西麻布CHAOSの金曜レギュラーが始まって案外すぐにその珍客はやってきた…。


当時の西麻布~ギロッポン間はクラブが山ほどあって、そのどれもが熱い盛り上がりを見せていた。


YELLOWを始めJUICE、TERMINAL、ZEUS、NUTS、もちろんCLUB JAMAICA、あと名前を思い出せないラガなクラブもまだいくつか…。


まぁ渋谷~西麻布~六本木間を縦横無尽に駆け巡って夜遊び出来た頃だったわけだ。


言っとくけど当時の江戸のクラブは無茶苦茶盛り上がってたぜ~!今ベテランと呼ばれる人種はみーんないたしな。


みんな楽しすぎて朝クラブの外から帰らない帰らない!延々路上でフリースタイルしたりまだ酒飲んでたり…ウォークマンでデモ聴かせあったり。


とりあえず今までの人生であの頃ほど江戸のクラブ界が盛り上がってた時代を俺は知らない。今とまた全然ちげーんだな。


そんな時代になぜかヤツは他のどこでもなく、人もまばらな我等がCHAOSを選んで客の中に紛れていた。


基本金曜CHAOSの客はただで入る身内が大半だった。だからそれ以外の人間はどうしたって目に入ってくる。目立つ。


だが俺はいつヤツが店内に忍び込んだか全くわからなかった。ただいつの間にか、そこにいたんだ。


俺がそれに気付いたのは恒例のフリースタイルセッションが始まった時だった。いつものように俺とケイボムはマイクを回していた。


余談だがCO-KEYもよくいたな~。フリースタイルの時もよく歌ってた。あとはフラッと訪れたラガ人がサクッと盛り上げていったり…クリスタルとかね。


まぁそんな感じの成り行き任せのセッションをその日もしてたんだ。そしたら見たことないギラギラしたBボーイがマイクを取りにきたわけ。


それがまだラップをかじりたてのスイケンだった。当時の相方のケンタもそこにいた。恐らくこの夜がその後のヤツの人生を大きく左右しただろう。


だがラップをかじりたてのスイケンに当時の刺々しさMAXのケイボムは負かせなかった…。この頃のフリースタイルはスキルではない。気合いだった。


しかし不思議なものでその日を境に俺達は急速につるみ始めた。ハヂメ、俺、ケイ、スイケン、ケンタの五人は夜通し暇を潰したものだ。


俺達を繋げた理由の一つにペイジャーヘッズだったことがあった。俺達はお互い知り合う前からいつも渋谷STILL DIGGINに溜まっている若い衆同士だった。


当時ハヂメは原宿の小さなスニーカー屋で、スイケンはシブジョの前の洋服屋で働いていた。ケンタは学校に通ってたし、残りは…プーだったね。


だから夕方頃にプラプラ原宿行ってハヂメに会って、その後渋谷に出てスイケンの店に顔出して、最終的にレコ村でディギンみたいなパターン。


ディギンではよく棚卸し手伝って飯食わせてもらったりしたな…(ジンさんお元気でしょうか)本当にお世話になりまくりだった。


当時の俺達はただの路上のヘッズだった。俺達みたいなクソみたいなBボーイが軽く千人は渋谷の道端にいた。


その頃スイケンとケンタは自分たちでTシャツを作ってバイト先の店に置かせてもらっていた。そのブランド名は…「CHANNEL 5」と言った。


そしてそのブランド名はいつしか俺達のクルー名と化した。俺達は月に一度くらいの割合で「CHANNEL 5」の名でライブイベントに潜り込んで暴れ狂ったもんだ。


恐らく俺達は鼻摘まみ者だった。厄介なほどイケイケだった。しかし当時のシーンは結構みんなそんなもんだった。カチコミ上等、いやならやるなってね。


しばらくそんな日々が続いたあとにケンタがやんわりラップをやめて、元々の夢であるブランド立ち上げに向かって違う道を歩き始めた。


スイケンとケンタは一緒に新丸子に住んでいたがそこも解約して二人とも一先ず実家に戻ってそれぞれの生活を始めていった。


そしてケンタと入れ違いにクルーに加入してきたのがヨウクンことBIGGA HEADだった。ヤツとは陳スクより前にいろんな高校ごちゃまぜの百人飲み会で知り合っていた。


ヨウクンは俺にとって始めてのBなツレだった男。高一かな?そして偶然ヨウクンと同じゲーセンに溜まっていたのが陳スク。その三人で行動するのが高校時代のパターンだった。


そんなヨウクンはDJを嗜んでいて、なかなかコスラッチもイケルクチだった。でも久しぶりに意気投合したヨウクンはなんとラップがしたいと言う。へぇ~!


というわけでヨウクンが加入してCHANNEL 5は再び五人になった。このスタイルでブクロのCHOICE、西麻布のCHAOSを中心に俺達はマイクスキルを磨いていった…。







ハイ、スイちゃん出ました~♪話はゆっくり進んでいきます。このシリーズのテーマとなるグループから二人目の刺客!


つってもまだ二人目…あと六人?全員出てくるまであと何回かかるのだろう…でも次から来るぜ~ボロボロッと!


まだまだ続く怒涛のヒストリー、しかと心して読んでくれたまい。人に歴史あり。クルーに歴史あり。街に歴史あり、だな。でわまた次回!