偕行会が6800万円所得隠し 名古屋共立病院など運営 | 脱税事件簿ブログ

偕行会が6800万円所得隠し 名古屋共立病院など運営

(概要)
 名古屋共立病院(名古屋市中川区)などを運営する医療法人「偕行(かいこう)会」(同)が名古屋国税局の税務調査を受け、2010年3月期までの7年間で6800万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。偕行会は、理事長(70)の住宅改修費を肩代わりしていたほか、勤務実態のない研修医の人件費を計上したとされる。
 国税局はこうした所得隠しの手口を「医療法人の所得を圧縮した悪質な経理処理」と判断。調査結果を受けて国税庁は3月、公益性が高く優良な医療法人を対象に法人税が8%軽減される「特定医療法人」の承認を取り消し、06年期にさかのぼって軽減分2億5千万円の返納を求めたもようだ。
 関係者によると、理事長は05年7月、中川区の自宅で防犯設備などを取り付ける改修工事を実施。その費用2千万円を医療法人経費に紛れ込ませていた。名古屋大研修医が勤務しているように装った人件費3千万円も計上したほか、計算ミスなどによる申告漏れも3千万円程度あった。
 国税当局は重加算税を含め計2500万円を追徴課税したとみられる。今回の税務調査について、偕行会は本紙の取材に「修正申告を済ませている。詳細についてはお答えする必要はないと思っている」と話した。
 偕行会をめぐっては、愛知社会保険事務局(現東海北陸厚生局)が08年7月、医療保険が適用されない手術支援ロボット「ロボドック」の治療で名古屋共立病院が診療報酬を不正に請求した疑いで監査。過去の税務調査でも、02年3月期までの3年間で約1億2千万円の所得隠しが指摘された。
【中日新聞4月21日】
 
(解説)
 「2010年3月期までの7年間で6800万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。」と記事にある。悪質とみなされ、7年分やられたのであろう。
 
 ただ、そんなことより「公益性が高く優良な医療法人を対象に法人税が8%軽減される『特定医療法人』の承認を取り消し、06年期にさかのぼって軽減分2億5千万円の返納を求めたもようだ。」の方が、きついね。
 
 特定医療法人制度の概要(厚生労働省HP)
 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/tokutei.html
 
 平成15年度税制改正において特定医療法人制度が改正され、平成15年4月1日から特定医療法人の承認は国税庁長官(改正前は財務大臣)が行うこととなっていた。
 
 平成21年3月31日現在の特定医療法人の数は402だが、特定医療法人の承認機関が財務省から国税庁になってから厳しいものがある。

 特定医療法人の10年間の数は以下の通りである( )内は純増数。
 
 平成12年 267(32)件
 平成13年 299(32)件
 平成14年 325(26)件
 平成15年 356(31)件
 平成16年 362(6)件
 平成17年 374(12)件
 平成18年 395(21)件
 平成19年 407(12)件
 平成20年 412(5)件
 平成21年 402(-10)件
 
 承認が国税庁長官になった平成15年4月1日からのデータである平成16年度は、純増数6件しかなかった。また、平成21年度はマイナスとなっている。取り消しが多かったということだ。
 
 特定医療法人の承認は難しいということだ。だから、もったいない、特定医療法人の承認取り消しは。
 
 まぁ、理事長の住宅改修費を肩代わりや、勤務実態のない研修医の人件費を計上したとされるから、やりすぎたね。
 
 
 以下、法令等
 
(特定の医療法人の法人税率の特例)
租税特別措置法第六十七条の二  財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めがないもの(清算中のものを除く。)のうち、その事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることにつき政令で定める要件を満たすものとして、政令で定めるところにより国税庁長官の承認を受けたもの(医療法第四十二条の二第一項 に規定する社会医療法人を除く。)の当該承認を受けた後に終了した各事業年度の所得については、法人税法第六十六条第一項 又は第二項 の規定にかかわらず、百分の二十二の税率により、法人税を課する。
2  国税庁長官は、前項の承認を受けた医療法人について同項に規定する政令で定める要件を満たさないこととなつたと認められる場合には、その満たさないこととなつたと認められる時までさかのぼつてその承認を取り消すものとする。この場合においては、その満たさないこととなつたと認められる時以後に終了した当該医療法人の各事業年度の所得については、同項の規定は、適用しない。
3  国税庁長官は、第一項の承認をしたとき、若しくは当該承認をしないことを決定したとき、又は当該承認を取り消したときは、その旨を当該承認を申請した医療法人又は当該承認を受けていた医療法人に通知しなければならない。
4  第一項の規定の適用がある場合において、法人税法第六十九条第一項 の規定の適用については、同項 中「第六十六条第一項 から第三項 まで(各事業年度の所得に対する法人税の税率)」とあるのは「租税特別措置法第六十七条の二第一項(特定の医療法人の法人税率の特例)」と、同法第七十二条第一項又は第七十四条第一項の規定の適用については、同法第七十二条第一項第二号又は第七十四条第一項第二号中「前節(税額の計算)」とあるのは「租税特別措置法第六十七条の二第一項(特定の医療法人の法人税率の特例)及び前節第二款(税額控除)」とする。
5  第二項及び第三項に定めるもののほか、第一項の承認を受けた法人が、当該承認を受けた後に終了した各事業年度の所得について、同項の規定の適用を受けることをやめようとする場合の手続その他同項及び前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。