藁をも掴みたい。 | 父と家族の末期がん闘病記

父と家族の末期がん闘病記

2012年6月末、当時65歳だった父が突然、末期の食道小細胞がんとの診断を受けました。
現実と向かい合うため、父との日々を忘れないための記録ブログです。

実家から別府に戻り、無事に臨月を迎えました。
今週末には正期産に入り、暦の上ではいつ生まれてきても大丈夫な時期になります好

ただし、今週受けた妊婦健診では、胎児の推定体重は2180グラム。
ここに来て少し体重増加が緩やかになり、36週に入った胎児としては小さ目のようです。
小さ目という以外は特に問題はないのですが、まだまだ生まれてくる気配は無く・・・
この調子だと、出産予定日以降の出産になるかも知れません。


また、先日外来を受診した父からメールが届きました。
1年半ほど投与を続けてきたタキソテールは打ち切りになってしまったものの、主治医から" TS-1 "という抗がん剤の服用を提案されたのだと。

これで、父にとっては3種類目の抗がん剤。
TS-1は毎日服用する飲み薬で、服用に際して通院する必要はありません。

父は、自分にはまだ打つ手立て( =抗がん剤 )が残されていたという現実に明るい気持ちを取り戻したようで、母からのメールによると、「 TS-1にものすごい期待を抱いており、この薬に賭けている状態 」なのだと。。。


でも実はこの薬、そんな父の期待に添える薬ではないのです。


種明かしをしてしまうと、先般の帰省時、私と夫で主治医の話を聞きに行った際、父には秘密裏に夫から主治医に処方の提案をした薬なのです。

その目的は" 治療 "ではなく、あくまでも" 父の精神安定 "のため。


はっきり言って、父はとても精神的に弱い人間です。
自分にはもはや打つ手立てが残されていないと知ったら、体よりも先に、精神から駄目になってしまう人間です。
抗がん剤の副作用で体がボロボロになったとしても、抗がん剤に望みを託し、抗がん剤にすがり、抗がん剤に精神の拠り所を求めているのです。


主治医の立場からすれば、副作用はあっても、患部に効かないと分かりきっている抗がん剤を投与することは打ち切るという判断ですが、こうした父の性格を考慮し、夫が主治医にこの薬の投与を提案・お願いしてくれたのです。

尚、TS-1は一応食道癌への適応のある薬ではあるものの、副作用が殆ど見られないと同時に、臨床効果もほぼ期待することは出来ません。
まさに父のような、精神安定を求める患者のために投与される薬。


夫から主治医に提案したものの、主治医は「 お父さんと相談して決めます 」と言っていたために投与してくれるか分からず、父にも母にも、TS-1の話は一切していませんでしたが、結果的に主治医が投与してくれたと分かって安心しました。

そして、母にだけはこの裏話を話し、あまり期待しないようにと伝えました。
母はTS-1が処方された経緯を知っても、「 パパにとっては良かった。薬があるというだけで、パパの精神が安定してる。 」と言って貰えました。


病は気からというように、父には精神面で病気に負けて欲しくはないと思います。
精神力だけでどうにかなる病気ではないと分かっているものの、父にとっても私にとっても、今はそのことが希望の糧です。


その後、父の様子を知るのが怖くて私から父の病状を尋ねることもせず、たぶん母も私に心配かけまいと連絡してくることもありません。
実家からの電話やメールは何かあったのではないかとドキリとしてしまうので、正直このまま連絡無いことすら願ってしまう、切ないこの頃です。