『茶色の朝』を知っていますか?
最近、漫画家・イラストレーターなどを筆頭に
取り上げ、掲げられている
『架空創作表現規制法案』をご存知でしょうか?
ブログの性質上、細かい内容は説明を控えさせて頂きますが
表現・文化に対する不安を
より豊かで良質な物を導入し推奨するのではなく
規制という形で対応する事に
違和感を感じずにはいられません
確かに、焦点に挙げられている表現ジャンルに対して
様々な視点があるし
特に発端と焦点に挙げられている漫画に縁のない年配の方などは
『たかが漫画だろう?』
などという声も聞くと言います
実際反対の署名運動が大きく広がるまでは
それ程一般のマスコミでも取上げられなかった事ですよね
でも、そこから広がる不安の可能性
その不安が現実になる流れは
今声高に挙げられるよりも
確実に我々の中から侵食されていく
別にこれは今回の法案だけでなく
小さく言えば子供の教育や文化環境
広く言えば世界の争いの歴史でも
同じ事が言えるのではないか?
そう考えるきっかけの様な本が実はあったりします
1980年代末より台頭した
フランスのジャン=マリー・ルペンを中心とした
極右党勢力及び国民戦線
次第に支持率を上げていく彼らの勢いに
フランク・パブロフが危機感を持ち
多くの、特に若い人に読んでほしいという想いのもとに
1ユーロ(120円前後)で出版した短編です
始めはそれ程人々の目に止まっていなかったのですが
2002年のフランス大統領選挙で
このルペン候補が社会党を押さえ
シラク大統領と一騎打ちになる・・・という事態になり
『人種差別・排外主義』を声高に掲げる極右派が大統領になる
その可能性に初めてフランス全体が動揺した時
改めて注目され、爆発的に多くの人に読まれ
何をすべきかを考え直した国民によって
ルペン候補が結果、敗北となった
そんな逸話のある一冊です
内容はとてもシンプルな短編
ある日、国の科学者によって
都市的に『茶色』の生き物の方が
生活に適合している事が判明したと発表があり
茶色の以外の生き物は処分する法律が決まり
主人公とその友人は無料で国から配られた毒団子で
それぞれのペットを処分する事になる
それは次第にマスコミに及び
『茶色』を取上げない雑誌・本は撤廃を言い渡され
日常にも『茶色』を推奨することを進められる事になる
その行き過ぎに、違和感を感じた主人公達だが
さしてそれに準じていれば問題はない事
日常は変わらず廻っている事
人々は楽しく日常を生きてる事
そして茶色という全体の統一で安定している暮らしに
きっと自分の方が心配性だったんだと
流行り感覚で茶色を受け入れることに慣れていく
『茶色に守られた安心、それも悪くない』
ところがその日常がある日突然反転する
過去に『茶色以外の動物』を飼ってたという事が違法になり
友人が自警団に連行される事になる
個人的に飼っていなくても、親族の誰かが飼っているだけで違法
『国家反逆罪』とまでアナウンサーは掲げている
自分の元にも自警団が訪れることに怯えながら
主人公は何がいけなかったのかを考える事になる
ヨーロッパでは『茶色』は『ナチス&ファシズム』
この二つを連想される色とされています
この二つの激動に揉まれたヨーローッパだからこそ
より直感的に読み手の心に届いたのかもしれません
・・・が、そんな歴史の出来事を置いておいても
そういう全体の違和感や狂乱の流れを後押ししてるのは
国ではなく致命的なまでに我々なんだと
この本は訴えかけてきます
この本には茶色思想を掲げる政治家などは一切登場せず
主人公達は日常のマスコミや新聞
噂話でのみその変化を知ります
それに誰もがスッキリしない感じを覚え
日常で自分達がしているように
眉をひそめているにも関わらず
いつの間にか社会は反転し
その変化の一端を担ってしまっている
そういう自分達にもありそうな話なんですよね
ドイツでヒトラーがナチスの元、ファシズムをかがげた当初は
国民の殆どは否定的だったといいます
日本の戦時中の話において
我々は戦争に批判的な目線でいながら
賢明に生きようとしている物語に感情移入してしまいますが
その人達を『非国民』とののしり、戦争参加を掲げていた大衆も
間違いなく自分達と代わりがなかった事を見落としがちです
その明らかにおかしい全体の流れに
容易に飲まれてしまう大衆性
その根源は自分達の誰もが少なからず必ず持っている
怠慢や他者への無関心
自己保身や臆病心などの日常の積み重ねであると
短く誰にでも読みやすい文章の中に
実に見事に描いている一冊です
何より最後の主人公の言葉が印象的です
そして、どうしたらいいかは
例え今思い浮かばないとしても
思考を停止せず
どうすればいいか考える事をやめず
やり過ごすことをしてはいけない・・・と
今この時代の自分達にも訴えかけて来るのです
この本(⇒★) と共に
自分達の生きかたと在り様を考えさせられる一冊です
興味のある方はどうぞ
※最後の文
最初のペット措置法を課してきやがったときから
警戒すべきだったんだ
(中略)
いやだと言うべきだったんだ
抵抗すべきだったんだ
でも、どうやって?
政府の動きはすばやかったし
俺には仕事があるし
毎日やらなきゃいけない
こまごましたことも多い
他の人たちだって
ごたごたはごめんだから
おとなしくしてるんじゃないか?
だれかがドアを叩いている
こんな朝早くなんてはじめてだ
・・・・
陽はまだ昇っていない
外は茶色
そんなに強くたたくのはやめてくれ
いまいくから
お帰りの際によければ一押しお願いします
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