賢明な読者の皆さんは、インドの『ポーター』という職業をご存知であろうか。
先月『世界まる見え!テレビ特捜部』で、あるポーターを密着取材していた。
ポーター=『荷物運び』の事である。
この放送を見て八戒、ある男に胸を打たれてしまった・・・。
その男は家族を養う為に故郷を離れ出稼ぎでポーターをしている。
よく観光客の荷物を頭に乗せて運んでいる人をテレビで見た事があるが、今回記事にしたいポーターは主に生活物資を運んでいた。
名前は『ハッサン』←ネーミングがベストオブインド人って感じだね。
近年のインドは経済成長が著しいが貧富の差も非常に大きく、満足な教育を受ける事のできない家庭では、こういった仕事を続けて生活するしか無いのが現状の様でハッサンの父親もポーターだったらしい。
生活物資を運ぶポーターの仕事は過酷を極める。
毎日、150kgもある綿織物とか200kg以上の石油とかを数kmも徒歩で運ぶのだ。
報酬は、せいぜい60ルピー(約90円)とか200ルピー(約300円)!
しかも仲間数人で運べば人数分で割るから、200kgの石油を5kmも歩いて運んでも3人で作業したらたったの100円。
この作業を一日に数回繰り返し、コツコツと金を稼いでいる。
ハッサン達ポーターは無料宿泊施設で寝泊りしており、彼は15歳から30年間ずーっとここでポーターをしている。
家族を養う為にお金を貯めているから生活は質素で、アルコールもギャンブルもやらない。
ボロボロに磨り減った奥さんの写真を見せてハッサンは「寝る前に毎日夢に出てきてくれってお祈りするんだ」と言っていた。
写真に写った奥さんの笑顔が心の支えなんだ・・・。
そんな過酷な毎日を続けた甲斐もあり、4ヶ月で18000ルピー(約27000円)を貯めたハッサン。
息子と娘にお土産を買って家族に会いに数日間の休暇を取る事にした。
ハッサンはカシミール出身なのだが、カシミールはパキスタンとの紛争があり経済が発展しない事から仕事が無いので出稼ぎをしているのだとか。
ハッサンの家は貧しく電気もろくに無い状態に見えたが、家族は一生懸命頑張って金を稼いできた父親に久しぶりに会えた喜びで笑顔いっぱいだった。
お土産に喜ぶ子供達の笑顔を見ているハッサンの顔もまた笑顔で、貧しくてもこの家族は間違いなく幸せに溢れていた。
そんな楽しい休暇もあっという間に過ぎ、ハッサンはまた出稼ぎに行く日が近づく。
家族との別れの前日、ハッサンは家族を誘ってピクニックに行った。
なんか、そのピクニックも車で遠出とかじゃなく、本当に近所の広い草原で家族団らんっぽい感じ。
でもそれがハッサンにできる精一杯の家族サービスなんだろう。
俺なら家族の顔を見たらもう心が折れて過酷な出稼ぎになんて行かなくなってしまうな・・・と心の中でつぶやいていたら、ハッサンはこう言っていた。
「俺は家族の大黒柱です」
「どんなにつらくても妻や子供の為に金を稼ぐのです」
「それが俺の幸せなんです」
「だって俺は父親ですから」
テレビ用のコメントなら誰でも実際とは違ったカッコいい事が言える。
でもハッサンは本当にカッコいい。
だって、翌日にはまた家族の為に過酷な出稼ぎに行ったんだから。
最後にハッサンは将来について、こう語っていた。
「将来の夢?あるよ」
「子供達がいつか『ポーターの仕事は父さんで最後だ』って言うのを聞く事なんだ」
「父さんの代で終わったって聞くのがね」
その夢を叶える為に、子供に教育を受けさせて立派な職業に就ける為にハッサンは過酷なポーターを続けている。
世のお父さんなら皆、彼の事をこう言うだろう。
「ハッサンは男の中の男だ」と。
※仕事で辛い思いをしたらハッサンを思い出すようにしている八戒。
しかし心のどこかで「でも俺、ハッサンでもインド人でもねーしな・・・」と思いサボりがちに。
そんな八戒に励ましのお便りを!