After World's End ~この世界のおはなし~
この世界は未完成の世界である。
それはどの世界においても同じで俺たちの世界とて例外ではない。
それを知ったのはコンタクター(正しくはコンタクトアクター)と呼ばれるものたちとの出会いだった。
出会いとは言うもののそれはコンピューターを介した画面上での出会い。
しかも相手は人間じゃないときたら驚きだ。
もとは人間だったそうだが詳しくは知らない。いや、まだ教えられないのだそうだ。
無口な彼女、白銀の髪に血に染まったような少し黒の入った赤いドレスそして不恰好な大きく白い眼帯。見た目は大人というよりも幼い感じの残ったいわゆる童顔。まるで西洋人形。
どこかで見たようなアニメのキャラクターを想像する画面内の彼女は基本無口だった。
「いや、なんで俺のパソコンに介入してるというか居座ってんの?」
「移動するのめんどい……」
だれがデザインしたのか知らないがよく出来た人工知能といっておこうか詳しくは知らないけど。
会話が基本チャット形式なのが気になるが仕方がない。
「めんどいってまぁいいけどさ」
「いいならここにいる」
と、こんな感じの短い会話のやり取り、彼女についてのことはよくわからなかった。
「というか完全に俺のパソコンのOSまで書き換えたよな」
「そうしないと壊されるから」
「なにに?」
「ウイルス」
ウイルスがデータを壊すものというのは当たり前だがそうそうかかるものじゃない。なにせしっかりと俺はセキュリティ対策をしてるわけだし変なこともすることが無いからだ。
「大丈夫と思うんだがその点に関しては」
「あなたが知っているウイルスとは違う、そのうち分かる」
そう彼女はいうと俺のパソコンの中で寝てしまった、というか電源を自ら切ってもう寝ると言う意思表示をしてくる。それは毎度のことでもう慣れたが。
「というかネットサーフィンとかできね~っ」
俺は仕方ないしもう時間もいいところを回っていたのでといっても11時だが寝ることにした。いつもなら夜中の1時くらいまでは遊んでるんだけどそれが出来ないので本当に仕方が無い。
布団の中にもぐり彼女のことについて少し考えることにしてみた。というか整理しても分からないことが多かったため混乱しているのが大半、実際彼女の居る生活には慣れてはきてるんだけどね。
しかし、よくわからない。
彼女の名前はメアリー・F・ランチェスターという名前らしい、らしいというのは彼女をモデリングした人がそう名づけたということだ。彼女自身だれが自分のコンピューター内のモデルをしたのか分からない、ただそう呼ばれていたことは覚えているのだそうだ。
だれが彼女のような人工知能を作ったのか、彼女自身はもとは人間だということを言っていたがよくわからない。
分からないコトだらけだ。全然、全く、これっぽちも……。
「あ~っもう。無理!!」
とりあえず寝ることにしよう。
考えることをやめて寝るきっとそのうち分かるだろうからな……。
ピーッピーッピーッ!
うるさいと思い布団を少し深くかぶる。
ピーッピーッピーッ!
「うるせぇ……」
けたたましい音が部屋の中に鳴り響く。というかパソコンの警告音!?
「ってなんかやばい!?」
かぶっていた布団を勢いよくはぎパソコンの前へ急いで向かうと。
「おはよ」
「お、おはよう……」
何事も無かったかのように挨拶をしてくる彼女をみて俺は呆然と挨拶を返すだけだった。
「今日も何事も無けりゃいいな……」
そんな感じで朝っぱらからすごい起こされ方をしたわけだが気を取り直して学校に行く準備をする。というかいつものように時間があるのでコーヒーを飲みながらテレビをつけてニュースを見る。うん、いつも通りだ……いつも通り……。
「現在各国のコンピューターに新種のウイルスが発生しあちこちのネットワークを破壊、現在そのウイルスについての解析などを進めているようですが混乱はひどく復旧の目処が全くつかないとのことです。この被害は尋常ではなく、日本各地でもこのウイルスによる被害が多く出てるとのことです」
「今のネットワーク社会においてこのウイルスは大変危険であり、一体どこから発生しているのかわからないそうです。現在、手の打ちようが無いそうで、この混乱で動きが全く取れないのは仕方の無いことでしょう。こちらのテレビ局でもこのウイルスの被害によりネットワークが遮断されています。何とか皆さんに情報を送れるよう最善の努力をします」
「……」
昨日言っていたことはこれのことなのか……。
10月31日、ハロウィンの日のことである。誰かのいたずらにしちゃひどすぎだ、まずは一言「TRICK OR TREAT」と声をかけて欲しいところである。本当に、お菓子あげるからさ。