挫折を味わい、自分自身の無力さに怒るしかない今日。


そこで私に刺激と生きる活力を与えるのは、名優による名演技である。



そこでレビュー。


デアゴスティーニ 刑事コロンボ新シリーズ  「だまされたコロンボ」



<あらすじ>


犯人は男性向け雑誌のカメラマン兼オーナー ショーン・ブラントリー


「シャトー」と呼ばれる大豪邸。

広大な敷地には動物が放し飼いにされていたり、

また庭にあるプールでは大勢の美女モデルが泳ぎ、あるいは日光浴に勤しむ。

ブラントリーはそのモデルたちに囲まれてこの豪邸で暮らしていた。


ある日、長年の付き合いである共同経営者で愛人のダイアン・ハンターから、雑誌社の持ち株をイギリスの実業家に売却すると告げられる。

ブラントリーの度重なるモデルたちとの浮気に、遂に我慢の限界が来たのだ。


株の51%はダイアンが所有しているため、それが他者に渡ればブラントリーは雑誌社から追いやられ、シャトーでの暮らしも失ってしまうことになる。


その夜、ダイアンはロンドンへ経つため、リムジンで空港に向かった。



数日後、ブラントリーの邸宅をコロンボ警部が訪ねる。


ロンドンへ降りて直後、ダイアンが失踪したためロンドン警視庁に捜索願が出されたという。

そしてアメリカでの捜査を依頼されたとコロンボ警部は告げた。


しかしブラントリーは、

彼女はいつもの気まぐれで世界旅行にでも行ったんだ

と笑った。



捜査が進むにつれ、


空港を訪れる前、レストランへ立ち寄らせたダイアンは運転手を使いに出しており、運転手はリムジンを離れた際に銃声を聞いていること、


空港の監視カメラに映ったダイアンと見られる女性が替え玉だったという確証、


銃声を聞いたという路地で銃の薬莢を発見したこと、


リムジン社内で見つかった2種類の長い髪


これらを元に、コロンボ警部は


ロンドンへ向かったのはダイアンではない別の女、

ダイアンは射殺され、その死体はシャトーの敷地内に埋められている

と睨んだ。


そして

犯人はブラントリー、替え玉の共犯はブラントリーの愛人モデルである

と考えた。



しかし、そう突きつけられたブラントリーは不敵に笑った。



コロンボ警部は警官を率いてシャトー内の捜索を開始。


一方、ブラントリーは何故かマスコミやカメラを呼び寄せていた



数多くのカメラがシャトー内を中継する衆人環視の中、コロンボ警部と警官たちによる捜索は行われていくのだが・・・




<関心どころ>


・斬新にしてトリッキーな展開


まずはじめに、

新シリーズは旧シリーズに比べて酷評を受けることが多い。


それはこれまでのレビュー5作にもあるとおり、穴がありすぎたり、

または新しさを狙ったプロット作りや演出が、全て逆効果になってしまっているからだ。


そんな中、

この作品は非常に評価されており、ファンも多い。



今作では、殺害動機があるブラントリーが序盤でダイアンを殺害しているシーンがない。


これにより、

失踪したダイアンは一体どこに消えたのか?

ブラントリーは何を企んでいるのか?


これが伏せられたまま物語が展開していく。


従来の

序盤でターゲットを殺害し、

犯人は何とか策を練って証拠を隠滅し、コロンボ警部の追及をかわす。

という流れではない。


しかも物語は更に二転三転していく。


果たしてコロンボ警部はどのようにしてだまされるのか?



この斬新な展開と演出は、正直言って大成功を収めていると言っていいだろう。


また、最後の最後の詰め手エンディングカット


まさにお見事!である。




・インパクトのある名犯人


犯人ブラントリーを演じたイアン・ブキャナン


彼の風貌は中々なインパクトを残す。


若いモデルの娘たちと放蕩暮らしをする軽薄さを持つ反面、

コロンボ警部に対しては自信に満ちた不敵な笑みを何度も湛えるその表情。

その立ち振る舞い、言動は憎たらしさすら覚えてしまう。


しかもその裏には、底知れぬ狂気も潜んでいるわけで。


このイアン・ブキャナンという人物は元々はモデル出身。

アルマーニ、カルバン・クライン等、多数のCMに出演したトップモデルであったそうだ。


確かに中年男性にしては

(ブキャナンは当時32or33歳で中年とはいえないが若干老けて見えるので)

スタイルはいいし、オシャレな衣装も着こなしている。

(日本で言えば高田純次さんのような感じ???)


また、顔のパーツで言えば口元が印象的。

特に不敵な笑みからこぼれるやや前に出気味なは、まるで柳沢慎吾さんのようだ(筆者の独断)


この作品を日本で「古畑任三郎」でリメイクするとしたら、

犯人役は高田さんか柳沢さんだったのかな?と思う。


脱線してしまったが、それほどまでにこの犯人のインパクトは強い。

何せ、コロンボをだましてしまうんですから・・・


もうまあ、すべてにおいてイイ顔してはる!


そしてブラントリー役吹き替えは 中尾隆聖さん


若い世代やアニメファンには「ドラゴンボールZ」のフリーザ

お子様たちには「それいけ!アンパンマン」のばいきんまん役などで広く知られる名優である。


人間以外の役を多く担当した中尾さんの演じるブラントリーは、もおとにかく不敵で不気味。

コロンボファンの中でも特に人気の高い犯人なのです。


要注目。



<突っ込みどころ>


・ない!


あえて言うならば


結果的にブラントリーは終盤で些細なミスを犯すのだが、それがあまりにも迂闊で致命的すぎるな、


というぐらい。


特にケチの付け所はない。



<セミプロ役者の余談>


・刑事側に久々の復活出演俳優が


旧シリーズでコロンボ警部の上司役で何度か出演したジョン・フィネガン

同じく部下として何度か出演したブルース・カービイが新シリーズに初出演。


ただ、旧シリーズと同じ登場人物として出ているわけではないのだが、

それでも、旧シリーズからのファンには嬉しい再出演だ。



・旧シリーズテイスト


今作の面白さは、

どこか旧シリーズの名作にある名演出に近いものがある


ことが原因としてあるのかもしれない。


特に思い起こせるのが、旧シリーズ第作 「パイルD-3の壁」


建築家による犯行を描いたこの作品では、

ある資産家が失踪し、その行方をコロンボ警部が捜索する

というストーリー展開。


今作に非常に近いものである。

(ただし、この作品は犯人が被害者の背中に拳銃を突きつけるシーンが序盤にある)


こちらも人気の高い作品なので、レンタルなどで是非ご覧いただきたい。

ちなみにこの作品を監督したのは、主演であるピーター・フォークである。


注目されたし。



<総合評価>


文句なし。


10点満点!!!!!


これは是非、吹き替え版を見てもらいたい。