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・円安のメリット、デメリット

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☆円安のメリット、デメリット

・ドル円レート、8カ月連続上昇

ドル円は2012年9月末の77円台半ばから2013年4月末の97円台後半まで、前月比で7カ月連続上昇し、変動相場制下で過去3回ある最長連騰記録に並んでいた。5月31日は100円台前半で引け、過去最長の8カ月連続上昇となった。

もっとも、月足では8連騰とならなかったまでも、2、3年以上のドル高円安トレンドが続いたことは過去何回かある。
参照:ドル円レート1971年1月~2013年5月
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今回の円安トレンドの特徴的な点は、政府・日銀による円売り介入を伴っていないところだ。この8か月間、外貨準備高はむしろ減少していて、それが政府の諸外国に対する「円安誘導ではない」との説明の根拠ともなっている。未曾有の金融緩和も、デフレからの脱却が狙いなので、G7は結果的な円安進行を容認せざるをえなくなっている。

また、過去の円安局面との大きな違いが、貿易赤字が定着しつつある点だ。2011年、12年と2暦年連続で赤字となったが、2013年4月までも10カ月連続の赤字で、5月も貿易赤字が継続する見通しだ。輸出による外貨収入の円転に比べ、輸入の外貨買いは支払いなので、外貨調達に猶予期間を取りにくい。市場にはコンスタントに外貨買いが出易いという、実需面での円売りが、円買いを凌いできているのだ。
参照:日本の貿易収支1985年~2012年
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とはいえ、シカゴ筋の円売りポジションが膨らんでいるように、投機筋は大きく円を売り越している。相場は投機筋のポジション調整などで波動を描きながらも、ファンダメンタルズが指し示す方向に向かう。トレンドはドル高円安方向かと思う。



・円安はインフレにつながる

原発は稼働停止したが、代替エネルギーが原発に取って代わるには時間がかかるので、電力源は火力発電への依存を強めている。円安による原油や天然ガスの輸入価格の上昇で、電気・ガス料金が引き上げられている。

また、アップル日本法人がiPadの日本国内での販売価格を予告なしに約2割値上げしたように、輸入品の値上げラッシュが予想できるようになってきた。その意味では、デフレ脱却は着々と進み始めたようだ。

とはいえ、個人所得が増えずにインフレが進行すれば、生活は苦しくなるばかりだ。個人だけではない。輸入製品や部品、原材料や燃料費を、国内販売、サービス価格に転嫁できなければ、事業会社の経営も苦しくなる。アップルのような競争力のある製品を持つ大手ならともかく、下請けや中小企業の中には、コストアップを製品、サ-ビス価格へ転嫁することが難しいところがでてきている。ここが、所得増、消費増がもたらしたインフレではなく、量的緩和や円安など、通貨価値下落がもたらしたインフレの問題点だ。これは円安のデメリットだといえるだろう。



・円安で輸出が回復するか?

円安のメリットとして、日本の製造業の国際競争力の回復がある。とはいえ、円安になっても、必ずしも輸出が回復するとは限らない。下のグラフは、上で参照した日本の貿易収支と、ドル円レートとを繋ぎ合せたものだ。
参照:日本の貿易収支とドル円レート1985年~2012年
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グラフで見ると、ドル円レートと輸入金額、輸出金額には相関関係がみられない。貿易収支とも、有意な相関がみられるとはいえない。

円安は輸入価格、輸出価格を共に上昇させる。海外から高く買うが、海外に高く売ることができる。この時、数量がこれまでと同じままなら、輸入金額、輸出金額を共に上昇させることになる。円高の場合は反対だ。つまり、他の要因を加味することなしには、輸入金額と輸出金額の差額である貿易収支が、円安で黒字となったり、円高で赤字となったりすることはない。

グラフでは円安時でも、輸入金額、輸出金額が共に増加する傾向がみられない。同様に円高時に、輸入金額、輸出金額が共に減少する傾向がみられない。このことでは、何らかの理由で輸出入の数量に変化があることが分かる。つまり、為替レートそのものが貿易に影響を与える度合いは、原則的には軽微だとみなしていいかと思う。

そこで、「円安=製造業復活」は幻想だという見方がでてきている。

円安だと輸出価格は上がる。なのに直近の輸出金額が減少してきているのは、輸出数量の減少率が価格の上昇率を上回っているからだ。「これは、日本製品の競争力がなくなってきているためで、円安による輸出回復で景気を刺激するシナリオはすぐには成立しない」というのだ。日本の製造業は既に競争力を失っているので、「輸出産業の衰退は必ずしも悪いことばかりではない」とする識者さえいる。


