湿布は,捻挫や打撲などのスポーツにおける外傷から肩こり及び腰痛などのいわゆる慢性的な疾患にまで,非常に幅広くかつ手軽に活用できる貼り薬として周知されています。
しかし,現代では活用方法によっては『あまり意味がない』や『逆効果である』などの意見も散見されます。そのような中,今回のコラムではスポーツ外傷及び障害の観点から,湿布の活用方法や注意点などについて詳述していきます。
まずは湿布に関する基礎知識から始めましょう。
≪入手方法から大別した湿布の種類≫
『医療用』・・・病院などで処方される湿布
『市販用』・・・ドラッグストアなどで購入する湿布
世間一般では,『医療用』の方が効果は高い?と考えられていますが,近年では,塗布・含有量の高い市販品も有り,物によっては両者同等の効果が得られるとの見解もあります。
≪素材から大別した湿布の種類≫
『パップ剤』・・・白くて“グニュグニュ”した厚みのある湿布
『プラスター剤』・・・薄くて粘着性の高い肌色系の湿布(白色も有り)
素材別に比較すると,効果における差異はあまり無い一方で,大きな相違点はプラスター剤ではスーッとした冷感は得られません。尚,近年急速に普及しているのはプラスター剤であり,『医療用』ではモーラステープやロキソニンテープなどが挙げられます。
≪効能から大別した湿布の種類≫
『温湿布』・・・カプサイシンなどの成分を含む
『冷湿布』・・・メントールなどの成分や水分を含む
湿布に関する議論の争点かつ勘違いを生みやすい部分は,この“温”か“冷”か?だと思います。実際に医療機関でもスポーツ現場でも非常に多く聞かれる質問の一つです。
まず,事実として“温”であったとしても“冷”であったとしても実際の皮膚温への作用は低く,さらには“温”でも約1℃の皮膚温低下が貼付直後に認められます。その理由については,ご存知の方も多いと思いますが上述した各成分の影響であり,カプサイシンなどによる『温“感”効果』とメントールなどによる『冷“感”効果』が各々の効能を引き出します。
それでは,スポーツ外傷及び障害に対しては,どのように湿布を有効活用するか詳述していきます。まず,捻挫や打撲の受傷直後に『腫れ(腫脹)・熱っぽさ(熱感)・赤み(発赤)・痛み(疼痛)』などの炎症所見が認められる場合,『冷湿布』での対処は不適切だと考えます。それは,上述したように冷却効果が低いという事実に加え,市販用ではサリチル酸メチルやカンフルなどの刺激物が含まれている事が多く,結果として患部の血行循環を促進させ,炎症症状の増悪を惹起する可能性があるからです。従って,上記の症状が認められる急性期には湿布での対処ではなく,RICE処置の励行を推奨します。一方,『医療用』には消炎鎮痛効果を持つ湿布があるため,疼痛軽減を目的にRICE処置が実施できない学校時や就寝時に有効活用しましょう。そして,受傷後3日程経過した後からは,患部の血行促進効果が組織の修復を早めると示されているので,RICE処置から温熱または温冷療法へと移行を図ります。この際に『温湿布』を活用する事は間違いではありませんが,適切であるとも言えません。それは,やはり温熱効果が低いという事実がある他,湿布の長期活用による皮膚のトラブル(かぶれ・水ぶくれ)を惹起する可能性が高いからです。従って,入浴や交代浴による温熱療法で高い効果を引き出しつつ,副作用やその他のトラブルを回避しながらスポーツ障害の予防及び外傷の重症化防止に努めましょう。
以上,簡単ではありますが“スポーツ外傷及び障害に対する湿布”についてまとめてみました。尚,今回は“スポーツ外傷及び障害に対する湿布の活用”に焦点を絞り詳述してきたため,全ての副作用を網羅していないことはご理解下さい。
結論として,湿布は様々な効果が得られる一方で,実際のIcingや入浴による“温冷”の効果程は得られないため,『外傷の時期や目的に応じて湿布を活用する』という事が重要です。皆様の今後の外傷対応時の一助となれば幸いです。
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