♂:♀=1:2
所要時間:約5分
【登場人物】
夫(♂):妻と二人暮らし。不倫をしていた
妻(♀):夫と二人暮らし。貞淑な妻
女(♀):夫の不倫相手。
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(寝室。女が寝ている傍らに立つ夫。
ドアを開け放った妻、立ち尽くす)
妻: い、いや……いやああぁぁああああああああああああああああぁああ!!
女: あーあ。見られちゃったわねえ。ね、あなた(わざとらしく)
妻: あ、ああ……あなた……あなた、ねえ、あなた……い、一体これは、どっ、どういうこと、なの……?
夫: 落ち着いてくれ
妻: 落ち着いてくれ、ですって? ……アハ、アハハハ、アハハハハハハ、アハハハハハハハハハハハ!
夫: お、おい
妻: 言われなくても落ち着いているわよ! こういう時って、案外、冷静になれるものなのね!? ああ、それとも私が、特別非情な女だったってことかしら!?
夫: しまった、逆効果だったか……
女: アハハ、取り乱していてもいいじゃない。事実は一目瞭然なの。発狂していたって変わらないわ
妻: そう、そうよ、そうだわ! こんな事態に陥ったって、言われなくても落ち着いていられるような冷酷人間だってこと、あなたはとっくに見抜いてたのね!?
だ、だから、愛想を尽かされ、こんな、こんなことに……! これまで、精一杯尽くしてきたつもりだった、必死に、良い妻であれるよう振る舞ってきたのに……その結果が、これだっていうの!?
女: 良い妻であれるよう振る舞ってきた、ねえ。この人、言ってたのよ? あの女はつまらないって。わかる? 退屈だったのよ、あなた
妻: あんまりよ、あんまりだわ……ねえあなた、あなた、私を愛していたんでしょう!? 私もあなたを愛していた、だから……だから、これまで、誠心誠意、尽くしてきたんじゃないの!!
それとも……それとも、最初から、私とのことはずっと遊びで……ああ、そうね、それがいいわ!
あなたがどんな人間かわかった今は、そうであって欲しいと願うばかり……あなたを愛した過去なんて、すべて消し去ってしまいたい……ッ!!
夫: だから、落ち着いて俺の話を聞いてくれ! 言ってることが滅茶苦茶だ!
妻: 滅茶苦茶なのはあなたの行動よ!!
女: もう、さっきからキンキンキンキン、金切声がうるっさいのよ! あなた、話をする必要なんてないわ。遊びだったと思わせておけば、楽でいいじゃないの?
夫: お願いだ、聞いてくれ。いいか。俺は、お前のことを愛している
女: …………はあ?
妻: 嘘……嘘よ! いやッ、貴方なんて、私以上に冷徹人間だわ! お願いだから、今ここで縁を切らせて!
女: そうよ! 縁を切ってしまえばいいじゃない! これで晴れて、あなたとあたしは結ばれる! あなたは刺激的な毎日を待ち望んでいたんでしょう!? このあたしが、送らせてあげるわ!
妻: もう、いや……いやっ……こんなことに、なるなんて……
夫: いいか、三度目だ。落ち着いてくれ。こうなったのは……お前を愛しているからこそ、なんだ
女: ……は。はあ? はああああ!? 何よ、それ! あたしとのことが遊びだった、とでも言うの!?
夫: 頼む、どうか協力してくれ!
妻: 意味が! 意味がわからない! どうして私を愛していたら、こんなことになるっていうのよ!!
女: そうよ、訂正なさい! あなたはあたしを愛していた、この女との結婚生活に嫌気がさした! だからこそ、この寝室で今日、この日に、はっきりさせようって話だったじゃない! この女にあたし達の愛を、見せつけてやろうって話だったでしょう!? それが何で、この女をまだ愛してるなんて馬鹿げたこと、このあたしが聞かされなきゃならないわけ!?
夫: 俺は、この女と、確かに不倫していた
女: 不倫して「いた」? アハ、そうね、もう過去形ね。だってこれからはあたしが妻!!
夫: だが……嫌になったんだ、この女が。君の元に戻りたくなった、この女を知るごとに君が愛おしくなった
女: っ!!
妻: やめて……お願い、もうやめて……貴方の話なんて、聞きたくない!
女: ええ、ええ、冗談はもうお終い! さあ、本当のことを言うのよ!!
夫: だが、この女は……聞き分けなかった。この命ある限り俺から離れないと。お前を殺してでも、俺の傍にいてやると
妻: やめて!!
夫: だから俺は、君への愛の証に……こいつを、この寝室で
女: うるさい! うるさいうるさいうるさいうるさい!! アハ、アハハ、もういいわ、あなたまで狂っちゃったのね! 仕方がないからあたしが話をするわ! 大丈夫よ、あなたは黙ってあたしの話を、
妻: 人殺しの話なんて、聞きたくない!!
女: …………え
夫: ああ。君を愛している。だから、殺した