今回は寒冷療法の1つであるコールドスプレーについて紹介をしたいと思います。




 スポーツ活動時に捻挫・打撲・肉離れなどをした場合、コールドスプレーを使用して応急処置を行っている場面をよく見かけます。患部にコールドスプレーを振りかけると痛みが楽になるのを感じるのではないでしょうか?


コールドスプレーの主な効果としては、皮膚表面を急速に冷却し筋・筋膜・皮膚に存在する痛みを感じる神経を麻痺させ、怪我による痛みを軽減させる補助的な効果が認められています。

つまりは一時的な鎮痛作用があり、重症ではない怪我の場合は痛みを軽減させてプレーの継続が可能となります。

しかし、コールドスプレーの欠点としては長時間同一部位をマイナス数度以下で急速に冷却してしまうことで凍傷の恐れもありますし、皮膚表面の温度を急速に低下させることはできますが、深部の損傷している筋・腱などの部位までは冷却することはできないことです。そのため鎮痛作用は一時的であり、損傷を受けた組織等に対しては処置をしていない状態と同様です。

つまりコールドスプレーでは深部まで冷却できずに捻挫・打撲・肉離れの際に起こる内出血や浮腫を抑制する効果は期待できません。さらにコールドスプレーで組織が急激に冷却されることで体温を上げようとする身体の防御機能が働いてしまい、逆に患部の温度が上昇し患部の代謝が促進されて二次的な細胞壊死が起こる危険が生じます。これでは本末転倒です。また、一時的に痛みが緩和されるために無理なプレーを行い重症化してしまう危険性もあります。

寒冷療法の1つである氷を使用しても深部を冷却するには最低でも10分以上の時間を要します。また深部の温度を低下させるためには一見コールドスプレーの様にマイナス何℃の冷却が効果的に思えますが、実は1番組織の温度を低下させるのは0℃付近の氷なのです。


 氷は持ち運びや温度管理用にクーラーボックスなどを用意しなくてはならないのに対し、コールドスプレーは持ち運びが便利であり、いつでもどこでも使用することができる利点があります。そのために簡便に使用できるコールドスプレーが怪我の応急処置として多く使用される結果となっているのだと思われます。

捻挫・打撲・肉離れは軽視されがちですが、初期の段階での処置を誤れば重症化する危険性もあるため、怪我の大小に関わらず、痛み・腫れ・発熱・発赤などの症状が怪我の部位に生じている場合はRICE処置(‟R”rest “I”=ice “C”=compression “E”=elevation)の励行が必要です。

最後までお読み頂きありがとうございました。

 普段何となく使用しているコールドスプレー。一時的な痛みの軽減には有効なこと、逆に捻挫・打撲・肉離れの応急処置としては不十分だということを理解し、RICE処置を怪我のあと3日間は継続し、状態によってはその後は温熱療法へ移行していくことをお勧めします。どんな道具にも言える事ですが道具の利点・欠点を理解し、使用する本人自身が効果のある方法でコールドスプレーを使用して下さい!