とある場所で、発達障害に特化した就労支援業者「チリペッパー(仮)」の発行するチラシを見た。
その内容は…「心理検査特急便」
という名のWAISだのWISCだのを「なるはやで受けられますよ」的なものだ…チラシのスクショ持ってるけど、これは筆者判断で安易に広めるべきものではないと判断したためこのブログには画像やリンクは貼りません。
就労支援業者のやばいプログラムについては過去に
を書いた事があるけど、今回の「心理検査特急便」はそれを軽く上回るヤバさだ…何がヤバいかって?箇条書きで説明します。
- 費用が高すぎる
- WAISやWISC「だけ」をやってもそもそも意味がない
- 検査結果をメールで送信する
- アフターケアという概念がすっぽ抜けてる
- そもそも倫理観や遵法精神がぶっ壊れている
まず1つ目…「費用が高すぎる」
これ、検査費用として40000円かかる(日程変更をするとプラス数千円取られる)。
実はこれ…病院やクリニック等の医療機関で「医者の指示」があれば、血液検査とかレントゲン同様に保険診療で受けられます。
金額は3割負担で1300円くらい、自立支援申請済みなら1割負担、一定条件を満たした自立支援、生活保護や乳幼児医療の対象年齢内なら「自己負担なし」になります。
仮に自費診療扱いでやってる病院でも1万円台前半が相場らしいですよ…ちなみに私は保険診療でしたので1300円くらいでした。
会計の時思いのほか安かったので驚きました。
はっきり言ってこの価格は「ボッタクリ」だそうですよ。
2つ目…「WAISやWISCだけ」をやってもそもそも意味がない
このブログの過去記事にも書いてますが、発達障害の診断というものは多角的な視点で診ることが重要で検査系だけでも最低3つは受けないとダメとされていますし、診断までには何度も診察や面談を重ねます(ベテラン勢になると初診である程度見立てはつくそうですが、ちゃんとした人ほど診断には時間をかけます)。
私も「まだ、その時じゃない」と言われ…すぐには検査受けられませんでした。
この検査結果自体は「ある程度の指標にはなるが、この結果だけを鵜呑みにするのは非常にリスキー」との見解いただきました。
3つ目…「検査結果はメールでお送りします」
送るな、この一言に付きます。
というのはちょっと身も蓋もないので、補足します。
この手の検査の結果というのは、遺伝性がんの遺伝子検査結果と並ぶ「機密レベルの個人情報」です。
取り扱いには厳重な注意や管理が必要です。
病院で受けても「結果の詳細」や「結果が書かれた原本」は基本的に本人の手には渡りません…結果は「要約された文章」で渡されるのが一般的とされています…私は頼み込んで数値入りの結果を要約し直してもらいましたが。
それをメールで送るとか…仮に暗号化されていたとしても、誤送信やサイバー攻撃を受けて流出したら誰が責任を取るのでしょう?
そして、この検査の結果を本人に伝える時は基本「具体的な数値は未記載」が原則ですがこの会社では
「全IQ・言語理解・知覚推理・ワーキングメモリ・処理速度」
を全数値を見せてくれるらしいよ…正直、プロですら解釈次第で意味ガラッと変わってしまう諸刃の剣のような重要項目を安易に知らせるのってダメだろ?
4つ目…「アフターケアという概念がすっぽ抜けてる」
この特急便を利用すると「本来なら数回の面談」が必要なところ「1回の来所」で済むらしいよ、忙しい人にもピッタリだね…って、んなわけあるかいっ!!
この検査の結果は「本人や保護者同席の上で、医者なり心理職の人から直接結果と補足説明を聞く」のが鉄板です。
その場で、今後の人生の指標の立て方や生活していく上でどういうことに気をつけたらいいのかを一緒に考えていくもの…なんですが、ここはそれを「1度だけのオンライン面談」で済ませてしまうそうで。
そして、本人や保護者の希望があれば検査結果を踏まえた「お手紙」を学校や支援機関に向けて書いてくれるそうですよ(これもダメ)。
自身の知能のレベルをはっきりと数値化するのって想像以上にショックを受けてしまうことが多いそうです…だから、結果を伝えるときも「具体的な数値は極力伝えない」のがセオリーであり、どのような結果が出てもその後のフォローが出来る体制を敷いたうえで検査をするんです。
それを「1度だけの来所」や「オンライン面談」で事足りるとは到底思えません。
5つ目…そもそも倫理観や遵法精神がぶっ壊れている
実はこの検査は、内容・手順・結果レポート全てに「著作権」が存在しています。
会社名忘れたけど「日本なんちゃら~」って会社のれっきとした「著作物」なんです…だから、検査を受ける側も内容を口外してはいけないですし、検査する側も被験者側に内容を見られないように厳重に管理しています。
つまり「著作物」✕「個人情報」なんですよね。
結構ネットの書き込みに検査結果書いたりしてる人多いけど、それすぐ消した方がいいよ。
この「チリペッパー(仮)」公式YouTubeチャンネルがあるようで…社長が顔出ししてるんだけど、このチャンネル内でなんと
「WAIS受けてみた」
的な内容の動画をアップロードしていた…チリペッパー(仮)、アウトー!!(デデーン♪)
再生数稼ぎに加担したくないのですが…チラッと見てみたけど、いくらぼかしをかけているとは言え検査風景そのものに撮影許可を出すのはダメでしょ?どうして検査者側もOK出したんだろ?
真っ当な検査者だったら「検査風景の撮影はNGで」って言うはず…臨床心理士倫理規定というものが存在するはずなんだけど、もしかして「倫理規定なんてクソ喰らえ」的な思想の方なのでしょうか?
私はこれまで公私ともに心理職の方との交流がありますが…どちらの関係でもとても職業倫理意識の高い方ばかりだったので、正直驚きを隠せません。
もしかして、この会社と関わっている有資格者の人って…臨床心理士とか公認心理師以外の資格をお持ちの方なんですかね?
それとも上記2つのどちらかを持ちつつ、専門性よりも「ビジネス優先」な方なのでしょうか?
最後にお願いがあります…この記事を読んだ精神科のお医者さんや医療機関や支援機関で働いてる心理職の方々、この「心理検査特急便」に対する見解をリブログしていただけるとうれしいです。
個人的にはこれ、かなりヤバいといいますか…「完全にアウト」な案件だと思っています。
こういうものに対して「完全にアウト」って感覚を持てる時点で、私には「障害者ビジネス」はやっぱり出来ないんだと改めて実感しました。