まず、設備、の前に手術場所の確保です。


病室は個室ではなくて、大部屋でしたから、手術できません。

処置室のスペースを、僕が使いたい時間帯を病棟の看護師長に事情を話して、予約しておさえました。


内科系の看護師から看護師長になられた方だったので、目を白黒させながら、僕の気迫に押されて、オーケーしてくださいました。

M師長、すみません。


①そして設備、手術に必要な器具は、病棟には、ありません。


これは、事情を話して、手術場から僕が滅菌済みの器具たちを、レンタルして病棟に持参することにしました。かなり重いので、台車に載せてガラガラと、僕が運びました。


②時間ですが、局所麻酔が効果がある時間内に手術を終える必要がありますし、病棟の処置室は、同じ病棟の皮膚科と耳鼻科の先生たちも使います。事前に連絡を徹底するとともに、手術時間は長くかかっても30分、準備と、傷の固定を含めて一時間が限度だと、考えました。


③人ですが、僕一人では、何事も時間がかかります。

滅菌済み手袋を履き替える手間もかかるし、手伝う人は多いほうが良いです。後輩の形成外科医二人に協力していただくために、二人の手が空いていて、他に予定が無いときを手術する日時に設定しました。


かなり、事前に手術の各作業や人の動きを、入念にイメージしてシュミレーションしました。


皆さんの協力が得られて、手術は無事に予定時間内に終わりました。


後輩の二人の先生、見たこともない治療の看護につきあってくださった、看護師の皆様、ご協力大変大変、ありがとうございました。


しかし、その後が大変でした。

病室の吸引装置は、僕が使い慣れているものではなく、吸引がうまくされていないことがあると次第にわかりました。


僕は時間の許すかぎり、不定期だけど患者さんのところへ行って、持続吸引がうまく作動しているか調べることにしました。

飲み会があっても、お酒は飲まず、飲み会後に必ず病院に寄っていました。


患者さんの、体の持つ治癒力の賜物なのでしょう。


無事に、移植した皮膚はひっついて、縫った傷もなおりました。


なお、この壊疽性膿皮症に手術をすることは、今でも第一の選ぶ手段ではないことをお断りしておきます。


そして、手術後に、持続吸引を使って、移植した皮膚を固定することは、手術当時世界でも、まだ発表されておらず、最新の治療を先取りした形でした。


その後、患者さんが退院して、かなりたってから、英語論文で、この壊疽性膿皮症に手術をして、持続吸引を使って、移植した皮膚を固定する方法が報告されたのを見つけました。


僕は、それを見て日本の形成外科を始めとするお医者さんに、知ってもらおうと、この治療の経過を日本語の論文に書いて発表することを決意しました。


続く、、、