宇田川町に「GROW AROUND」という店がある。渋谷では老舗の部類に入るであろう言わずと知れたインポートショップである。俺はその前身に当たる「TOM'S」に高校生の頃通っていて当時の店番はペイジャーのマサオ君だった。緊張しながら商品のサイズの有無を聞くと、読んでいたICE-Tの「俺の色は死だ」を置いて在庫表に目を通して「ないね。」と一言。渋かったなー。


そんなGROWと俺の距離が縮まるきっかけが二つある。一つは言わずと知れたあのキックス。そう、NIKE AIR FORCE ONEである。GROWは当時市場にあまり出回ってなかったストラップ付きのハイカットの復刻版を多数取り揃えていた。それは俺達的には高校時代に買えなかった憧れの品だったため、ちょうど小金を持ち始めてた俺やスイケンが即それに群がったというわけだ。二足買いしたねー!そのうち俺達は店の常連になった。


そしてもう一つの理由。当時宇田川町に溜まりまくってた俺達が日常的に見かけた男がそれである。男はいつもマンハッタン横の吉野家の自販機ゾーンに突っ立ってた。そいつは金髪坊主で身長が180以上もあって鋭過ぎる目をギラつかせて、どうやっても街から浮いてしまうタイプだった。視界に入ってしまうんだなー。そいつがGROWの店員だと知るのは少ししてからである。いつも街角にいるからショップ店員だとは俺は夢にも思わなかったね~。


男はヒロという名前だった。顔見知りになってからは立ち話するようになり、ハーレムなんかでもよく見かけた。元MICROPHONE PAGERの大ちゃんことP.H.といるのが常だったねー。ヒロは無茶苦茶だったからベロベロでハーレムのロッカーの上に座ったりしてた。そしてそんなとこがウケルということで俺達に可愛がられて、次第につるむようになっていった。


その頃俺達はすでにアルバムを作り出していた。「REQUIEM」、「BANBU」、「LIVE'99」というシングル曲で勢いがつき始めていたのもあり、マンハッタンのスタジオ「INSIDEOUT」に集う時間が徐々に多くなっていく頃だ。そしてヒロもそこに出入りするようになっていた。そこで俺達がリリックを書いたり録ったりしてる横でヒマそうにしていたヒロに俺達は「お前もラップすりゃいーじゃん!キャラ立ってるしさー。」なんつってよくけしかけてたわけ。


じゃあ芸名付けちゃおうぜー!なんつって盛り上がってる時に俺が思い付いちゃったわけよ。「ヒロさあ、でっかいし存在感あっからBIG-ZAMなんかどーよ?ガンダム好きだべ?」ヤツは二つ返事でその名前を受け入れ、それがラッパーBIG-ZAMの誕生となった。俺達のけしかけが功を奏し、ヤツは日々やる気を右上がりに漲らせていた。そんなある日、ヤツの初レコーディングの機会が訪れる。スタジオでその日制作していた曲を聴いてヤツはこう言った。「俺もやろっかな。」


それは俺達が待ち望んだ一言でもあったので問題はまるでなかった。ヤツはその曲のイントロマンとしてブースに入り...狂気とも言える怒濤のパフォーマンスを見せた!うおおお、と俺達は盛り上がった!そしてその勢いのままバースまで録音してしまった。それがあの名(迷)曲、「ASAMA131」である。あの曲のテンションにヒロはがっちりハマっていた。これがヤツが問答無用でメンバー入りすることとなる背景である。かくしてNITROは八人で活動するようになった。







ふい~。最後のでっかいやつ、やっとこ登場!もう30のヒロであるがこの頃は21か22くらい?俺ら的にはいつまでたっても「ウチの若いヤツ」って感じなんだよな。そんな末っ子ヒロであるが俺は個人的に結構影響受けてることも多いんだよね。ドゥーラグとかバスケジャージとか白Tとかあいつの影響だし、アングラ系ヒップホップばっか聴いてた俺がLOXとか聴くようになったのもそうだねー。


NITROの1st制作時期とかは結構俺的に転機でさ、それを経てDEF JAM JAPANでソロデビューした頃には俺はすっかりインディーキャラからメジャーキャラになってるわけよ、自分でもウケるくらい。そしてその後のPLATINUM TONGUE JAPAN TOURで俺の横でサイドマイクを握っていたのもやはりヒロである。ヤツの「規格外キャラ」が俺のUSコンプレックスを跳ね飛ばす手助けをしたのは言うまでもない。


俺がセカンドソロアルバムを手がける頃にはヒロは自分のプロダクション「B.B.INC」を立ち上げて自分のことに集中し始めていた。一番若い分一番自立心も強いんだろうなー。ヤツはいつでも「いっちょまえになる」ことを人生の目標にしているような気がする。その過程の山あり谷ありを見守るのが俺達好きなんだな、結局。


さてさて。ここで終わってもいいんだけど...切れがワリーからあと二回書くことにするわ。全10回でキレイに終わろうかと。ここに揃った八人がこの後どうやって日本をジャックするか、そこまで聞きたいべ?うん、俺も書きたい。つーわけでもうちょっと付き合っておくんなまし!ヨロピコ!でわ次回じゃー。ブラッッッッ!!







P.S.


昨日のアゲハのマッチョ、やばかったね~!アレはホンマモンっすわ。BIG UPハマの大怪獣!!