放射能物質は<拡散しない>が原則です! | 脱原発の日のブログ

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環境ジャーナリストの青木泰さんのブログ

バグフィルターで放射性物質が除去できるか? ~放射能汚染廃棄物の焼却処理~
2011/09/26 19:36

1)環境省、放射能汚染がれきは燃やしてよいと発表
 東北大震災と津波は、19,868名の死者と行方不明者を出し、東北3県(岩手、宮城、福島)の海岸沿いの建造物をなぎ倒した。その結果産み出された災害廃棄物(以下がれき)は、2400万トンにのぼり、これは日本全国で1年間に排出される廃棄物の約半分という膨大な量に上った。

 それに加え、今回の災害は、大地震と津波によって、福島原子力発電所の安定稼働に必要な冷却水の供給が途絶え、より深刻になった。炉心がメルトダウンし、1号機から3号機で次々と爆発を起こし、4号機では、使用済み燃料プールも爆発した。その結果100京ベクレルという天文学的な放射性物質が、環境中に放出された。
放射性のセシウム量としては、広島・長崎の時の168倍もが、放出されていると国会で報告された。

 放射性物質は、露天に放置されていたがれきを汚染し、がれきの処理は、より困難になった。

 そうした6月23日、環境省は、放射能汚染されたがれきの処理方法として、可燃ごみは市町村の清掃工場の焼却炉で焼却し、不燃ごみは除洗せず、埋立て処分する方針を発表した。焼却炉は、バグフィルターが付設されていれば良いとした。環境省の肝いりで作られた「災害廃棄物安全評価検討委員会」(=有識者検討会)でも了解されたとマスメディアに流された。<ここでは焼却問題について検証する。>

2)放射性物質は、燃やすことで無くなるわけではない。
 清掃工場の焼却炉では、通常木や紙、生ごみなどの有機物が焼却される。有機物は、焼却によって、炭酸ガスや水蒸気などのガスと微細な粒子,煤塵となって煙突から排出される。有機物は、1割ぐらいの燃え殻,灰を残して、分解して無くなってしまう。燃焼状態によって、煤塵が増えれば、煙突から黒々とした煙が出、ダイオキシン等の有害物も排出されることになる。

 バグフィルターなどの集塵装置は、この煤塵や有害物の除去装置としてつけられたものである。しかし無機物である放射性物質は、焼却したからといって無くなる訳ではない。焼却すれば、ガスや微細な粒子に形を変えて、清掃工場の煙突から放出される。微細な粒子も総て取りきれるわけではなく、気化したガスはバグフィルターで除去できない。
 ガスや微粒子になった放射性物質は、毒性がなくなるわけではなく、拡散放出される。
放射性物質の排出源が、福島第1原発に加え、多発化されることになる。(その上焼却灰に濃縮された形で残し、保管一つを取っても後処理を困難にする。)

3)放射性物質は、バグフィルターで除去できると裏付けなしに語る。
 有識者検討会の委員で環境省の方針を積極的に後押ししたのは、国立環境研究所の大迫政浩資源循環・廃棄物研究センター長である。大迫氏は、バグフィルターが付加されていれば、放射性物質を除去できるため、煙突から煙となって拡散されることはないと朝日新聞の週刊誌「アエラ」で語っている。
 しかし大迫氏らの発言は、実証的な実験の裏付けがあって語っているわけでない。
 有識者会議に大迫氏が資料として提出した論文は、放射性物質がバグフィルターで除去できるというものでなかった。

 その論文は、論題は、「都市ごみ焼却施設から排出されるPM2.5等微小粒子の挙動」であった。微小粒子が喘息等に影響を与えると言う米国や環境省の報告を受けて、既存の焼却炉で除去できているかの実験をしたものである。
 微小粒子が、バグフィルターで99.9%除去できたとする実験結果でしかなかった。

 実際廃棄物関係の専門誌である「月刊廃棄物」では、大迫氏は、「元来放射性物質は廃棄物処理法に含まれていなかったので、われわれ国立環境研究所は、知見もノウハウもほとんどありませんでした。」「自治体からの要請に基づいて、排ガス中の挙動や放射能レベルが高くなる原因究明などについての調査なども行ってゆきます。」
と語っている。
 アエラで語った「放射性物質は除去できる」というのは裏付けなく話していたにすぎない。

4)放射能汚染物焼却の背景
 市町村の焼却炉は、有害物の除去装置として造られたものでない。
 市町村の街中から排出される生活ごみの量を減らす減容化のための手段に過ぎない。バグフィルターなどの除去装置は、焼却の過程で産み出される有害物や吐き出される有害物を除去するための装置に過ぎず、放射性物質に限らず、有害物を除去分解するための装置ではない。

 今回の環境省の方針や大迫氏などの判断には、放射性廃棄物を市町村の焼却炉で燃やした時の周辺への影響を真剣に検討した後は見られない。

 東北大震災で発生した大量のがれきを町中からなくしたいということがあり、従来の災害廃棄物と同様に市町村の焼却炉で燃やすということになったと考えられる。当初は、放射能の影響を考えていたが、放射能汚染されたがれきを燃やさなくとも、すでに市町村の焼却炉から排出される焼却灰は、放射能汚染度が高く、がれきを投入しても影響はないと今回の措置に踏み込んだものと考えられる。

 しかし災害地だけでなく、東日本各地の市町村の焼却炉で放射能汚染されたごみが燃やされている。焼却灰が高濃度汚染されているのは、街路樹や公園、庭木などの樹木が放射能汚染され、それらの剪定ごみを燃やしている自治体が多く、その影響と考えられる。

