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一面のマーガレットに囲まれて語り合う悟空と八戒のイメージが脳内に浮かんでたのに、どうしてこうなったんだろう。
前作の続き

誤字脱字衍字不適切表現など気になるところございましたら、ご指摘よろしくお願いします。

2016/12/17 追記
なんと築城ゆずるさまが、八戒と悟空の絵を描いてくださいました。
御用とお急ぎでない方はこちらをごらんくださいませ
http://www.ne.jp/asahi/isasi/yuzuru/nizi/saiyuki/kiri/700.html
絵を描いてくださって、ありがとうございます。


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「それにしても、八戒が手帳を欲しがってたとはな。少しは将来の希望を持つようになったんだか。」
朝ごはんを食べながらつぶやいた三蔵に悟空は
「三蔵、八戒の様子、気になるなら、俺、悟浄んちに今日でも行って来ようか?」
「ああ、なら途中で文具店にカタログ返して来い。それで、この注文書を渡して来い。」
「うん。わかった。」
と言うことで,、悟空は出かけて行った。

文具店にでは、
「ああ、この商品ですか。さすが三蔵さま、お目が高い。こちら、その人気たるや、洛陽の紙価を高からしめるとまで言われたものでございます。現在、在庫払底中ですのでで、お取り寄せして、入荷しましたら、お持ちいたします。」
ここは長安であって洛陽じゃないのに変なの、と思いながら
「うん。じゃ、よろしく。」
とだけ言って、そのまま悟空は、悟浄と八戒の住む家の方へ歩いて行った。

丁度、悟浄が起きてきたところで、悟浄の朝ごはんと八戒の昼ごはんどきだった。
「おい、猿。人の家にご飯どきに来るなんて、行儀悪いって最高僧様に言われなかった?」
「なんだよ。悟浄。」
そんな悟空に
「ありあわせで良ければ。」
と台所に八戒は向かった。その背中から悟浄は、
「あー、今日って何日だっけ?」
「9月8日ですよー。明日は9月9日。重陽の節句ですよー。」
と八戒は答えた。
「ちょーよーのせっく?悟浄、何?」
「さあ?」
顔を見合わせる二人に台所から運びながら八戒は。
「重陽の節句は菊の節句とも言います。菊がそろそろ綺麗な頃だからでしょうかね。」

「そういえばさあ。寺で育ててる菊があってさあ。俺が近づいたら『もってのほか』って言われたよ。」
と悟空。
「ああ、もってのほか、美味しいんですよね、あれ。そろそろ出回ってきたのかな。」
「え?美味しい?もってのほかってそういう意味?」
「ええっと、紫色の食べると美味しい食用菊だったんじゃないですか?それ。」
「えーっと、色は紫じゃなかったと思うし、俺が花を抜いたり折ったりするんじゃないかと思われて言われたんだと思う。
それに三蔵も、いつも坊さんに陰で『もってのほか』とかいわれてるよ。」
「けけけ。三蔵も寺の中じゃ、大変だねえ」
と悟浄が笑う。
「で、叱られて、寺を飛び出してここまで来たんですか?悟空」
「いや、そうじゃないんだ。」
八戒は、
「じゃあ、今日はどうしたんです?」
と柔らかく聞いた。
「んー。なんとなく。三蔵が八戒はどうしてっかなあ。って気にしてるみたいだったから。」
「気にしてる?」
「うん。将来の希望とか八戒にはあるのかなあって。」
「そうですか。んー。将来の希望ですか。実は、来年やってみたいことはあるんですよ。僕ね。家の周りにマーガレットみたいな白い菊の花を沢山植えたいと思ってるんです。5月くらいに咲く品種を考えてるんですけどね。一面に咲いていたらいいなあと思うんです。」
悟空の頭の中には、一面の白菊に囲まれて笑ってる八戒が思い浮かんだ。確かに綺麗だ。だけど白い花に囲まれた笑顔って、、、その、、なんだか、、、
「お寺でも白菊を見てるから、、、なんか白菊って聞くと。」
口ごもる悟空に八戒は笑った。
「僕が植えたいのは仏様に供えるようなものじゃなくて除虫菊なんです。」
「女中?メイド?お菊さんが出てきて、一枚、二枚ー」
「悟浄。ちゃちゃ入れないで。」
八戒は悟空に向くと、
「いえいえ。虫除けの除虫。悟空。除虫菊と言うのは、マーガレットに極めてよく似た花なんです。その子房、雌しべと言った方がわかりやすいかな、これを焼くと殺虫剤になるんです。しかも人間には無害。」
「めしべ?」
と首を傾げる悟空。
「なーに、八戒せんせ、今度は保健の授業?」
と悟浄がふざけると
「悟浄、これはむしろ生物学の話です。未成年者に悪影響しかなさそうな下ネタしか言えないなら、さっさと稼ぎに行ったらどうです。」
「へいへいっと。じゃ着替えてくるわ。けどさ、お前、悟空くらいの年には彼女いたんだろ。いつまで悟空を子ども扱いかよ。」
と部屋に行ってしまう。

「え?八戒、花から殺虫剤を作るの?てか、そういう薬って自分で作れちゃうの?」
「ええ。例えば朝顔の種。あれも牽牛子(けんごし)と言って、おなかの薬になるんですよ。ドクダミは傷薬になりますしね。僕は、征露丸だって作るつもりです。知ってます?征露丸はもともとはロシアをやっつけるという意味なんですよ。」
「そ、そうなの?」
「いまは、正しい露西亜(ロシア)は丸と書きますけどね。ともかく、今年は随分、蚊に食われましたからね。来年は除虫菊を大量生産して、焚きしめて、快適生活ですよ。」
ふふふふふと笑う八戒。
ちょうどその時、悟浄が着替えを済ませて顔をのぞかせると。
「八戒印の蚊遣り豚?」
八戒を豚呼ばわりとは、悟浄もいい度胸である。
「なんですって?悟浄」
「いえ、イッテマイリマス」
すたこらさっさと、悟浄は逃げ出す。
「あ、あの、俺も遅くなると三蔵が心配するから戻るよ。じゃあ八戒、ごちそうさまっ。」
悟浄の後を追いかけるように悟空も辞していったのだった。