Nyarlathotepの哭く夜は ~黒羊の章~ | Nyarlathotepの啼く夜は

Nyarlathotepの啼く夜は

私は受け入れる。円環の理を… 腐ってますが、何か???

「陰州桝」での新しい出会いは、私の新しい人生を予感させる決して悪いものではなかった。
正直、裸で乱入することはどうでもよかった。
Nyarlathotepさんが一番を買って出たので、彼に任せればいいだろう。

ふとNyarlathotepさんを見ると、もう風呂場で覗くためのイメージトレーニングを始めている。
想像力に富んだ人だなあ。
KuMaさんは、如何に楽に服を脱ぐかを検討している。 真面目な人だ。

風呂場でNyarlathotepさんは、鼻息が荒くなっていた。
「神聖なる穴」と名付けた覗き穴に、興奮はピークに達している。
私はKuMaさんとアイコンタクトをとり、じゃんけんでわざと負けることにした。
Nyarlathotepさんがチョキを出すことはわかっていたので簡単なことだった。
私とKuMaさんは負けたことを悔しがりつつ、実はほっとしていた。
Nyarlathotepさんの後姿に背を向け、浴衣をまとい、私は、この宿に着いてからずっと気になっているあの場所へむかった。

KuMaさんはどうしたのだろうか?
風呂場のほうから悲鳴が上がったが、気にすることはない。

私は躊躇なく、隣の女子脱衣所に入る。
旅館について早々に、妹と偽ったあの少女の猫に引っかかれた傷についた泥を洗い流しに行った時に、女子脱衣所にお札が貼られた扉があることを知っていたのだ。
もちろんチーリンのブラジャーのサイズを確かめたし、新しい方のパンティは懐にしまった。
私は懐のパンティを握り締めつつ、扉を開けた。
鍵はかかっていなかった。

チリンチリン。
扉の向こうには階段がずっと下に向かって伸びており、懐中電灯で回りも何とか見渡せるが、階段の奥はずっと暗黒が広がるように思えた。
奥から鈴の音が聞こえた。
私は足場を確かめつつ、奥へ進んだ。
進めど進めど暗黒が広がるばかり・・・・。
声が聞こえる・・。
「・・・なさい。・・・・んなさい。」
!!
すず?
私は駆け出した。

いきなり広い空間に出た。 洞窟だ・・・・。
一本の柱があり、何かが揺れている。
私は歩を緩め、ゆっくりとその何かに近づいた。
人だ。。。。
皮をはがれ全身の筋を抜かれたその姿は・・・・、桜子だった。
私は全身に恐怖を感じたが、身動きも取れなくなった。

「お兄ちゃん、こっち。」
小さな柔らかい手が、私の色を失った手を引いた。
宅配便で送ったはずのあの女の子だった。
少女の手に引かれて、洞窟の細い道を進む。

ここがどこかわからない・・・・。

少し落ち着いたところで私が足を止めると、少女も足を止めた。
「君は、・・・・誰だ?」
不思議とその少女に対して、嫌悪感を抱いていない。
「運命って知ってる?」
少女はうれしそうに、私の問いに問いで返した。
「運命は知ってるけど、君は、名前は?」
「私はクロト。あなたの運命を紡ぎ出すの。」
????
何のことかさっぱり分からなかった。
「あなたは、ここに来てはいけない人。」
少女の目が、哀れむような視線を私に投げかけた。
「ここには何があるの?」
私は質問したいことが山ほどある中で、それを選んだ。
「・・・・・地獄」
恐ろしく低い声で、クロトはうなるように答えた。

「堕魂様と関係があるの?」
私は質問を続けた。
「それは知らない。私は、あなたの運命を紡ぎ出すだけ。」
クロトは優しく答える。
その瞳は大きく、凛として、私の心を射抜くような感じがした。
そして彼女は歩き始めた。

「俺は、すずに会わなければならない。会ってどうするのかはわからないけど。。。。」
私は彼女を小走りに追いかけて、質問を続ける。
「・・・・・死ぬわよ。」
そう言うとクロトは後の質問にも答えず、ただ黙って歩き続けた。
私も、それ以上は何も言わなかった。

旅館へ続く道の崖の下に、その洞窟の出口はあった。
出口を出たところで、クロトは一度私に抱きついて、「あなたを死なせはしない。」とささやき、そのまま消えて行った。
私は、もう何時間たっただろうかと時計を見た。
ほんの5分ほどの出来事であることに気付き、唖然とした。

旅館に戻って、廊下でいろは姫さん達と出くわした。
チーリンが悲しそうな顔をしている。
「何かあったの?」 私は聞いた。
「下着が盗まれた。」
・・・は!! まずい。
しかしいろは姫さんの一言が、私に冷静さを取り戻させた。

「多分Nyarlathotepさん。さっき覗こうとしてたみたいだし。」
私はチャンスを感じ、懐からチーリンのパンティを取り出した。
「実は、風呂からNyarlathotepさんが戻ってもう寝てるんだけど、頭に何かつけてるからなんだろうと思ったらこれだった。とりあえず奪い返しておいたんだけど、誰のかわからなくて・・・・。」
チーリンは私の手からパンティを奪い取って、部屋へ小走りに帰っていった。
「明日Nyarlathotepを糾弾するニダ。」
いろは姫さんの鼻息が荒くなった。

私はこれから風呂に行くことをいろは姫さんに告げ、その場を後にした。