美月星夜の香水物語~第46夜・プルペリア | 熱帯性恋気圧 by 美月星夜 aka ケンケン

美月星夜の香水物語~第46夜・プルペリア




2015年のクリスマスを彩る香りを何か1本欲しいとずっと思っていました。
それにふさわしい香りを探しに、最近すっかりその香りに魅了されていまった、アルゼンチン発のフレグランスブランド、FUEGUIA1833へ。

実は、以前購入した際にスタッフの方に勧められた「エルドラド」という香りが気になっていて、これをクリスマス用に買うつもりでいたのです。サンプルもいただいて、ちょっと自分のコレクションにはないようなグリーンがかった香りなのですが、たまには気分転換にこういうのも良いだろうと思っていました。桃源郷を意味するネーミングもクリスマスっぽいし。

で、気分はすっかり「エルドラド」でショップに行ったのですが…。

やっぱり香水がたくさん並んでいるのを見ると、ついついあれこれと試したくなるんですね。「エルドラド」を買う!っていう決心の元に行ったのに、実際に「エルドラド」を改めてつけてみると、なんかこう、今ひとつ自分の中でしっくりこない。もちろん、良い香りだし、ぼくにとっては斬新な香りでもあるんだけど、でも、なぜか、これ欲しい!これをクリスマスにつけていたい!っていう気持ちになれなかったんです。

ぼくらしくない香りなので、意外性はあるかもしれない。また、期間集中でつけるには、そういう、普段はまずつけないような香りをつけてみるというのもアリかもしれない。でも、それでも、やっぱり最終的にこれを買おう!という気にはならなかったのです。

むしろ他の香りが気になり始めてしまい、あれこれと30分ほど悩みました。
いくつかの香水を試してみて、その中から自分にフィットするものを選ぶ。
前回来た時には何とも思わなかった香りが、急に気になるということもあるし、逆に前回は良いと思ったのに、今は全然という香りもある。

そんな中、ぼくが惹かれた香りが「Pulperia」という香り。
他にもいくつか試して肌に載せていたにも関わらず、この香りをかいだ途端に、ピピッ!ときたのです。
これをまといたい!って。










香りの系統としては、スモーキーです。だから、ぼくのこの冬のテーマにぴったり。
さらにフェギア1833のコレクション的にいうと、詩人ボルヘスの作品にインスパイアされたというコレクションに入っていて、ぼくが初めて購入した「ビブリオテッカ・デ・バベル」と同じコレクション。

ビブリオの方はスモーキーなんだけど、シナモンの甘さが強く感じられます。そして、やはりタイトルにある通り、知的な感じがするのです。そこに色気はそれほど感じられない。むしろ色気とは正反対というか。昼間の香りね。明るい外の昼間、っていうよりも、少しほこりっぽい図書館の窓から差し込んでくる光というようなイメージが「ビブリオテッカ・デ・バベル」にはあります。









ところが、この「プルペリア」は似たようなウッディ、スパイシーな香りではあるのですが、もう少しトーンが低い。くすんでいるような感じ。例えば、煙草の煙が充満している古いバーといったところ。この香水の説明を読んでみると…

「ボルヘス作品に登場する、煙草の煙で燻された古い木造の店内。すべてを浄化するようなジンの香りと、少しの苦みと」

とあります。
さらに香りのトーンを見てみると、

<1>もっとも長く残り、美しい余韻を与えるというhigh notesはシダー

<2>香りに個性を与え、香水のテーマを表現するというmedium notesはペッパー

<3>つけた瞬間の香り。印象を左右するlow notesはエレミです。


このエレミというのは、アロマオイルとして使われるらしく、フランキンセンスやミルラに近い種類。樹液から取られる成分なんですね。ぼくはこの香りを単独でかいだことがないのですが、最近ではエレミのエッセンシャルオイルを扱っているショップもあるようなので、今度試してみようと思います。ウッディ系の香りに、少し柑橘がまざったような感じなのだとか。

プルペリアも、最初ふきつけた時は、ちょっとグリーンノートを感じます。それはすぐにスモーキーな香りに隠されてしまうのですが、そのグリーンを感じされるところがエレミなのかもしれません。そして、その後も時々、こっそりと顔を出してくれる。












この香水は、スモーキーとか、ジンといったイメージが強いのですが、似たようなイメージだとトム・フォードの「タバコバニラ」というのがあります。ただ、こちらはもっとわかりやすい。だってアメリカの香水ですもの!(笑)。ザ・ダンディっていう感じかな。

でも、そういう香り嫌いじゃないし、ひと鼻惚れで買ったので、いつかこれについてもレビューはしますが、似たような系統なのに、ここまで違ってくるのか!っていうくらい「タバコバニラ」と「プルペリア」は違います。対照的と言っても良いくらい。

「タバコバニラ」の方は甘さが前面に出ている。「プルペリア」の方はスモーキーさが勝っているというところかな。でも、「ビブリオテッカ・デ・バベル」とはまた違ったスモーキーさ。

まぁ、結局ぼくはスモーキーなのが大好きっていう結論に至るんだけどね(笑)。

なんでだろ。なんでこんなに煙ったい香りに惹かれるんだろう?って思っていたんだけど、もともとお香とかお線香が好きだったというのもあるのかもしれません。今みたいにアロマが流行る前から、横浜中華街のチャイハネに足繁く通い、お香を買い集めていた時期もありました。

そういう原体験のようなものが、スモーキーな香りに惹かれる理由なのかもしれません。

この「プルペリア」はしつこい香りではないので、たっぷりと多めに全身にかけても大丈夫だと思います。全身にまとったあと、腕の内側や、デコルテなどに集中的にプッシュをすると、さらに香りが残りやすいです。

これから年末にかけて、ぼくはオンオフを問わず、ずっとこの香りと共に過ごしたいなぁと思っているところです。

何か心に残るエピソードが生まれますように、という想いをこめて!

追伸・ここ数日、この香りをまとっておりますが、実に素晴らしいです。スモーキーなくせに、香りの中にキラキラしたものを感じるのです。それが柑橘系の香りだとは思うのですが…。おつき合いが長くなればなるほど、その良さにはまっていく、そんな感じがしております!