この小見出しは、「円安のメリットとして、日本の製造業の国際競争力の回復がある」と書き始めた。私は、円安定着は輸出企業の収益改善を通じ、日本経済にプラスとなるとみなしている。

総務省統計局のデータでは、2000年第1四半期の勤労世帯1人当たりの1カ月の実収入は16万9600円、可処分所得は14万2626円だった。これが、2012年第4四半期には実収入が13万9137円、可処分所得が9万9321円と、それぞれ18%、30%も減少する。ところが、ドル円レートが130円から90円になったために、ドル建ての実収入は1305ドルから1546ドルへと18%上昇するのだ。

このことが意味するのは、この期間を通じて、日本企業は雇用調整や人件費削減、あるいは研究開発費や設備投資でのコストカットなどで競争力を失ってきたが、なおドル換算の国際水準ではコスト高が進み、さらに競争力を失ってきたということだ。

このまま円高が続けば、日本人の所得が減り続ける一方で、生産コストは上がり続け、日本経済は致命的ともいえる大打撃を受けていたかもしれない。だからこそ、私は2010年末に書き上げた原稿を、ブログや電子本で発表し、円安誘導を訴えてきた。
参照:ユーロ周辺国と日本の選択肢;北風と太陽

参照:「ユーロと円」日本は円安誘導政策を急げ!



円安トレンドが定着すればどうなるか? 勤労世帯1人当たりの1カ月の実収入がすぐに上がることがないとすれば、ドル建ての実収入が急減することにより、製造業の生産コストが劇的に下がることになる。競争力が回復し、ひいては、個人所得の増大にも結び付くことが可能となってくるのだ。

そうでない場合には、劇的に下がった生産コストを活かして、日本への工場回帰が起きる。雇用の拡大が起きるのだ。所得増か、雇用拡大か、いずれにせよ日本経済のプラスとなるかと思う。



・円安メリット

円高で割高となっていたのは製造業のコストだけではない。下げ続ける実収入でも、ドル建てでは増え続けてきたように、日本のものすべてが割高となってきた。下のチャートのような製品があれば、ずいぶん高くなったと感じないだろうか?
参照:ドル円リバース
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日本の農産物も、観光業などのサービス価格も、国内で横這っていたとすれば、国際的にはこのように大幅値上げを続けてきたのだ。4月の訪日外国人客は前年同月比18%増の92万3000人と、2年9カ月ぶりに過去最高を更新した。このまま円安トレンドが続けば、過去最高を更新し続ける可能性が高い。

また、2012年末の日本の対外純資産は11年末比11.6%増の296兆3150億円と、2009年に記録した過去最高を更新した。対外資産残高は13.8%増の661兆9020億円で、増加は4年連続。対外負債残高は15.7%増の365兆5880億円と、3年連続で増えた。換算為替レートは1ドル=86円32銭だった。先週末のドル円レートは100円前半なので、対外純資産はここからさらに16%ほど増えていることと思われる。

そして、円安が株高を伴っていることで、公的年金の運用益や、企業の財務面での収益増にもつながっている。

このように円安のメリットは非常に大きい。もちろんデメリットもあるのだが、ドル円レートの推移や、個人所得が示唆しているのは、あまりにも円高が行き過ぎていたので、このレベルで円安デメリットを主張するのはバランス的に偏りがみられるということだ。



・高収益はすべてを覆い隠す

経済のファンダメンタルズが為替レートや株価に大きな影響を与えることには、異論がある人は少ないかと思う。同時に、為替レートや株価も経済のファンダメンタルズに大きな影響を与える。このことにも異論のある人は少ないだろう。にもかかわらず、日本経済の衰退の主因は円高であり、円安になれば、その要因の多くが払拭されると述べる人は少ない。

識者たちが指摘しているように、日本企業は数多くの問題点を抱えているが、これだけの環境下でも、多くの日本企業は健全な経営をしている。また、問題を抱えているのは日本企業だけに限らない。過去20年ほど、日本企業だけが抱える特殊な問題は円高だったのだ。

円高に対抗できずに、ほとんどの努力が水泡に帰さないまでも、競争力の低下となってきた。円安・株高で収益が上がり始めると、今度は構造改革など、必要な努力をしなくても何とかなるようになってくる。儲けは怖い。高収益はすべてを覆い隠してしまう。それこそが、円安の本当のデメリットだ。そう言える時代が、来るかもしれない。来て欲しいものだ。

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