たまたま,次のブログを見つけました。

 http://umekakyoku.at.webry.info/200802/article_1.html

とてもきれいな訳がしてあります。
Lindenbaum(リンデンバオム)は普通「菩提樹」と訳されますが,このブログの筆者の方は次のように書いておられます。

--ここから引用です--

「リンデンバウムは菩提樹にあらず?」

言うまでもなく「泉に沿いて茂る菩提樹・・・」の名訳(近藤朔風)で親しまれ、ドイツではジルヒャーの編曲により民謡として歌われている、あまりにも高名な曲ですが、今回の訳では、Lindenbaum(リンデンバウム=リンデの樹)の訳語に「菩提樹」を使わず直訳にしました。その理由は

・リンデ(和名:セイヨウボダイジュ=シナノキ科)は、釈迦がその下で悟りを開いた木、いわゆる菩提樹(和名:インドボダイジュ=クワ科)とは無縁の植物であり、ドイツでは仏教とは無関係に古代ゲルマン時代から親しまれてきた木である。
・ ドイツでは古くから愛の象徴であり、この詩の中では煩悩の象徴になっているリンデを、釈迦の解脱にちなむ木の名で呼ぶのはいささか倒錯的。
・ 「泉に沿いて茂る菩提樹・・・」で慣れ親しんだ、懐かしくも包容力の感じられる「菩提樹」という呼び名に断腸の思いで別れを告げることで、この詩の表現するものを身をもって味わうことが出来る。

三番目は冗談ですが、まあひとつの試みとして読んでいただければ幸いです。なお、ドイツ詩の日本語訳としては「リンデの樹」としましたが、一般にはLindenbaumはそのままリンデンバウムと呼べばよいと思います。

--ここで引用終わり--

そしてこのブログの筆者の方は,

『岩波独和辞典:小型の辞書にもかかわらずリンデの名の由来が明記されている。本書を含め古めの辞書では単に「菩提樹」とされているが、小学館独和大辞典は「(菩提樹など)シナノキ科の木」としている。』

として,岩波独和辞典を利用なさっていることがわかります。ちなみに「小学館独和大辞典」は最近の辞典で,「大辞典」というくらいですから,詳しく書いてある辞書です。

どうやってドイツ語を日本語に訳すか,日本人に違和感なく受け入れられるようにドイツ語を訳すにはどうするかといえば,ドイツ語の意味とニュアンスを正確に知った上で,きれいな日本語を用いるということこなるでしょう。訳す人がきれいな日本語が使えることはもちろん重要ですが,ドイツ語を独々辞典などでじっくり調べる必要があります。それはかなり大変です。初学者ならなおさらです。そうすると,日常,持ち歩けるほどコンパクトな辞書なのに,本来の意味を示して,しかも和訳もつけてあるという岩波独和辞典が役に立ちます。本来の意味が必ずしも正しくその語のニュアンスを伝えるわけではありませんが,目安にはなります。この辞書の欠点のひとつに,新語が少ない(というより,新語が掲載されていないに等しい)ということがありますが,このことを超えて,岩波独和辞典は存在意義があると思います。

この記事のタイトルを「それでも岩波独和辞典は・・・」としたのは,現在では書店で買えないし,図書館によってはもう廃棄処分にしているところもあると聞きましたので,「それでも・・・」と書いたのです。それにしても「廃棄処分」というのはやりすぎじゃないでしょうかねぇ。






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