同窓会

「カチッ」
「ジリリリリリリ!」
「リリリリリリリ!」……
「バチッ!」
 目覚まし時計をとめてベッドから起き上がる、今日は同窓会に行く予定だ、手早く準備を済ませて家を出る。
 東京駅に着いた俺は、昼食用にお茶とおにぎりだけを購入してさっさとホームに向かった。
 新幹線に乗り込み、自分の席に付きおにぎりを食べて発車する前に眠ってしまった。
 途中、乗り換えの駅でサトシと合流し、俺は駅構内のATMでお金を下ろし、同窓会会場に到着した。
  俺は一番奥にある小さなテーブルの席に座った。
 この席を選んだのには理由があった、朝からまともに食事を取っておらず腹ペコで、2人分しかないこの席ならばなるべく多くの食べ物にありつけると思ったからだ。
 それに前の席に座っているのは小食そうな小柄な女性だ、名前はたしか、レイカだ。
「レイカ、さん?」
 俺はおそるおそる聞いた。
「ええ、お久しぶり」
 それだけ言ってレイカは入口の方を見ていた、この席は一番奥にあり、入口の方を見ていると今日の参加者を一望できたレイカはただそれを見ているようだ。
 思い出したが俺はこのレイカという女性が苦手だった、俺は小学校の頃から何をするにも冗談やいたずらを挟まないと気が済まないところがあり、今思えばくだらない事ばかりしていたのだが、レイカは暗い、おとなしいと言うよりも大人びた感じで、軽く受け流されてしまうのだ。
 俺もレイカと同じ様に入口の方を眺めていた、やがて全員揃ったようで皆の手元に飲み物が配られる、アキオが乾杯をして宴が始まった。
 俺は料理を食べ、時々別の席に移動したりしながら昔の友人と思い出話や最近の話で盛り上がていた、レイカは席に座ったままで周りの様子を伺いながら料理を食べているようだった。
 やがて店員がなにやら運んできた、鍋だ、俺は待ってましたと言わんばかりに自分の席に戻って鍋が運ばれてくるのを待ったレイカは相変わらず入口の方を見ながら皆の様子を伺っているようだ、よく見ると時折なにかメモを取っているようだった。
 俺は何をしているのか気になり立ち上がってレイカの方を覗き込もうとした、その瞬間。
「カチッ」
 音が鳴って目の前に赤い光が灯った、火だ、店員が鍋を置いてテーブルコンロに火をつけようとしていたらしい、俺は驚いてテーブルの上に置いてあったコップを落としてしまった。
「すいません」
「あ、いいですよ」
 俺は謝って慌ててコップを拾い上げる、その様子を見て少し周りが静かになったがやがてまたガヤガヤと話し始める店員にウーロン茶を頼んで席に座りなおした、慌ててしまって恥ずかしい、まだ少し心臓がどきどき鳴っている。
 店員が持ってきたウーロン茶を飲んで落ち着かせ鍋の様子を見る、レイカが話しかけてきた。
「ねぇ」
「何?」
「さっきのどうしたの?」
「ああ、ごめんね、急に目の前に火があったからさ」
 自分自身でもよくわからないが、あまりにも近くに火があったり、大きな火を見るとびっくりしたりどきどきしてしまうのだもしかしたら何かトラウマがあるのかもしれない。
「火が怖いの?」
 考えてる事がわかったのかと思ってびっくりした。
「ん、目の前にいきなりきたりするとちょっとね」
「昔、火事にあったりとか?」
 何故レイカはこんなに気にするのだろう、少し不思議に思ったが俺は適当に答えた。
「ああ、そうかもしれないね」
 そんな事を話しているとアキオが立ち上がって手を叩いた。
「パン、パン、」
「はい、注ー目ー」
 アキオは何やら紙と鉛筆を配り始めた、どうやら皆の連絡先を集めるらしい、俺とレイカも紙を受け取った、レイカは紙に何やら書くとすぐに立ち上がって俺の横に立って言った。
「これ、宴会が終わったら来て」
 そう言って俺に紙を渡し店を出て行った、書いてあるのは住所のようだ、見覚えがある確かこれは地元の方の住所だ俺はその紙をポケットにしまうと自分の連絡先を紙に書いてアキオに渡した。
 見渡すと既に何人かはもう帰っていたり帰る準備をしていた、残っているのは10人程だろうか、席に座ってウーロン茶を飲んでいるとアキオが声を掛けてきた。
「ディー君ディー君?」
「おう、酔っぱらい」
「いやー、今日は遠くからわざわざありがとうね、当然行くよね?二次会」
 レイカに渡された紙の事が少し気になったが俺は二次会に行く事にした、支払いを済ませ店を出る、二次会に向かうのは10人位のようだ。