エネルギー基本計画の問題点が多すぎる!金子勝が全部整理! | いわき市民のブログ I am An Iwaki Citizen.

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エネルギー基本計画の問題点が多すぎる!金子勝が全部整理!
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65886114.html

◆「エネルギー基本計画の問題点」 金子勝
http://www.youtube.com/watch?v=KrmmqafASlg

文字起こし
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2013年12月11日 NHKラジオ第1「ラジオあさいちばん」「ビジネス展望」

アナ● 金子さん、おはようございます。

金子■ どうも、おはようございます。

アナ● 法律に基づいて国の中長期的なエネルギー政策の、基本的な考え・方針を示すエネルギー基本計画、今議論が、見直しに向けた議論が続いていますが、動きがありましたね。

金子■ えぇ、ちょうど秘密保護法が国会で採決された日に、経済産業省の総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会っていうところで、エネルギー基本計画の素案というのが示されたんですね。

主な内容を言うと、まずは原発の依存度を可能な限り低くするとしながらも、電力の安定供給、コストの低減、温暖化対策の観点から、安全性の確保を前提にして、原発を重要なベース電源と位置づけた。つまり、民主党政権下の「2030年代に原発をゼロにする」という方針が覆された。

それから2番目は、今、全国で7つの原発の14基が原子力規制委員会の安全審査を受けている訳ですけど、原発の再稼働に前向きな姿勢を明確にした、と。

それから3番目は、民主党政権下で原発の新設・増設は行わないというふうにされてたんですけど、今回は原発の新設や増設について、直接言及しないけれども、必要とされる規模を確保するという記述になって含みを持たせている。

それから全体の電力供給に占める電源別の構成比率については、現時点で原発の再稼働が見通せないという理由を挙げて、示さなかったと。だから、使用済み核燃料については、国が前面に立って、最終処分に向けた取り組みを進める、というふうにして、最終処分場の候補地を自治体からの公募で募っていたんですけれど、処分場に適した地域を示すなどして、国が主導して問題に取り組む姿勢を明確にしたと。

それから最後ですけれど、ただし太陽光や風力といった再生可能エネルギーについては、今後3年程度ですけどね、3年間ですけど、導入を最大限加速すると、したと。で、その後のこと3年以降については書かれていないと。

で、今回のエネルギー基本計画が何より問題なのは、決定のプロセスにあると思うんですね。で、前回の討議参加型世論調査と呼ばれるものと比べてもですね、民意を反映させるプロセスが全くないと。で、昨年9月、民主党政権下において決めた、2030年代に原発ゼロとする、まあ、エネルギー政策っていうのは、討議参加型世論調査って先ほども言いましたけど、公募の参加者の意見表明をおこなわしたんですね。当時9万を超えるパブリックコメントが寄せられて、原発ゼロが圧倒的多数だったと。で、こういう討議参加型世論調査と比べて、今回は、総合資源エネルギー調査会の分科会ですね、基本政策分科会において、脱原発を主張する議員を外して、原発推進の立場に立つ議員に差し替えた上で、審議会だけで決めちゃってると。明らかに民意を軽視していると言わざるを得ないということだと思います。

アナ● そもそも、成り立ち、に疑問があるという…

金子■ そうですね。

アナ● …点ですね。中身についてはいかがですか。

金子■ 中身もですね、この、使用済み核燃料の最終処分場は見通しが立たないと、いう、根本問題があるわけですけど、これを別にしても、原発を重要なベース電源と位置づけた、つまり基幹電源と位置づけた根拠が非常に曖昧だと。

ひとつは電力不足と安定供給っていうのを理由に挙げているんですけれど、大飯原発の3、4号機を再稼働させる前にもですね『計画停電が必要だ』とか『電力が不足する』という風潮を一人歩きさせたんですね。で、昨年の夏を見ると最大需要があったのが、8月3日の午後2時台なんですけど、2682万キロワットだったんですね。想定した最大の電力需要というのは2987万キロワットで、それを300万キロワット以上も下回ったんです。

で、2010年夏の最大需要が、でも3095万キロワットなんですけど、それと比べると400万キロワット以上も少なかったと。いわゆる節電効果を過少に見積もった結果ですね、余剰電力が一割ほど生じてしまったと、いうことなんですね。

