リスティングに潜むナッシュ均衡。 | インターネット広告代理店で働くデータサイエンティストのブログ
こんばんは、今回は安井(@housecat442)が担当させていただきます。

最近リスティングの入札がナッシュ均衡なんじゃないかな?って思っていることがあるので、それについて書いていこうかなと思います。



さて、突然ですが「ナッシュ均衡」をご存知でしょうか?

ゲーム理論という分野において非常に有名な「ある状態」を示すものなのですが、今回それがリスティングにおいても起きているだろうなという事を書いていきます。


さて、ナッシュ均衡の定義をwikipediaから持ってくると、

「ナッシュ均衡は、他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせである。ナッシュ均衡の下では、どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない。」

となっています。

おそらくゲーム理論とかをかじったことなければさっぱりだと思いますので、ちょっと解説をしたいと思います。


まず二人のプレイヤーが何かしらのゲームをしているとしましょう。

それぞれのプレイヤーはより高い利益を得ることを目標としています。

そして、どちらも「AかB」という二択を迫られており、その組み合わせによってそれぞれのプレイヤーが得る事が出来る利益が違ってきます。

しかし、二人とも相手がどちらの選択をするか?を知らずに二択を選ばなくてはなりません。





さて、仮に利益の組合せを上にある図のように設定しましょう。

二人のプレイヤーが二つの選択肢を持っているので、起こり得る状況は全部で4通り。

ここまでの情報を二人のプレイヤーが知っている場合、どのように行動することが合理的でしょうか?


まずオレンジ色のプレイヤーから見てみましょう。


このプレイヤーにとって選択はさほど難しいことではありません。

もしもう一方の緑のプレイヤーが選択肢Aを選んでいるとしましょう。

この時オレンジはAを選べば5、Bを選べば4の利益が手に入ります。

よって、より大きい利益を得る事が出来るAを選ぶ事が合理的です。



では緑のプレイヤーがBを選ぶ場合はどうでしょうか?

この時オレンジはAを選べば2、Bを選べば1の利益が手に入ります。


よって、やはりここでもAを選ぶ事の方が大きな利益をもたらしてくれることになります。

つまり、緑のプレイヤーがどっちを選ぼうが、オレンジのプレイヤーはAを選ぶ事でより大きな利益を得る事が出来ます。



さて、この状況下での緑の選択はどうなるのでしょう?


上のように考えれば緑にとってオレンジがAを選択することは明白です。

よって緑はAで2、Bで4という選択に絞られ、Bを選択することになります。


なので、

オレンジ:A
緑:B

という結果になります。




ナッシュ均衡の大切な事は、この時オレンジも緑も選択肢を変えると損してしまうという事です。

もし、オレンジがAのまま緑がBからAにすれば、緑の利益は4から2へと下がってしまいます。

一方、緑がBのままオレンジがAに変えるケースでも、オレンジの利益は2から1へと下がってしまいます。


つまり、上の結果は変化が発生しない均衡状態にあるという事になります。




さて、リスティングを単純化すると入札してより良いポジションを買って利益を得るゲームとして解釈することが出来ます。

プレイヤーがー二人しかおらず、入札を上げるか下げるかという選択があり、順位によってそれに応じた利益を得ることが出来るとしましょう。


基本的には入札を上げれば順位が上がり、下げれば順位が下がります。

しかし、どちらも同様の行動をとった場合には順位が変わらないという状態が発生します。

こんな状態が起きているとき、相手のプレイヤーがどのような行動をとったとしても、入札を上げれば順位が下がることを回避して利益を損なわなくて済みます。

なので、どちらも入札を上げるという選択をとり、そこで均衡してしまいます。

こんな事がリスティングで起こっているんじゃないかな?と最近考えています。


実際には入札を変えないって選択肢があったり、どのくらい変えるか?って要素があったり、入札の上げ下げに予算の消化が関係したりとかって事を加味する必要があるのですが、リスティングの市場がどんな設計になっているのか?はこの説明でとらえられているんじゃないかなと思います。

ちなみにどちらのプレイヤーも入札を上げると、得するのは検索エンジンを持っているメディアという事になります。

まったくもってうらやましいですね。