美月星夜の香水物語~第24夜・モンニュメロ4 | 熱帯性恋気圧 by 美月星夜 aka ケンケン

美月星夜の香水物語~第24夜・モンニュメロ4


東京地方は今日も朝から雨。
しかも7月というのに、気温はそんなに高くない。
むしろ肌寒いくらい。
ただ、湿度があるので、歩いていると汗ばむこともあるので、
こういう時は体温調節が一番難しい。

そして、そんな日にまとう香水も迷ってしまう。
たとえば、これが夏とか冬っていうように、明確に季節がわかったり、
蒸し暑いとか、乾燥しているとか比較的定まっている時は、
すんなりと肌に載せる香りが決まることが多いのだけど、
今日みたいな中途半端な時は、服と同じように、いつも悩むのだ。


今朝はちょっと用事があったので雨の中外出。
選んだ香りは、プルミエフィグエのシリーズ。
今は扱いが終わってしまったドライオイルを
シャワー後の体に塗って、
それからまずはエクストリーム(オードパルファム)の方をふきかける。
仕上げにその上から、ふんわりとトワレをまとう。
これで、肌に香りが馴染むのである。


用事を済ませて、何となく表参道のお店に顔を出す。
昨日も一昨日も来たんだけど(というか7月に入ってから毎日通ってます…笑)、
店員さんとお喋りがしたかったので、ふらふらと立ち寄ったのです。


表参道のお店の魅力は、
とにかく香りを好きなだけ楽しめること。
朝開店前にスタッフの方がすべての香水を試せるように
香りをつけたコットンを用意してくれる。
それを、何の気なしに鼻に近づけると、
意外なことにそれまで気づかなかったことに気づかされるのである。

ぼくは、すでに日本で発売されているラルチザンの香水は全部持っているし、
すべての香りを知っているはずなのに、
それらの香りを毎日試しているわけではない。
だから、お店で久し振りに試す香りも少なくない。

そんな中で
「あら、今日はこの香りが綺麗に香っているのね!」
って思うこともしばしば。


そして、今日たまたま店頭にサンプルがあった
期間限定で発売された「モンニュメロ4」を鼻に近づけてみたのです。
え?これって、こんな香りだったっけ?って驚いた。

もちろん、ぼくの知っている香りなのに、
今日はやけにクリアにハートに響いてきたの。
スタッフの方に言ったら、そのスタッフも
「あ!本当だ!今日は綺麗に香っていますね」
とのこと。

この微妙な天気にぴったりなのかもしれない。


ところで、この香水が数量限定で日本に初上陸したのは
2013年の年末のこと。
この時日本に入ってきたモンニュメロシリーズは、3,4,7,8の4種類。

このシリーズは大好きなベルトラン・ドゥショフールの作品なので、
当然のことながら、ぼくもずっと気になっていた。
そこで、発売された当日にお店に行ったのである。

その時の公式ホームページで紹介されたモンニュメロ全体の説明文は以下の通り。


香水ファンを魅了するエクスクルーシブな香り。


世界の限られた店舗だけに販売権が与えられてきた極めてエクスクルーシブなフレグランスコレクション
MON NUMERO(モン ニュメロ)から、この冬特別に4つの香りが日本に初上陸しました。

香りの冒険へと誘うアートな香りのコレクション。


モン ニュメロは、古典的な調香のルールを壊し、未知なる香りの世界を探求するというコンセプトのもと、調香師ベルトラン・ドゥショフールが2年の歳月をかけて誕生させた芸術的な香りのコレクションです。
煌めくような個性をもった8つのフレグランスの名前は、No. 1, 3, 4, 6, 7, 8, 9 ,10と、秘密めいたナンバーで表現され、言葉では語り尽くせないインスピレーションと共に、未知なる香りの冒険へと誘います。



これは、もう、手に入れるしかないでしょ?っていう説明ですよね(笑)。
当初の目的は、オリエンタルな香りという説明文が気になっていた
「モンニュメロ7」だった。
ところが、実際に店舗に行って、いろいろと試してみると、
以外にも7はそれほど琴線に響かなかったのである。

で、結局1時間ほど迷って購入したのがこの4だった。
その説明文が以下の通り。


MON NUMERO 4

~Harrods London~


意外性のあるコントラストで表現される、霧につつまれた記憶―。古き良き時代へと誘う、あのなじみ深い理髪店の香りを再現。うっとりするようなレザーと伝統的なラベンダーが香る、クラシックでノンシャランなムードただようモン ニュメロ 4。一度まとうと離れられないその香りは、まるでよく仕立てられたスーツのよう。

アコード:ラベンダー、レザー、バニラ


この中でぼくが一番惹かれたのは、「霧に包まれた記憶」というところ。
小説を書く時って、いつも霧の中を歩いているような気持ちになる。
真っ白な原稿用紙を前にして万年筆を握りながら、
物語を紡いでいくのは、まったく先の見えない(ぼくはあまり先を考えずに書くので)、
森の中を歩いている感じに似ているから。

この香水をつけたら、きっとそんな気持ちに寄り添ってくれるんじゃないかって、
勝手に思って、まっさきにこれを選んだのである。

(でも、結局その後、7、3、8、さらには現在出ている9、10、そして、入手困難な6までもゲットしてしまったんだけど…笑)


その後も、たまに、例えば初対面の男の子とデートする時なんかにつけることがあった。
この香りは、そんなにすごい癖があるというわけではない。
香調の中に「レザー」というのがあるけれども、それほど革くささはない。
むしろ、ラベンダーの香りの方が強い。
体温に温められると、徐々にレザー感が出てくるけれども、
それでも、例えば「SKIN ON SKIN」とか「イスタンブールの空」のような
革くささはぼくにはあまり感じられなかった。

そして、今日改めて店頭でこの香りをかいでみたんだけど、
ぼくの肌に載せてみると、理髪店のような固い香りは出なかったのだ。
恐らく、すでにベースにフィグを載せていたからなのかもしれないけど。

それよりも、妙に自分の今の気持ちや湿度、温度にフィットするのだ。
このフィット具合をどのように表現したら良いのかわからないのだけど。

前に雨に似合う香りとして「フルールドリアン」をご紹介したけど、
この「モンニュメロ4」は、また違った雨を想起させる。

その違いをたとえて言うなら

「フルールドリアン」は南国の雨。
朝起きたら、外は雨。窓を開けたら、南国の花の香りとともに、
土の香りや何とも言えない濃厚な熱気を感じさせる香りが体を包み込むような感じ。


一方「モンニュメロ4」は都会の雨。
雨をはじくアスファルトの独特の香りとか。
人いきれとか、あるいはその喧噪から少し離れたところで、
雨宿りに入ったお店の軒先でぼんやり雨を眺めている。
そんなイメージ。


山田詠美さんの短編で「雨の化石」というのがあって、
ぼくはこの話が大好きなんだけど、何となくその小説に似合う気がする。
これも、そんな雨宿りから生まれた小さな恋の話だから。

ともあれ、雨に似合う香りをみつけることができて、
ちょっと嬉しいです。


この香水は残念ながら限定発売なので、普通に店頭で購入するのは難しいかもしれませんが、
もし、どこかでひょっこりとみつけたら、ぜひとも試してみてください。
きっと、何か記憶のどこかにひっかかる香りだと思います。

やっぱりぼくはラルチザン・パフュームの世界観が、
そして、ベルトラン・ドゥショフールの作り出す香水作品が好きなんだなぁと
今日もまた表参道のお店で痛感したのでありました。

なお、冒頭で登場した「プルミエフィグエ」については、
また別の機会にじっくりとご紹介したいと思います。