らかいメロディに満ちた強力曲、「三十路～♪三っ十路～♪」のコーラスが印象的。