リクエスト第6回目は、Kisaraさんからのリクエストひらめき電球


★第29話の座り込みのエピソードの中から、大泉会長に「別れれば援助をする」と言われ、

「別れます」「別れません」を言い合う琴子と直樹・・・その時の直樹@ジョセフの気持ちを、

作品に・・・というリクエストをいただきました★

 

このエピソードに関しては、以前に『生まれ変わっても・・・』 という作品で一度書いています。

それで、前回が大泉会長との面接直後という設定だったので、今回のリクエストでは、さらに

その次の日・・・大泉グループとの契約が済んだ直後の直樹の心境という設定でお話を

書いてみました。


ご期待にそえているかどうか・・・

Kisaraさんや読者のみなさまに気に入っていだけますように・・・


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 ~ずっと大切に~


たった今、大泉会長が寄こした弁護士を見送った・・・
そして、オレの右手には大泉グループとの契約書が握られている。

オレは、社長室の窓から下を見下ろして、行きかう車や人の群れを見るともなしに眺めていた。


安堵の息が漏れたのは、会社が救われたからだろうか・・・
緊張していた体から、力が抜けていくのを感じながら、オレはふと昨日の大泉会長との

面会へと思いを馳せていた。


「もし直樹君と別れるなら援助をするといったら?」という会長の言葉に、ほとんどためら

うことなく「別れます」と答えた琴子の横顔が忘れられない・・・
すぐに「別れません」と言ったオレの言葉に、さらにもう一度「別れます」と言った琴子・・・
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会長を真っ直ぐに見据える琴子の眼差しに、オレが一番恐れたのは、琴子の言葉を受

けて会長が援助を決めてしまうこと・・・

大泉グループの援助なくしては、パンダイの未来がないことは十分にわかっていた。
それでも、あの時オレのココロを占めていたのは、会社を守ることよりも、オレに全てを託

して信じてくれている家族のことよりも、オレのためにオレと別れると言い放っている琴子

を失いたくないという気持ち・・・


<たとえ倒産しても、オレが立て直してみせる・・>


咄嗟に口をついて出た言葉・・・

もちろん自信はあった・・・それでも、その場にはあまりにも相応しくない言葉だった。

ただ、オレはその時、大泉会長に答えを出させたくなかったんだ。

まるで琴子のお株を奪うような、衝動的で短絡的な言葉であっても、あの瞬間のオレには

そう言って虚勢を張ることしかできなかった。


―あいつのそばにいると、オレはどうしても冷静でいられなくなる・・・


それでも、結局はそれが良い結果を生んでしまった・・・
どこか釈然としない思いを抱えながらも、それで会社が救われたという事実に変わりはない。


ずっと琴子に振り回されながら、いつの間にか琴子に救われていたのだと思うと苦笑いが

込み上げてくる。
そして、オレは今オレを取り巻く全てのことの中で、琴子のことを一番に思っているのだとも・・・


―まったく・・・オレとしたことが・・・




どれ位そうして放心していたのだろうか。
いつの間にか、窓の外は夕暮れ時を向かえ、沈んでいく夕陽が目の前のビルを赤く染め

ていた。


「入江君?」
不意に琴子の声が聞こえ、振り向くとオフィスのドアの前に琴子が立っていた。


オレは、黙って微笑みを返した。


「家に電話したら、おばさんが入江君はまだ会社にいるっていうから、学校から直接来ちゃ

った・・・」
琴子は、オレの隣に来ると同じように窓の外を眺めながら言った。


オレは何も言わずに持っていた契約書を琴子の前に差し出した。


「何?これ」
「大泉グループとの契約書だよ・・・これで倒産は免れた」
「そう・・・よかったね」

短い言葉のやりとりだけで、何も語る必要などないように思えた。
ただ、今こうして二人で並んで立っていられることに、何よりも幸せを感じていられたから・・・



「大泉会長、本当は怒ってるだろうね。沙穂子さんから入江君を奪ったのが、こんな私で・・・」
沈んでいく夕陽を眺めながら琴子がポツリと言った。
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―バカ、お前を選んだのはオレなんだよ!



「そうだな・・・沙穂子さんは完璧な女性だったからな、頭はいいし、スタイルは抜群だし、
料理も得意だしな・・・どこかの誰かさんとは大違いだ!」
ココロとは裏腹・・・オレは、神妙な顔つきの琴子の顔を覗き込みながら、反応を確かめる

ように答えた。


「もう!入江君ったら!!私だって沙穂子さんを傷つけちゃって悪いことしたなって思って

ちょっと落ち込んでるのに、そんな言い方しなくたっていいのに!」


「じゃあ、どう言えばいいんだよ・・・オレが言ったことは事実だろう?」
オレは、怒る琴子がおかしくてさらに追い討ちをかけるように言った。


「いつも、いっつも、そうやってからかうんだから!!」
琴子が右手で拳を作ってオレを叩こうとする・・・オレはその手首を掴む。
オレの手を振り解こうとする琴子が顔を上げた瞬間を狙って、オレはその唇に素早くキスをした・・・

そして、不意をつかれて力を抜いた琴子の体をそっと抱き寄せると、その耳元で囁いた。
「ありがとう・・・お前のお陰だ・・・」


オレの腕の中で、琴子が顔を上げる・・・もう一度唇を重ねると、オレたちは随分と長い時間
お互いの背中を抱きしめていた・・・



何が正しくて、何が間違っているのかなんて本当は誰にもわからない。
ただ、自分が信じた道を真っ直ぐに進んで行ければそれでいいような気がする・・・
そして、今こうしてお互いのぬくもりを確かめることが出来るということ・・・これが全ての答え

だと、そう思える今があることに感謝していた。



結局オレは、ギリギリのところで琴子を選んだ。

たとえどれ程無責任だといわれようとも、何を捨てても琴子を選ぶんだ。



―これが”愛してる”ってことなのか・・・



そうさ・・・一度は失くしかけたものだからこそ、大切に・・・

やっと気付くことが出来た想いだからこそ、ずっとずっと大切に・・・


                                          END



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 ~あとがき~


29話、30話を見ていると、「キャラ違うんじゃない?」と思える直樹の行動がいくつか出てき

ますね・・・それはどれも原作にないオリジナルなシーンばかり。

特に、今回取り上げた「別れます」「別れません」のやりとりは、それが顕著だと思います。


この時の直樹の心理を、私は今回のお話で書いたように解釈したんですが、いかがでしょうか?

それまで、自分を犠牲にしてでも援助をもらおうとしてたほどの人が、援助してくれる本人の

前で、一番言ってはいけないことを言ってしまうんですから、その前数日間の直樹の心理の

急激な変化には目を見張るものがありますね。


自分にとって何が大事なのかのプライオリティーがはっきりしたからこそ、ああいったやりとり

になったのでしょうが、正直言って、大泉会長がさらに怒り出しても不思議はない場面でした。

これは、大泉会長の人間の大きさに救われたといっても過言ではないですね・・・


まあ、二人のラブラブ度が増すんでしたら、何でもいいんですが・・・



さて、いかがでしたか?

どうぞ次回もお楽しみに♪



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