 バグフィルターで捕捉された煤塵(飛灰ともいう)や燃え殻等を焼却灰というが、焼却灰が高濃度汚染されているというのは、相応の放射性物質が煙突から環境中に排出されているということである。

 この事実を前にして、国民のために環境を守り、科学的な対処を考える環境省や専門家ならば、今すぐ市町村での剪定ごみの焼却をやめさせなければならない。

 ところが、どうせ現状の市町村の焼却炉でも放射能汚染物を燃やしているのだからそこに放射能汚染がれきが追加されても、大したことはないだろうというのが、環境省が取った、放射能汚染がれきの焼却方針化といえる。

5)バグフィルターを付設した焼却炉の影響
 バグフィルターは、布や不織布で作られた袋状のフィルターで、掃除機のフィルターと基本的には同じである。ごみ焼却炉で燃やされ大量に排出される排ガス中には、微細な粒子状の煤塵が含まれているため、これをバグフィルターを通して除去することが目的である。その際ダイオキシンなどの有害化学物質も除去される。

 布で作ったフィルターで、微細な粒子が取れるのは、布の表面に微細な塵が蓄積し、層をなしそこを通るより微細な粒子も取ることができるようにしているからである。
これは掃除機のフィルターにごみがたまると急に吸い込みが悪くなるが、その分より細かなチリも取ることができるのに似ている。

 層を成し厚みを増すと、排ガスも流れなくなるため、焼却炉のバグフィルターには、振動させて、たまったチリを落としたり、逆からガスを流し布にたまったチリを落とすように工夫している。

 チリの層がふるい落とされた時には、排ガスの流れがよくなるために、その分微細なチリは除去できなくなる。

 またふるい落としのタイミングが悪い時には、焼却炉から排出される秒速数メータの排ガスの圧力で、バグフィルターが破れ破損することがある。

 また焼却炉から排出される排ガスの温度は850℃前後であるが、バグフィルターの前で、200℃前後に冷却するようにしている。

 しかし温度が下がりきらないことがあり、その時熱風がバグフィルターを破損するため、排ガスの流れを切り替えて、直接煙突に排ガスを流すバイパスを設けている焼却炉もある。(「プラスチックごみは燃やしてよいのか」青木泰著、リサイクル文化社P170~)

 このときにはもちろん放射性物質を始め有害物質は煙突からそのまま大気中に放出される。
いずれにせよ、このようなバグフィルターの技術の状況で、バグフィルターで放射性物質は除去できるというのは、ざるで水をすくうことが出来るというに等しい暴論である。

6)大学の論文の結論を覆す実証例。
 バグフィルターについて少し付け加えておくと、大学の研究発表で発表された事例と実際には大きく違うことがいくつかある。

 今回の有識者検討会で出された微小粒子除去の実験報告の京都大学の高岡准教授の論文では、99.9%除去できるとなっていた。

 この論文の結論から言うと焼却炉でごみを燃やしたときに発生するSPMやPM2.(*SPMは、10ミクロン前後、PM2.5は、2.5ミクロン以下の微粒子。)の微粒子はほぼ除去できる。そのためバグフィルターを付設した焼却炉の周辺では喘息は起こらないとなる。

 しかし神奈川県横浜市の栄区のごみの焼却炉が、稼働を停止したところ周辺の小学校の喘息の被患率が、桂台小学校では、19.7%から9.4%に半減し、本郷小学校では15.6%から5%に3分の1になった。(「プラスチックごみは燃やしてよいのか」青木泰著、リサイクル文化社P184~)

 また日の出の最終処分場内に作られたエコセメント工場の近くにある青梅市の第2小学校では喘息の被患率が、エコセメント工場が稼働した2006年の翌年の2007年から大きく変化した。それまで0%~0.8%の間で推移してきた被患率が、2007年度に一気に14%に増加し、2010年まで13~14%の間となっている。

 また同じ高岡氏は、東京23区清掃一部事務組合の焼却炉で水銀が自主規制値を超えて排出され、清掃工場が止まった後の講演会で、焼却炉で排出される水銀は97.5%除去できると話していたが、その後の調査の中で、金属水銀は原理的にも除去できないこと。焼却炉メーカ自身が除去できないと発表していたことが分かった。

 このように学者の研究論文で発表した少数の事例を基に、行政官庁は、バグフィルターで何もかも除去できるとしがちだが、それをそのまま前提にすることはできない。

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8000ベクレル超は国が処理 除染、低線量地域に配慮
http://www.usfl.com/Daily/News/11/10/1010_010.asp?id=91304
環境省は10日、東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された廃棄物のうち、放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8000ベクレルを超える焼却灰や汚泥などを「指定廃棄物」と定め、国が処理する方針を決めた。基準案を同日の有識者検討会に示し了承された。月内をめどに省令案としてまとめ、11月にも正式決定する見通し。

 環境省はこのほか、除染の進め方などに関する政府の基本方針案も提示。これまで自然界からの被ばくを除く線量が年間5ミリシーベルト以上の地域は一帯を面的に除染、1ミリシーベルト以上5ミリシーベルト未満は側溝など特に線量が高い場所を除染するとの目安を示してきたが、自治体側から「5ミリシーベルト未満も国の責任で面的に除染すべきだ」などと反発が相次いだことから撤回。基本方針案では「線量が比較的低い地域も、子どもの生活環境を中心に対応し、地域の実情に十分配慮する」とした。

 年間1~20ミリシーベルトの地域は市町村が環境省と協議した上で除染計画を策定し作業を進め、線量にかかわらず国が財政支援する。(共同)