我が家には超カネ食い虫の娘がいる。

年齢12歳、職業小学生、かつ私立中学受験生


ということで、この首都圏の中学受験、異常なのか正常なのか、オール公立の筆者にはわからんし、そもそも私立中学なんてなかったところに住んでいたのでこの感覚がわからん。


今年成人式を迎えた人が300万人をきったとか確か昨日聴いた気がする。


少子化は加速度的に進むのであることは確か。


ということで、塾ビジネスを、といきたいところであるが、この業界はM&Aがすごいらしくて、ブランドとデータの争奪合戦を呈しているようで筆者にはさっぱりわからんので、読者のU氏に譲りたいところである。


ご承知のように首都圏の中学入試は、千葉・埼玉地区が1月に解禁、東京・神奈川地区が2月に解禁である。


千葉・埼玉地区の中学は好む好まぬに関わらず、圧倒的な受験生を有する東京・神奈川軍団のお試し受験とされるのである。

そのため、たいしたこともない学校が合格偏差値が東京の難関校と同レベルということも珍しくない。


筆者が驚いたのはこのお試し受験コースもそうだが、この少子化の中で私立中学も生き残りに必死であり、おそるべくビジネスモデルを駆使していることだ。


勝手ネーミングで申し訳ないが、「落ち武者狩り」ビジネスモデルである。


受験生は第一志望一校のみを受験することは稀少であり、たいていは滑り止めというか、第二志望校を選択している。当然、別日程で受験できる学校を選択するのだが・・・


ここで驚いたのは、午後受験校の存在である。つまり同一日に2校受験できる。試験開始時刻も15時とかに設定してあり、午前本命受験生の移動時間まで考慮してあるという至れり尽くせりの学校である。


同じ学校でも日程をずらして数回実施するところは珍しくない。よくあるパターンだ。

普通は一回の受験につきいくらという受験料が必要だが、複数回試験を行う学校には、受験料割引制度もある。

3回受けても一回分だけでいいとか、3回分まとめて払えばディスカウントなんてものもある。これらは良心的な類であるが・・・


恐ろしいのは一回目の受験では15000円の学校が、2回目の受験では70000円になるところがある。

その二回目の試験日の設定が絶妙で、もう全て不合格でとにかく私立に行きたい、行かせたいというお受験親子の足元をみた日時にしてある。首都圏で言えば2月1日が本命校の集中日で、その後日が経つにしたがって落ち武者が殺到するようになっている。

この落ち武者の落ち武者の足元をみるかのような日時に70000円コースが待っているのである。


そしてIT化が進んだ現在、合格掲示板の前でガッツポーズする風景はなくなりつつあり、試験当日の夜に合格発表がWebでなされるところが増えている。

努力の成果も実らず、夜中に涙する時代ではない。


次なる受験校を受けるのだ。当然、想定内で予め滑り止めで決めてあることも多いが、その滑り止めで落ちる場合もある。そうした受験生のために前日出願OKという学校もあり、ここでも落ち武者狩りをする学校の戦略的な意図が見える。

しかし、更なるツワモノもあった。当日午前出願で午後受験という学校である。

まさに究極の落ち武者狩りである。


基本的に落ち武者はバカではない。難関校にわずか一点に涙する優秀な落ち武者もいるわけだ。

その落ち武者も人間、ましてや12歳の子供である。当然、精神的動揺もあって滑り止めも滑ることがある。


そんな優秀な落ち武者を拾おうとする直前出願OK学校は、救いの手である。

しかし、世の中そんなに甘くはない。落ち武者狩りをする学校もバカな落ち武者は要らないのである。

当然、試験問題のレベルは高くしてあり、優秀な落ち武者に来てもらいたいとの戦術にでてくる。


少子化で市場のパイが縮小する中で、いかに優秀な生徒を確保し、大学進学実績をあげ、落ち武者狩りビジネスモデルから長期的視点で脱出しようとする戦略には恐れ入った。


いやあ、中学受験の奥の深さをビジネスモデルの視点でみると面白い。


なんてこと言ってたら、筆者の娘に殺されそうである。


なんだか、塾の先生とコンピュータプログラム設計に用いるフローチャートのような受験戦略図のようなものを描いていた。どこでつまづいた場合はこういうふうに受験パターンを変えるというフローだ。


まあ、悔いのないようにがんばってくれ、わが娘よ。

落ち武者狩りにお世話にならぬよう、ひいては筆者の家計を圧迫しないように、さっさと諦めて公立中学に行ってくれ。


わが娘を含めた12歳の戦士たちの健闘を祈る。