After World's End ~2nd STAGE~ | ON AIR STORY(´・ω・`)ノ ブログ小説

After World's End ~2nd STAGE~

「お疲れ様」

彼女は一通りエセヤマタノオロチの頭を撫で終えたのか、一歩また後ろに下がって両手のひらを合わせるように拍子を一度だけ打つ。するとエセヤマタノオロチは形を形成するときのように液状化して電子的な魔方陣の中に溶け込んでいく。それは砂漠の砂に吸い込まれていく水のような映像を早送りしている感じだ。最後の黒い点が消えたと同時に魔法陣が中心に向かって回転しながら縮小して消える。


「あ、……」

「どうしたんだ? メアリー」

小さく呟いた彼女はウイルスが完全にいなくなり美しい純白に戻り、ところどころ虫食いのように穴の開いた塔を指差して俺のほうに顔を向ける。


「ログデータも食べた」

「は?」

「ログデータも食べた」

「それって……まさか……」


彼女はそういうと白い何もない空間に右手をかざして一つの移動用の穴をまた開ける。パンパンッと長いドレスのスカートを埃を落とすような仕草をして


「影法師“タイプコード 餓鬼地獄”」

今度は鬼の手のような形に変わった影に手を当ててコード入力?でいいのかな。それをすると足元の影が広がり無数の手が現れる。それを確認したのか、初めと同じようにタンッと地面を蹴るようにして通路に入っていく。


「お、おい復旧はどうするんだ?」

メアリーはこちらを見ずどこか違う方向を向く、無数に揺らめく細い鬼のような手が2本何かこちらに教えようと動いているのを見ているとその腕でバッテンを作り出した。


「いや、ちょっどうするんだよっ!!」

「人の努力に期待する……」

「他人任せっ!?」


こうやって話している間にもまた小さいウイルスは点々と浮遊していたが今度は食べるのではなく鋭い爪のあるその腕で握りつぶすか引き裂いていた。明らかに最初の道よりも浮遊しているウイルスの数が増えている。まぁサーバ復旧の方はおそらく会社側でバックアップを取っているだろうから何とかなるだろうな……。俺は軽くため息をつき画面の中の無責任少女を見ていることにする。淡々とウイルスを狩るその姿はチートだった。

すると机の脇においておいた携帯が震える。どうやら電話のようだ。

「はい、もしもし」

「もしもしタイシか?」

「そりゃ俺の携帯だもの俺が出るよ」

電話の主は隊長。そうかさっきのサーバ携帯会社のサーバだったのか。ここら辺の復旧の速さはおそらく非常時用のサーバで補っているといったところかな。まぁ重要な機関ではあるからそこら辺の備えはしっかりしているだろうし。


「それでどうかした?」

「いや、携帯が復旧したからそっちは大丈夫かなぁと」

「そっちこそ大丈夫なのか?地下鉄とかの交通機関使えないだろ?」

「ん?いや、普通にさっき復旧したぜ?」

どういうことだ?俺たちが駆除したのは通信系のサーバのウイルスの駆除だ。交通機関のほうで独自にウイルスを除去した?その確率はおそらく低い。他の機関よりも先にコンピュータにそこまで密接に関わっていない交通機関の方が独自にウイルスを除去できるとは思えない。なら、他の可能性としては……。


「そうか、ならよかった。とりあえず気をつけてな」

「ああ、そっちもなんともなさそうで良かったよじゃあな」

「おう、また」

俺は携帯の通話を切って机の上におく、

「メアリー、お前以外にコンタクトアクターがこっちに来ている可能性はあるか?」

「? その可能性は低い。私が来るときに壊したから」

「そうか……気になる部分はあるけどとりあえずそれだけ聞けたら十分だ」


「もうすぐ着く」

「次は壊さないようにな」

「……」


とメアリーの無言にわずかな、いやかなりの不安を覚えながらも画面を俺は見つめる。通路の出口を抜けるとそこは先ほどと同じような大きく広く白い空間。今度はレーダーには特に反応はなく画面の中の映像を見ていても正常な白い巨大な塔がそびえている。


「なにも……ないな」

「ちゃんといる」


メアリーが上の方向を指差す。画面が塔の上の方を映し出した。そこにあるのは巨大な円形の黒いベルトその中心には漆黒の巨大な花のつぼみ。白い塔を茎とするならそれは電子世界の巨大な一輪のいびつな花。メアリーが一歩前に出た瞬間。巨大なベルトの帯に一定感覚で線が入ったかと思うと一斉にその線が開き気持ちの悪い赤い眼があらわになる。そしてその眼は一斉に彼女に向けられた。


「なんだよあれ」

「マザー型コンピュータウイルス、一箇所に根を張り子にあたるウイルスを作る」

「そんなのまでいるのかよ……」


気づくとその花のつぼみから黒い波紋のようなものが塔をなぞるように降りてそして空間の壁をなぞるように昇る。何度も何度もだんだんとその間隔が短くなったかと思うと。そのつぼみが開き、塔に黒い不規則な線が締め付けるように入る。初めは見えていなかったがサーバを視覚化した塔にしっかりと根を張っていたようだ。ただそれだけで済めばよかったが気づくと広がるように空間の壁全てに根のような黒い線が不規則に入る。それと同時にレーダーにもウイルスの反応を示す点が点ではなく線として入った。

開いたつぼみの中央に黒い人のような形が見える。下半身は完全に花に飲み込まれているようにしっかりとくっついていて、上半身から上はしっかりとした女性の形をしている。全身は艶やかな漆黒。ショートカットヘアで眼には目隠しをするように黒い布のようなもので覆われている。服は着てないようだったが全身黒なのでボディースーツのような感じといえば良いだろう。


「どこのRPGだよ」

「仮想世界をデザインした人がそういう趣味」

「ああ、なるほどね……」


緊張感のない会話をしているが、俺は完全に動揺してしまっている。明らかに先ほどまでの小さい丸っこいウイルスとはレベルが違うように思えた。


黒い花の中心にいる女性型のウイルスはゆっくりと両手を広げる。それは何かを包み込もうとするようなそんなイメージ。だが実際は包み込むようななんて優しいものではなく花の根元からいくつものツルのような太い縄、いやあれはもう触手と言ったほうがいいな。それが展開される。


「おい、倒せるのかあれ?」

「苦手なタイプ」

「マジですか……」


こちらをじっと見ている複数のベルトの眼がいやに気持ち悪い。そしてあの自由に動く触手。いやな予感しかしなかった。勝てるのか?いや、勝たなければいけないがそれにしても一度撤退するべきなのだろうか。そんなことを考えている合間にも2nd STAGEのゴングがなってしまったようだ。








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