日刊ゲンダイ 11月24日(月)10時26分配信

 とあるカウンター割烹にて。一見客らしきカップルが、一皿出てくるごとにスマホでカシャカシャと、料理が冷めるのも気にせず、写真を撮っている。周りの客もうんざり顔。ついには店主が、「写真はご遠慮ください」――。一億総ブロガー時代。食べ歩きの記録写真をフェイスブックなどのSNSにアップしている読者も多いだろう。以前ほどうるさくなくなったが、「撮影禁止」とうたう店も残っている。はたして店側の主張に法的根拠はあるのか。そもそも料理に著作権ってあるの?

 弁護士の篠原一廣氏はこう言う。

「著作権があるかないかといえば、ありません。民法上も著作権の事例に挙げられておりませんし、芸術性はないという認識が一般的です。食べればなくなってしまいますからね」

 では、撮り放題ということか。

「店が撮影禁止というのなら従わなければならないでしょう。客が暖簾をくぐった時点で、店との間には“店のルールにのっとり飲食の提供を受ける”という黙示の売買契約が交わされているからです」

 つまり料理自体に著作権はないが、店側が撮影を断れば、客も受け入れなければならない。それを拒否して追い出されても、「店は客と売買契約を“結ばない権利”もある」(篠原氏)ので、文句は言えないのだ。

 ちなみに、撮影を禁止する理由は、「常連客に気を使っているケースがほとんど」と分析するのはフードジャーナリストのはんつ遠藤氏だ。

「SNSでも写真が載れば宣伝になりますしね。その証拠に、かつて取材拒否のラーメン店だけを40軒、写真も勝手に撮って載せてしまうという本を出版しましたが、掲載取り下げを求めてきた店は一軒もありませんでした。載ってしまったものは仕方ない、というわけです」

 もちろん飲食店は公共の場。周りの迷惑にならぬよう、ご注意を。