ドビュッシーのカンタータ《放蕩息子》の最新録音が出ることになりました。ラヴェルの歌劇《子供と魔法》と組んで2枚組で発売されます。

 

昨日紹介した、ダムラウさんの「マイヤーベーア・アリア集」と同時期に解説を書いていたので、机の周りが楽譜だらけになり・・・でも、どちらももう脱稿したので、もう書棚に戻しました。

 

カンタータ《放蕩息子》は、ドビュッシーが作曲家登竜門のコンクールであるローマ賞のために書いた課題作品ですが、この人独自の和声と、ロマン派的なメロディの美しさが絡み合っていて、初期の傑作と呼んでいい素晴らしさと思います。

 

ちなみに、ローマ賞がどういうものか、最近、フランスで研究結果をまとめた長大な論文集が出ていて(実に900ページを超える、広辞苑みたいな一冊です)、そちらを購入してあったので、それも参照しながら解説を書いていました。

 

《放蕩息子》の初演、つまり、コンクールの課題曲発表の際には、当時のオペラ界の重鎮たちがソリストとして参加。若きドビュッシーは、自分の曲が、フランスを代表する名歌手たちによって歌われるさまをどのように聴いたのかな?と思います。ちなみに、この時は、オーケストラではなく、ピアノで演奏されました。ドビュッシー自身と彼の友人が二人がかりで弾いたとのこと。

 

ところで、《放蕩息子》といえば、母親リアのアリアが有名ですが、タイトルロールの放蕩息子の歌もとても雄弁。

 

アラーニャが歌うと、本当に放浪して好き勝手やってきて、でも故郷に帰りたくなったんだという郷愁がメロディに滲んできます。それが人柄、個性と音楽の結びつきというものなのでしょう。感嘆しながら聴いていました。

 

そういえば、以前、メットライブビューイングの《マノン・レスコー》であったか、楽屋にカメラが入ろうとしたら、デ・グリュー役のアラーニャが、一所懸命《放蕩息子》のおさらいをしている姿が映し出されました。

 

「今度、コンサートで歌うので。練習中だよ!エヘヘ」

 

宣伝の意図もあったのかもしれないけれど、愛嬌ある感じで、画面を見ながら笑ってしまいました。

 

そのコンサートも無事成功して、この録音へと繋がったのでしょう。