------------------------------------------
神無月のはじまり。~転職できんの、これ?!
http://ameblo.jp/diavola/entry-10065386637.html
------------------------------------------
採用になったばかりの食品系会社・ユー社を、
転職3日目で退職することを決心したのにも関わらず
社長にそのことを言うチャンスがないまま
刻々と時間だけ過ぎて行く毎日
。
ユー社の社長は出張中ではあったが、
私の退職の要望は、前職の上司から既に耳に
はいっているはずである。
私は、将来のことを考えていた。
食品ユー社での企画部での仕事は
いままでやっていた営業の仕事に比べて
ぐっとラクではあった。
真面目な会社だったから、
やったことは必ず評価してくれるし
業界的にもきちんと手堅くやっていることで有名で
これから伸びる企業であることは間違いなかった。
あえて感想を述べるとすると、
今まで営業畑で働いてきた私にとって、
“外回りに出ない”ということが
居心地悪く思ったことであろうか。
一日中オフィスに座っているだけで給料が入ってくるなんて
ちょっと悪い気さえした。
だから体力的には、比較にならないほどラクだった。
女性営業の辛いことの一つは、
ヒールを履いて重い荷物を持って歩くので、
足のトラブル
が絶えないことでもある。
オファーがあったメーカー・エス社での仕事は
また営業に逆戻りだったけれど、
アメリカのお客さん
へ出向いていって商談ができることや
給料面でのアップ
や待遇は
やはり、聞かなかったことにはできない魅力的な条件。
だから、このメーカー・エス社で
国内&海外営業をやるということは
将来的にも自分の実績にかなり影響するはずだ。
・・・チャンスである。
だから、迷いはない。
しかしその反面、
食品ユー社を退職しなければならないことが
胃が痛くなるほどの試練であった。
食品ユー社とは前職時代からの長年のお付き合いもある。
つまり、
求人情報で飛び込んで、ぽっと採用になっただけの関係ではないし、
食品ユー社とメーカー・エス社は直接取引がないとは言え
間に共通して知る人物
がいたりして
まったく無関係の会社ではないのだ。
退職した後も何かと関係してゆくかもしれない。
そう思うと、下手な辞め方はできない。
「ディアボラさん、お住まいはどこなんですか?」
と、親切そうに聞いてくる若い女性社員。
「ディアボラさん、食べ物の好き嫌いはありますかぁ?
だってディアボラさんの歓迎会ですもんねー」
ニコニコと、聞いてくれるしっかり者の女性。
「ディアボラさんって、お酒好きなんですか?」
と打ち解けたような会話をふってくれた他部署の男性。
普通なら転職先に馴染むための何気ない会話になるはずだが
私は、彼らの無邪気な問いかけに
脇の下に汗をにじませた
。
そして失礼にならない程度の最小限の会話と
微妙な笑顔を残して
いつも早々と口をつぐんだ。
自分で決めたこととは言え、
そんな気の重い毎日を過ごしていた。
-------------------------------------------------
その頃、ジャマールとの関係もきちんと修復できないままでいた。
今思えば、お互い意地をはっていたけれど
何よりも相手のことを思いやる余裕が
私たち2人ともなかったのだと思う。
それに、彼の仕事も急に忙しくなり、
週末も呼び出されたり、
遅くまで基地から出られない日が続いていた。
仕事のことがなければ
私ももっと集中して彼との仲を考えられたのかも知れない。
それは分からない。
今となっては言い訳にしかならない。
転職騒動のことは彼には報告はしていたけれど、
一緒になって考える、と言うスタンスではなかったことは確かだ。
きっと私はもともと、
仕事と恋愛を切り離して考えるタイプなんだろう。
あの時、彼は私が大変そうなのを知っていたと思う。
けれど、それよりももっと彼の頭の中を占めていたのは
「彼女はこんなに仕事のことを真剣に考えられるのに
俺たちの結婚のことは真剣にならない。」
という事だと思う。
確かめたわけではない、
だけど、きっとそうだと思う。
私は、結婚しようとは思っていた。
だけどその前に、今私たち2人が抱えている問題を
クリアにしたいと思っていた。
意地を張った時、
喧嘩になった時、
建設的に物事を考えられなくなっている時、
まさに今みたいに、冷静に居られない時、
私たちは、私たちなりの解決方法を見出して
結婚生活をうまくやっていく術を探し続けることを
お互いに努力を惜しまないようにしようね、と
少なくとも話し合っておきたかった。
だけど、彼はそれを突っぱね続けた。
「俺はやるべきことを全てやった。」
その一点張りだった。
きっと私が何も考えないようにして
何もかも一旦保留にして
具体的に結婚の日取りを決めるとか場所を探すとか
そういう行動をしていたら、
彼は満足したんだと思う。
だけど、式場を決めることは
私にとっては優先順位が低かったんだ。
それよりも、今2人の関係をしっかりと地固めして、
何があっても一緒に乗り越えようね、と
いう気持ちの確認をしたかった。
あの時、私がそう強く思うほど、
私たちはぐらついていた。
何とかしなきゃいけない、
仲直りと喧嘩を繰り返しながらも
私は、ストレスばかりが溜まっていく自分を感じていた。
-------------------------------------------------
社長が出張から帰ってくる日になった。
緊張に身を固くしながら私はその時を待った。
夕方、固い表情の社長に呼ばれ、別室へ入った。
社長は、出張の疲れや色んな気遣いなんかで
文字通り心底疲れきった、と言う顔をしていた。
私は、うつむいて頭を下げた。
「この度は、不義理をしまして、
本当に申し訳ございません。
でも、どうしてもやりたい仕事であって
申し訳ないんですが、辞めさせて頂きたいんです・・・。」
無言のままの社長。
言うべき言葉を探しているという様子だった。
私は続けた。
「こちらの仕事がイヤとかそういうことではないんです。
ただ、海外出張が出来るという点や
・・・それと正直申し上げて、
待遇の面でもあちらの会社の方が良くて・・・」
社長はため息をついて、静かに言った。
「そうですか・・・、
いつ決めたんですか。
もうね、人間関係めちゃめちゃですよ・・・。」
きっと、食品ユー社とメーカー・エス社の
共通に知る人物
ことを
言っているんだと、ピンときたが
「・・・はぁ。」と私はまたうつむいた。
「まぁ、ディアボラさんに言っても仕方がないですけどね。」
「はい・・・。すみません。」
「とりあえず、ちょっと考えさせて下さい。」
「・・・・。」
決意の辞職願いを「考えさせて下さい」、と言われて
私の身はまた宙ぶらりんに浮いた。
席に戻って、私は仕事に取り掛かった。
私の直属の上司も、社内の人も誰も何も知らない様子で、
背後では私の歓迎会の段取りが
ちゃくちゃくと進められているのがビシビシ感じられた・・・。
・・・つづく。
やったからって、特に何があるってわけじゃないんですが
参加してみました、コレ。↑クリック。