釜の錆 茶殻芋皮煮るなれば
いずれ外より穴の空きたる 道舜

茶の湯でも茶道でも釜につきものなのが、匂いと錆び。

鉄で出来ているので錆はどうしてもつきものです。

一般的に赤錆と呼ばれるのが三酸化二鉄で、これはとめどなく進行して元の形状を崩してしまいます。
また、錆を取り除くと余計に錆びが進行してしまうことが知られます。

黒錆は四酸化三鉄で、強力な被膜となり内部を保護してくれる錆です。フライパンなどが黒いのは四酸化三鉄で表面を覆っているからです。中華鍋などはあえて空焚きすることで表面に四酸化三鉄を作り、鍋を保護しています。

鉄の最大の弱点は水と酸素で、自然酸化によって三酸化二鉄に変化してしまいます。ところが、加熱しているとこれが起こらず、釜の温度をできるだけ下げずに湯を捨てて余熱で乾かすのはこのためです。

では一度錆びてしまった場合どうしたらいいのでしょうか?

・茶殻を入れて焚く(緑茶・番茶も同じ)
・芋の皮を入れて煮る

という方法をよく耳にしますが、これ本当に大丈夫でしょうか?

緑茶は基本的にアルカリ度が高く、三酸化二鉄(赤錆)だけでなく、四酸化三鉄(黒錆)も中和してしまうため、結果として釜を錆びやすくしてしまいます。
一時的に錆を取り除くことは出来ても、さらに参加しやすい状態を作り出すため、絶対にやってはいけません。

番茶もアルカリ度が高く、同じ状態を生み出します。

芋の皮もアルカリ度の高い食品で、茶殻と同じ効果があります。

錆の表面だけを中和し、結果として錆の拡散を招きかねません。内部の錆は残って進行して外側から穴が空くのです。

ですから、どんなに尊敬する方が言おうとも、茶殻だの芋の皮だのは辞めときましょうね!

宗靜先生がそれで釜を駄目にしておりまして、釜底を修理に出した際、私が「茶殻や芋の皮を煮たのですが、これは適切な処置であったのか?」を釜師さんに確認してくださいとお願いしたところ、返却された釜にメモが付いて来ました。

そこには「釜には水以外入れないでください」とありました。

もし錆が出たら、水を長時間コトコト煮ます。

湯を捨てて、水分が飛びきるまで乾かし、冷えたら水を入れ、また長時間コトコト煮ます。

此れを何度も繰り返し、錆が浮かなくなるまで繰り返すしかありません。

それをしないためには、普段から

・水を入れっぱなしにしない
⇒釜が熱いうちに湯を捨てて、余熱で乾かす

ちなみに釜は内側を錆止めしていることが多く、内側は手で触っても大丈夫に作られています。

外側は一度錆びさせて皮膜を作ってありますが、手で触らない方がいいと言われています。もし、触ったら熱湯などで流してやれば問題ありません。

長らく言われてきた茶殻や芋の皮は本当に辞めましょう。