昔昔、僕がまだ若かった頃のお話。
大学病院での一人当直に少し慣れたときだった。
深夜の当直室に鳴り響く、電話の音(まだ院内PHSなんてなかった)。
電話を寝ぼけ眼でとると、病院の受付さんは、えらく慌てている。
なんでも、うちの大学の皮膚科に以前かかっていた、おばあちゃんが、体調が悪くなってきたので、入院させて欲しい、と家族が連れてきた。
さらには、病院の玄関には家族総出で、入院できないのかと、押しかけている!との、こと。
何じゃそりゃ~!っと、心の中で叫ぶ。
うちの病院の、不文律のルールでは、以前にその科でかかっていれば、夜中でも、その科が扱う病気ならば、診るべきである、とある。
つまり湿疹か何かで、皮膚科を受診していてカルテがあれば、夜中に蕁麻疹がでてきたら、喜んで診ますよ、ということ。
でも、うちの病院で皮膚科しか受診したことが無い患者さんが、お腹が痛くなったら、これは皮膚科の病気ではないので、当番で救急疾患(内科、外科など)を診ている病院をまず受診して、そこで手に負えないなら、大学病院へ搬送する、ということになる。
さらには、病院玄関まで、来ていただいたなら、まず診ること、と、これまた
モンスター患者さんに優しい不文律がある。
僕の母校の産婦人科が、妊婦さんのたらいまわし事件で脚光を浴びました。
当時の当直医は、二人とも病棟処置に手術と手が離せる状況になく、マスコミの理不尽なバッシングに対して、病院長は、当直医の当日の行動のタイムテーブルを公開して、批判したければ、どうぞご批判くださいとしたが、決して理由なく、急患を断るわけではありません。
事件で、たらいまわしにあった妊婦さんには、かかりつけの産婦人科がないという、おかしな点がありました。
やはり、通常は、かかりつけ医を妊婦さんは持つべきだと考えます。
そこで対処不可能で、医大や大病院に応援を要請したなら、事態はもっと良い結果になっていたはずです。
話が脱線しました。
何はともあれ、門前払いはしないで、話を聞きます。
二週間前から、おばあちゃんは食欲が低下してきて、いよいよ今夜何にも食べなくなった。
以前皮膚科に湿疹で受診していたので、医大の皮膚科なら入院させてくれるのではないかと、深夜の家族会議で決まった、という事情である。
とりあえず、その日の内科当直の先生に、お願いして診ていただくことにした。
年齢的にも、体の衰弱や、水分不足で、食欲不振になっているのではないか?という、内科の先生の見立てでした。
点滴して帰宅可能ですよ、と内科の先生が言ってくださったので、大したことが無くてよかったと、胸をなでおろしました。
さて気を取り直して、御家族の説得を試みます。
ご家族の中に、だれぞ常識のある人はいないのでしょうか?
二週間あれば、病院が通常どこでも、営業している時間内に受診できますよね。
なぜ深夜に病院に行こうという話になるのでしょうか?
皮膚の病気でないのに、皮膚科では入院はしていただけないのですけど、、。
と、心の中でつぶやきながらも
10人くらいの、ご家族に僕は取り囲まれながら、できるだけ、分かりやすく説明したつもりでしたが、話が、まったく通じません(汗)
「こんな状態では、とても家では、面倒見られやしません。
皮膚科で、入院させてもらえませんやろか?」
と、どんな言葉にもめげず、口々にご家族は、懇願する。
もちろん、皮膚科の入院を担当している病棟医長の先輩に電話で聞いてみるも、それは認められません、とのお返事でした。
深夜の救急外来での、話し合いは平行線をたどりました。
本当に、困った(泣)
先ほど、相談した、まったく面識もなかった、内科の当直医の先生に、だめもとで頼んでみました。
すると、近くの病院に聞いていただいて、内科で個室料金を払えるなら、今すぐ入院させていただけるというお返事がいただけた、と連絡がありました。
電話口で、何度もお辞儀しながら、次にすることの準備をしました。
病院間での患者さんの移動になるので、救急車を使用します。
救急車の出動を要請して、書類を書きました。
そして、何より困るのは、救急車には、この事態の責任者の僕が一緒に乗って、その病院まで行かねばならないということ。
頼みの綱の同級生達には、電話つながりません(泣)
仕方がない、一時的に大学の皮膚科は、当直医不在になるけど、病棟医長の先生に事情を報告して、救急車で、おばあさんと、近くの病院まで行ってきました。
帰りは、救急車を使えないので、タクシーを自腹で呼んで、大慌てで大学病院に帰ってきました。
なんともやるせない気分でしたよ。
病院は、姥捨て山では、ないのにな~、と思いました。
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