来年1月に発売されるAKB48のアルバムに、モーニング娘。`17が参加するというニュースが、年の瀬に流れてきました。

HKT48の指原莉乃さんとコラボした「サシニング娘。」という名称で、一曲、収録されるようです。

 

AKB48には、アイドリング!!!とコラボした「チューしようぜ!」や、乃木坂46とコラボした「混ざり合うもの」といった前例がありますし、モーニング娘。にも森三中とコラボしたCMソングや、女優の松岡茉優さんが実際のコンサートに参加したドラマなどがあります。

しかし、今回のコラボは青天の霹靂と受け止められ、ファンのざわつきが収まりません。

 

サシニング娘。が「禁断」と呼ばれるのは、指原さんがモーニング娘。のファンだから……という一面ではとらえきれないでしょう。

 

つんく♂さんのモーニング娘。に対するコメントには、おニャン子クラブ時代の秋元康氏を意識したものがありますし、秋元康氏もまた、AKB48の(ダンスやボイストレーニングの)担当者にハロプロの先生を起用するなど、二人のプロデュースには、お互いのやり方を学び、あるいは反面教師にしてきた歴史がありました。

 

そんな2人のプロデュースですから、世間的には同じアイドルでも、モーニング娘。とAKB48には、明確な“違い”が存在します。

①ハロプロが「踊りながら生で歌う」パフォーマンスを重視する一方、国内グループ全体で300人以上の大所帯となるAKBはダミーマイクを使うことも多く、最初から生歌を売りにしていない。

 

②シングルCDのセンターや歌唱メンバーをファン投票で決める「選抜総選挙」は、AKBの代名詞存在に成長しましたが、これは大所帯&選抜制だから盛り上がるイベントです。(ハロプロはメンバー全員が選抜。20年の歴史の中で選抜落ちと言えるのは、アサヤンの演出で小湊さんが外れたぐらいでしょうか?)

 

ちなみに、ハロプロにも公式の投票イベントが1つあります

それはハロプロ研修生の実力診断テスト。デビュー前のメンバーがパフォーマンスを競う大会なので、観客も応援ではなく、審査員の気分になっている=人気投票にならないのが特徴です。

 

③道重さゆみさんの卒業公演のメドレー中に、道重さんが足を痛めるハプニングがありました。ステージ移動が困難になったリーダーを残し、後輩たちだけで(リハーサルの形から修正して)パフォーマンスする姿は、メンバーに迫ったドキュメンタリー映画が評判のAKBなら中心に据えてもおかしくない場面です。

しかし、後に発売されたモー娘。の映像作品では、該当部分の扱いが一部カットされるなど、非常に小さくなっています。

これらは、両者のアイドル文化――何を売りにしてきたのかという話・アプローチの違いであって、優劣や善し悪しはありません。

 

水と油は溶け合いませんが、どちらも人の役に立つ。

ハロプロにもAKBにもファンがいて、各々が楽しみを見つける。

それでいい、それがいいと思っていたのですが……

 

今回のコラボからは、AKB48とモーニング娘。の焦りを感じます。

昨年、結成10周年をむかえたAKB48は、全盛期を支えたメンバーの多くが卒業。残ったメンバーは(全盛期を見て入ってきたという意味で)初期メンバーと比べても決して見劣りしないはずなのに、テレビの視聴者からは「今のAKBは(○○以外)知らない」と言われはじめている。

この状況は、後藤真希さんや安倍なつみさん、辻加護コンビといったメンバーが卒業した後のモーニング娘。に似ています。

 

モーニング娘。は、事務所が生キャラメルに夢中だった時代を(後にプラチナ期と呼ばれるようになる)パフォーマンス路線で乗り切り、道重体制でV字回復したものの、紅白復帰は叶わず。

来年は結成20周年の節目の年。つんく♂さんが総合プロデュースを離れられたこともあって、事務所としては、現状維持ではなく、もっと大きな成功を望んでいるのではないかと思われます。

個々の思惑を超えたところに存在するのは、アイドル戦国時代と呼ばれたブームの斜陽に対する、必死の抵抗でしょう。

禁断のコラボに手を出すことで、世間に健在ぶりをアピールする。

10年20年先のファンを開拓できれば、「アイドルのイベントやライブが普通におこなわれる風景」を残せるのではないか?

そんな思惑でもない限り、「石橋を叩いても渡らない」ことで有名なハロプロの事務所が、今回の企画にノッてくるとは考えにくい。

 

決まったからには、水(酢)と油で、一般人の舌にも合うような、極上のドレッシングを作っていただきたいと思います。

 

 

 

追記

今回のコラボに責任者がいるとすれば、それはAKB48さんの運営であり、アップフロント(モーニング娘。の事務所)です。

アイドルに直接文句を言うようなことだけは、やめてください。