今年の夏も猛暑だったけど乗り切ったわけで、むしろ省エネとかスマート化をひとつの産業戦略にしていく発想こそが、を、求められているんであって、原発再稼働の理由にはなってないと思うんですね。

で、そこで次に持ちだしてきたのが、燃料費の増加、ってやつですね。経産省は原発停止による火力発電の焚き増しによって、2012年度に燃料費が3.1兆円増えたとしてるんですけど、ここでも計算のごまかしがあるんですね。

で、経産省は2010年の、から過去3年の、原発の平均電力量っていうのを、発電量ですね、これが2748億キロワットなんですけど、泊3号機と大飯の3、4号機の発電量156億キロワットを差し引いた2592億キロワットを全て火力発電で代替したっていうふうにして計算して3.1兆(円増えた)って出してるんですね。

しかし、実際には節電や省エネが進んだことがあって、火力発電の焚き増し分は1827億キロワットに過ぎなかったわけです。つまり766億キロワットも焚き増しが水増しされた数字で計算してるわけです。

しかもその火力発電の内訳を見るとですね、燃料単価が高い石油火力が1206億キロワットも発電すると見積もられていたり、LNGガスですね、この価格が原油価格に連動する形の高い価格でそのまま計算されていて、もうこのLNGの調達先を分散すればかなり節約が可能な数字なんで、環境エネルギー政策研究所の試算によれば、燃料費の増加分は3.1兆円の半分の1.5兆円程度だっていうふうにしてるんです。でも、経産省は原発を再稼働させたいために、燃料費の増加を過大に見積もってると言わざるを得ないと、いうことだと思うんです。

アナ● 一方、原発のコストはどうですか?

金子■ 原発のコストもですね、今回の基本計画の場合でも、2011年の12月にコスト等検証委員会が出した、キロワットアワーあたり8.9円という数字を使っているんですね。ちなみに石炭火力は9.4円で、LNGガス10.7円だと。

つまり原発が最も安いということなんですけど、これはモデルプラントを使って50基全部が動くことを前提にした、シミュレーションで試算したものなんですね。

で、何が抜けてるかというと、まず2兆円ほどかかる追加安全投資の分がはっきり全部入っていない。

それから、東京電力が自身が出している賠償除染費用が10兆円もあるんですけど、これも入っていないんですね、全部。

で、燃料費の1.5兆円とは比べられないくらい大きいわけです。で、それらが実際には発電の発電コスト、発電単価を押し上げているんですね。

で、さらに政府も原発依存を出来るだけ下げるとしているわけですけど、原発を40年で減価償却して、廃炉引当金を積む事になっているので、もし途中で廃炉にすると、原子力発電施設と核燃料の残存簿価ですね。減価償却が終わってない分でけど。それから廃炉引当金の不足が生じて、特別損失として計上しなければいけないわけです。

で、現時点で50基全部を廃炉にすると4.4兆かかると言われているわけで、電力会社の経営を圧迫しちゃうんですね。それゆえ、電力会社は安全無視で原発を再稼働させたくなるわけですけど、再稼働する原発が少なければ少ないほど原発の発電単価は上昇する事になるわけです。つまり分母が小さくなるわけです。で、私が50基中28基をですね、廃炉にして安全投資10兆円の賠償除染費用を乗せて、他の廃炉費用も乗せていくと、政府のシミュレーション方式を使って試算しても、原発の発電単価はおよそ20円、キロワットアワーあたり20円近くとなる。つまり、火力の2倍になっちゃうと。もはやもう、原発の経済性は全くないと。

で、問題はですね、この経済産業省がですね、省令一本で廃炉費用を電力料金に乗せられるようにしたことなんですね。原発はもう不良債権なんで、その抜本処理が必要だと。その為にはもう電力会社に発電、原子力発電施設と核燃料の残存簿価分と廃炉引当の不足額に当たる株式新株を発行させて、それを政府が買い取って、原発を電力会社から切り離して、すでに事実上破綻している、日本原子力発電に集めると。つまり事実上の原発の国有化という抜本処理が必要なんだということだと思います。

アナ● 金子さん、ありがとうございました。

金子■ どうも、ありがとうございました。

アナ● ビジネス展望 「エネルギー基本計画の問題点」慶應義塾大学教授・金子勝さんでした。

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