合気道道場にて

前に一度古武術を習得してから運動がてらに合気道に入会してみた。初日から私は横柄な態度で
「とりあえず四段ぐらいほしいから、五、六段の人何人かかかってきて。」
と云うと皆は初心者のくせに何をいきがっているんだ、と苦笑していた。そして五段の先生が
「僕とやろうか?」
と訊いてきたので私は頷いた。勝負は一瞬で決まった。相手が計画なしに突っ込んできたところに体を捌くのと同時に懐に入り、掌底を顎にくらわすと一気に小手返しで投げ倒した。皆その光景を見た後は黙っていたが、九段のおじいさんはおもむろにたちがあると


「僕とやろうか?」
と訊ねてきたので私は二つ返事で了解した。だが対峙した瞬間私は思わず構えを取ってしまった。そこから間合いの潰し合いが始まった。おじいさんが前足を少し出すと私は下がり、私が間合いを詰めようとするとおじいさんは絶妙な間合いを取った。それが数分間続いたのちおじいさんは
「強い! やめだ!」
と云うと元の位置に戻っていった。さすがに九段クラス相手では私も無傷ではなかったであろう。