国際救助犬  レイラ | DOG GANG (犬と暮らし)

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本業は、犬具と生食販売です。大型犬専門での仕事です。

犬を真剣に考えて犬の食事や行動を記載いたします。

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村田氏より

その日、車に飛び乗ることさえ出来なくなっていたレイラ

しかし子犬用に乗せてあったバリケンを引きずりおとし、我先に、と飛び乗ったウタを噛み付き下ろし、更にそのすきに飛び乗ったラマットを怒りの怒声一発で下ろした

まるで月命日の捜索は私の任務。
とばかりに不自由な身体を車に納めた。

まるで二週間後にその命が尽きるのをわかっているように

最期の捜索

彼女は必死だったのかもしれない

海中からお二人の御遺体をアラートし
返す刃で遺品や遺骨をアラートした

諦めていたご遺族の目の前で
奇跡をおこした

遺骨をアラート

気温の上昇に伴い
負担は増す

ハンドラーとしてはストップをかけるべきタイミング

しかし私は彼女を止めなかった

それが彼女の命を削ることになるのは承知の上で
彼女が自分から止まるまで
見届けたかった

彼女の生きざまを
心に焼き付けたかった

それが彼女の最期の捜索だった

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同行されていた【藤田洋さん】より

【 追憶のレイラ 1 】

震災時、自衛隊の若き勇者たちはよく頑張った。
瓦礫で道無き所に道を作り、仮設橋を架け、生存者を救い、遺品の洗浄まで
行った。
異臭、腐敗臭漂う中で損傷した遺体を目にした彼ら…。
若いがゆえに今まで1度も遺体を目にしたことすらなかった者がほとんどだ。
精神的に参った者は後方支援へと回され、新しい者が前線へと駆り出され
全体の士気の低下を防いだ。
その前線には、レイラとハンドラーの姿があった。

2年が経過した福島県沿岸部では、田んぼや津波被災の住宅地の瓦礫を
重機で集め、可燃物と不燃物に選り分ける作業がなされていた。
津波や原発により避難生活をしている人が生活費のために従事している事も多かった。
いずれの作業員も泣きながら、吐きながら作業している。
瓦礫の中から、腕や足、胴体などの遺体がボロボロと出てくるから。
精神的に参った者は、他の作業員と交替させられた。
その現場にも、レイラとハンドラーの姿があった。

ハンドラーの替わりは居ない。
ハンドラーは、数100、数1000という様々な遺体を見続けてきたことになる。
レイラもまた同じように…。

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【 追憶のレイラ 4 】

「災害救助犬」は行方不明の生存者を探す。
ご遺体を発見した時、ハンドラーが「よくやった」と褒めたところで、
周りの自衛隊や警察、消防の人たちの落胆振りを敏感に察知する。
それ以前に、異形の者を発見した時の犬のショックは大きい。
総毛立ちマリモのようになってしまうほどだ。
そして、多くの犬は2度と「捜索」をしなくなる。
「捜索」が出来なければ、「災害救助犬」ではなくなる。
ゆえに遺体捜索をしない(させない)「災害救助犬」が多い。

そのショックを乗り越えた犬とて、あるものはヒィヒィ鳴きながら、
あるものは吐きながらハンドラーの指示に従い「捜索」をする。
ハンドラーは風向きと風の強さを読み、地形を考慮しポイントを絞り犬に「捜索」の
指図を出す。
しかし、レイラだけは違った。
彼女は淡々と自分で考え行動し、多くの行方不明者を探し出した。

福島県の沿岸部は原発事故の影響もあり、生存しているにも関わらず
救助されることなく亡くなった方が多い。
「おれはまだ生きてるぞ~」というクラクションの音が鳴り響く中、
立ち入りを制限され救助されることもなく、そのクラクションの音は次第に遠退いて行った。
高台から我が家を見下ろす人は、屋根に摑まり生存していた肉親が亡くなり
カラスに突かれる様を見ることとなった。
ハンドラーは言う。
「岩手、宮城と比べると、福島県沿岸は『綺麗な遺体』が多い」と。

レイラもハンドラーも、その一部始終を見ている。
そしてレイラは、「たとえ涙の再会となろうとも、その陰に安堵と喜びが隠されていることを知っていた。
『人間が大好きなレイラだから』
その喜びのために。

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