DDTグループというのは実に破天荒だ。それまでの体育会系プロレスに対して文科系プロレスを標榜する決して保守的では無い団体だが、神聖なリングの上で酒を呑んだり尻を出したり、はたまた今回のような若手だけの興行をしたり。アントニオ猪木はどう思うだろう?亡きジャイアント馬場、はたまた力道山大先生はこれを見てどう思うだろうか?

FullSizeRender.jpg

DNA (DDT New Atitude)はDDTプロレスリングの若手選手での興行である。去年観に行った第一回興行である「DNA1」では河村選手、鈴木選手と勝俣選手以外は全選手デビュー戦という常識外れな大会だったが、あれからDNAの選手達はどのように成長したか…

FullSizeRender.jpg

この日のオープニング マッチは鈴木大選手 vs タイガー ベットシン選手の兄弟対決だ。
肉親だからこそだろうか、序盤から気合いの入った展開で、最初はグランドの攻防であったが、やがて卍固めでの攻防に。つくづく思ったが鈴木選手はあの体型であのコスチュームなんだからパワーファイターでなければおかしい。樋口選手に対抗出来るのは唯一DNAでは鈴木選手だけというくらいになってほしい。
試合は弟のベットシン選手がまさかのランニングエルボーで勝利した。

第2試合は渡瀬瑞基選手 vs 宮本裕向選手だ。渡瀬選手はデビューしたばかりの選手で、ヤンキー2丁拳銃の宮本選手とのこのカードは破格の扱いといえるだろう。かなり健闘したがいかんせん宮本選手のキャリアには敵わない。最後は宮本選手のWARスペシャルでギブアップしてしまった。まだ技数が多いとはいえないので今後に期待したい有望な選手だが、渡瀬選手は吉本興業とDDTとのダブル所属で、これから漫才とプロレスの両立は大丈夫なんだろうかと思ってしまう。

第3試合は宮武俊選手 vs 風戸大智選手だ。両者リングインの段階で大声でけん制し合い、ハイパー合戦のようになった。このハイパーのままゴングが鳴り、互いにその勢いが加速したままに試合が始まった。今回は宮武選手に応ずるように戦っていた風戸選手であるが、次第にエスカレートする勢いでスライディング アックスボンバーを叩き込み、さらにシスターアビゲイルでトドメを刺した。負けはしたが宮武選手もなかなかやると思った。かつて全日本プロレスが明るく楽しく激しいプロレスをキャッチフレーズでやっていたが、文字どおり明るく楽しく激しいプロレスを魅せてくれた。スタイルはともあれ、これは多くのレスラーが憧れるレスリングのカタチなんじゃないだろうか。

セミファイナルは勝俣瞬馬選手 & 岩崎孝樹選手 vs 中津良太選手&井上麻生選手のタッグマッチだ。体は小さいが流石に勝俣選手だ。いや、体が小さいからこそ体全体を使う術を知っている。リングを味方にしている。また、DNAから約一年、一番成長したのが今回の岩崎選手のように見えた。迫力のある攻めは、全日本の宮原健斗選手を彷彿とさせた。対して中津選手であるが、この選手は重い打撃だった。井上選手は飛び技はいいが全体に動きが少し緩慢に見えた。上手にやろうという先にある叩き潰すという気迫はこれから身につけてくるのであろう。器用貧乏で終わって欲しくない。
試合は井上選手が450°スプラッシュで岩崎選手をフォールして勝利した。

メインイベントは樋口和貞選手 & 中嶋勝彦選手 vs 坂口征夫選手 & 梅田公太選手のタッグマッチだ。坂口選手の親父さんの試合は散々観てきたが、当時から新日本プロレスでも一番強いんじゃないかと思っていた。御子息の征夫選手は親父さんとは全く違うファイト スタイルだがこれが正解だと思う。坂口選手と中島選手のキック合戦は中島選手のメカタのあるキックに少し押され気味であったが技のコンビネーションで応戦する。恐らく坂口選手はこのキックで感じるものがあった筈だ。梅田選手の体を使ったキックも相変わらずいいのだが、中島選手の重いキックには苦戦していた。いわばキック三人衆の中で唯一違うのは樋口選手だ。こうなると樋口選手は目立つ。試合は樋口選手が轟天で梅田選手に勝利した。
これを契機にして樋口選手と中島選手はKODタッグを狙うという。楽しみだ。

こうして常識外れの大会の10回目は終わった。


プロレスとは一字一句違いの無いように伝承する類いのものでは無いし、ましてや破壊する事でも無い。プロレスとは新たに創り出すこと、この星の元にそもそも生まれている事に改めて気付かされた。新たに創り出すことの為なら昔のスタイルを踏襲てもいいし、業界のタブーを破ることもあっていいと思うが、それを目的としたら違うと思う。
ユニオン プロレスを観るようになって、いいプロレスとはリングの中と外が一体になる事じゃ無いだろうかと思うようになった。
だからプロレスは今を生きるレスラー達が考えればいいのである。プロフェッショナル レスリングとしてそれが正しいかどうかは現在のDDTグループの観客動員数で決着済みのハナシである。
これからもバンバン自由にやっていただきたい。

さて、本大会に先立って元ユニオン プロレスの小高イサミ選手が新団体「プロレスリング BASARA」を立ち上げた。今回「DNA10」に参加した風戸選手ら元ユニオンプロレスの選手達が戦列に加わった。
どうせやるんならBASARAでしかお目にかかれないような試合を期待したい。

それと怪我で長期欠場しているが、ユニオンプロレスの最後の遺伝子を継いだ河村選手には1日も早く復帰して、出来ればBASARAに合流してもらいたい。今の河村選手の心中は福田選手が一番解るのかもしれない。いや、福田選手と組むのも面白そうだ。

ともあれ、これからのプロレス界は若い彼等の肩にかかっている。


FullSizeRender.jpg