「ジャック・ブレル」関連、しばらくは「特別編」で書いてみたいと思います。
今日はこの方です。

Johan Verminnen(「ヨハン・ヴァーミネン」さんでよろしいのでしょうか?)は、ブリュッセル北西の郊外、ウェメル(Wemmel)の出身ですから、「オランダ語圏」の方です。そして、ベルギーでは、「オランダ語」で歌う歌手の「代表」。と言っても良いのではないでしょうか。

1951年5月22日生まれとありますから...あっ、もうすぐ「誕生日」じゃないですか!!
前回のブリュノ・ブレルも1951年生まれですから、「同い年」なんですね...。

私は、「ベルギー」を旅行するために、「オランダ語」も、一応は「勉強」しました。でも、ほとんど身に付かなかったので、2008年、2010年の旅行も、共に「ブリュッセル止まり」で終わってしまいました。

ブリュッセルには、「ブレル財団」の運営する記念館、「Editions Jacques Brel」があり、「グランプラス」からも、「小便小僧」からも、そう遠くない場所にあります。
「ミュージアム」ではなく、「エクスポジション(展示)」だと説明される通り、そんなに「規模」が大きなものではありませんが、私のような「心酔者」にとっては、行ける「機会」があれば、いつでも「行きたい」場所です。

この記念館は、2008年、ブレルの「没後30周年」を機に「展示替え」を行ないました。現在も、「基本」は同じですが、「オーディオガイド」を駆使した、「発展型」のようです。
そのテーマは、「j'aime les belges!」(「私はベルギー人が好きだ!」)で、当館監修のDVDも出ています。その収録映像は、館内でも見ることができるものですから、言ってみれば、「音声版図録」そのものなのです。
関係者による、さまざまな「証言」もあり、「ブレル」という人間像を、「立体的」に知ることができます。「証言者」の方々は、ミシェル・ドラッカーさん(前回の最初の曲、「valse amusette」でもインタビュアーをしてましたね...)など、すっかり「おなじみの顔」もいますが、このビデオで初めて知ったのが、この「ヨハン・ヴァーミネン」さんなのです。

ヴァーミネンさんは、ブリュッセル近郊の出身なので、「簡単なフランス語」は話せるようですが、やはり、「メイン」の言語は「オランダ語(フラマン語)」のようです。

「j'aime les belges!」は約90分。ここにも「引こう」かとも思いましたが、「解説」だけでもめっちゃ大変! なので、今回はあきらめました。でも、(ベルギーに)興味のある方は、一度「覗いて」みてはいかがでしょう。ブリュージュ近郊の「ダム(オランダ語では "ダンメ")の運河」は「必見」ですよ。

さて、そのヴァーミネンさんを代表するであろう曲が、この「Brussel」だと思いますが、1976年頃の作品ということです。近年の「渋い」パフォーマンス(2013年のものですが、「ダンディー」ですね...)と、若かりし頃の「オリジナル」を続けてどうぞ...。

mijn Brussel, 'k zit in je binnenzak
een warme jas
je binnenstad
die mij omarmt
en verwarmt als vroeger
toen ik verdwaald en lusteloos
jouw geborgenheid verkoos
al zijn mijn dromen
nu wat droever

(*)hier kende ik mijn eerste lief
mijn eerste droom
eerste verdriet
hier kerfde ik haar naam nog
in jouw bomen
hier had ik vrienden
liep ik school
en raakte ook nog op de dool
hier voelde ik me vaak verloren

mijn Brussel, al ben je erg ziek
een mollepijp
een braakland
in ruine ken ik jou niet
ach je bent wreed veranderd
al ben je als een lelijk huis
toch voel ik me hier velig thuis
als nergens anders

(*)

mijn Brussel, ik verlies me weer
een loop je straatjes op en neer
ze zijn jouw duizend armen
hoe vaak liep ik hier toen
niks om handen niks te doen
gewoon mijn tijd wat te verdromen

(*)

とても「抒情的」な名曲(ブルース)で、どちらの歌唱も素敵ですね。
ああ、でも、こうして見ると、私のオランダ語の「スキル」は、ほぼ「0点」...。
オランダ語に詳しい方、誰かいませんか...。
「ところどころ」ぐらいにしか分かりましぇん...(それも「怪しい」?) トホホ...。

ちなみに、4月20日付けで少し触れましたが、ブレルの「ブリュッセル」には、有名な1962年の作品の他に、1948年ごろから1953年ごろにかけて作られた、いわゆる「若書き」の作品があります。録音が残っているかどうかは「不明」ですが、歌詞は公表されています。
フランス語の「原詞」のみで恐縮ですが、参考までに載せておきます。

le soir a Bruxelles les etincelles
des trams se voient de loin
comme se voient les eclairs
quand on coupe les foins
et la place de Brouckere
aux serpents de neon
inscrit rouge dans le ciel
sur les nuages le nom de Bruxelles

il y a la jonction comme un canal
qu'on aurait creuse a l'envers
fait divers
peu banal
il y a le Jardin Botanique
qui fait la nique
aux garcons de St-Louis
qui attendent sous la pluie
les filles dont il ont reve
devant le phare du Bon Marche
qui ne cesse qui ne cesse de tourner
de touner de tourner

tournees genereuses de Kriek Lambic
de verres de gueuze
sortis d'alambic de chez nous

(inedit 1953)

最後に、「オランダ語(フラマン語)」で歌われたブレル作品を2曲。

ヴァーミネンさんが歌っているのは、1977年11月発売の、ブレル最後のアルバム、「les Marquises」からの曲、「voir un ami pleurer "涙(泣く友を見る)"」です。オランダ語のタイトルは「een vriend zien huilen」となっています。

次回採り上げる予定をしています、インドネシアのバンドン(旧オランダ領)生まれの、オランダの女性歌手、リースベト・リスト(1941-)さんが歌っているのは、「mon pere disait... "父の想い出"」です。ブレルの原曲は、「アデュー・オランピア」直後の、1967年1月3日(「三が日」なんですけど...)に録音されました。オランダ語のタイトルは「mijn vader zei」です。この曲を含むアルバムは、1969年ごろの録音となっていて、現在でも入手は可能です。また、オランダ語への翻訳は、アムステルダム出身の詩人・作家・翻訳家、エルンスト・ヴァン・アルテナさん(1933-99)の手によります(ヴァーミネンさんの方は、彼自身の翻訳のようです)。ブレル自身も、彼の翻訳によるオランダ語(フラマン語)版で、録音を残しています。

「オランダ語」で歌う歌手というのは、日本ではほとんど「知られていない」のではないでしょうか。私も、ヴァーミネンさん、リストさんを知り得たのは、ほとんど「偶然」に近く、「奇跡」とも言えるものでした。これは、ブレルが、フランス語圏・オランダ語圏(加えて「ドイツ語圏」)両方の文化を持つ国「ベルギー」の、その「境界点」ブリュッセル出身ならではと言えるでしょう。
(daniel-b=フランス専門)