第4回本屋大賞が発表になった。結果、講談社の佐藤多佳子「一瞬の風になれ」全3巻になった。

受賞作は大賞にふさわしい小説だと思うし、結果に異論はないが、本日の大賞作の売れ方がどうもおかしい。昨年、第3回の「東京タワー」も大賞受賞前までにかなり売り切った感があったため、実際、4月の発表後に売れるか心配していた。ところが蓋を開ければ、「東京タワー」が再び爆発的な売れ方をすることになった。

 今年のケースは昨年とは違う。まず大きな違いが直木賞受賞がなかったこと。つまり2月下旬から3月に例年売るべく直木賞受賞作がなかった。その穴を埋めたのが、「一瞬の風になれ」をはじめとした2月末には発表になっていた本屋大賞候補作品。しかも本屋大賞で直木賞該当なしの悔しさを晴らすという全国書店員の妙な結束が生まれていた。全3巻の「一瞬の風になれ」が受賞すれば、直木賞の分も取り返せるかも。投票前から決まっていたといってもいいかもしれない。そのため、重版も2、3月に2回はあったし、在庫を切らさないようにと仕入れていたし、または「私の予想では本屋大賞はこれだ」というPOPで売ってもいた。結果は予想通り。さらに昨日の本屋大賞受賞式の後、午後7時30分から大賞受賞作として販売可という、ハリーポッター並の変則
販売時間規制を導入。昨日の夜から受賞帯付きの「一瞬の風になれ」を店頭に並べば、反応は違ったのか。
 第4回にして多くの書店が、ましてやお客様も簡単に予想を的中できるような事態になったかもしれない。直木賞受賞してもおかしくなかった「一瞬の風になれ」に本屋大賞を受賞させることができたという本屋大賞の元来の存在意義は全うしたことになるが、本屋大賞のベストセラー偏重の傾向は否定できない。毎回、第2位の作品が本屋大賞にふさわしいといつも思う。ちなみに今回は「夜は短し歩けよ乙女」の森見登美彦だった。