福島県南相馬市 法令の640倍の汚染地に戻される住民の悲痛 | いわき市民のブログ I am An Iwaki Citizen.

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ベルトルト・ビレヒト: ガリレイの生涯、第13幕

福島県南相馬市 法令の640倍の汚染地に戻される住民の悲痛
http://jisin.jp/serial/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84/disaster/24654


「ここは、居住制限区域だったのに、段階を踏まずに避難指示解除されたんです」

自宅前で、そう訴えるのは、7月12日に避難指示が解除された南相馬市小高区・川房(かわぶさ)地区の行政区長、佐藤定男さん(60)。

佐藤さんは現在、家族とともに宮城県内の借り上げ住宅に住んでいる。今回、福島第一原発事故の影響による避難指示が解除になるのは、福島県南相馬市の小高区と原町区の「避難指示解除準備区域」(年間被ばく量が20ミリシーベルトを下回る地域)と、小高区の居住制限区域(同20~50ミリシーベルトを越えるおそれがある地域)。避難指示が続くエリアでは、対象者が最多の計3516世帯、1万967人となる。

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内閣府の資料には、『年間被ばく線量が20ミリシーベルト以下になることが確実になった場合は、居住制限区域から避難指示解除準備区域に移行します』と書いてあるんです。南相馬市からも、ずっとそう説明を受けていました」と佐藤さんの妻・明子さん(60)も語る。

なぜ段階を踏まずに解除したのか。記者が、管轄している内閣府の原子力被災者生活支援チームに問い合わせてみると「段階的に避難指示を解除しなければいけないというルールがあるわけではない」との返答だった。除染が済んで年間20ミリシーベルト以下になったこと、生活インフラが整ったこと、自治体や住民との協議ができたことなどが、解除の主な要件になるという。

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前出の村上さんのお宅には、玄関横にウッドデッキがあった。

「このウッドデッキの汚染がひどいんです。木に放射性物質が染みこんでいて、もう除染はできないから、取り壊すしかないと言われてるんですけど、思い出があるので迷っています……」

記者がウッドデッキ周辺を測定してみると、空間線量は毎時0.9マイクロシーベルト。ウッドデッキの表面汚染密度度は、約10万ベクレルを超えた。この数値は、(※)放射線管理区域にあたる4万ベクレル/平米より、はるかに高い。玄関周辺では、毎時0.7マイクロシーベルト前後だったが、自宅裏庭を測定してみると、すでに表土をはぎとった場所でさえも、地表から約1メートルで毎時2マイクロシーベルト越える場所があった。周辺の土を測定すると、2,560万ベクレル/平米という、放射線管理区域4万ベクレル/平米の約640倍にも及ぶ放射性セシウム(セシウム134とセシウム137の合算値)が検出された。

(※)放射線管理区域とは

放射線による障害を防止するために法令で管理されているエリアのこと。この法令によると18歳未満は、放射線管理区域での就労が禁止大人であっても10時間以上の就労は禁止飲食も禁止となっている。


 
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実際に、子育て世代で川房地区に戻る人はいない。

「東京オリンピックまでに、原発事故を“なかったこと”にしたいんだ」

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「ご不安なら、実際に積算線量計を付けて、線量マップを作られたらどうですか。ホットスポットがわかったら、被ばくを避けられますよ」

解除前に行われた住民と内閣府原子力現地対策本部との懇談会で、ある役人はそのような発言をしたという。

「本当は、ホットスポットもきれいに除染してから、『もう安全ですから帰ってください』と安全宣言して解除するのが筋。でも、国側は決して、『安全だから帰ってきなさい』とは言いません。『戻りたい人が戻れるように避難指示を解除した。戻るか否かは自己判断です、という姿勢なんです」(妻・明子さん)

「原発が爆発して、危ないから出ていけと言われ、もう大丈夫だから戻れと言われる。線量が高いからといって戻らなければ、やがて仮設住宅も追い出されて”棄民”ですよ。私たちって、いったい何なんでしょうか」

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