ウォーホルは、日常的なものばかりをモチーフとしていたわけではありませんでした。
「死と惨事」シリーズでは実際に起こった事故を元に作品を制作しました。
彼は新聞記事が報じたジェット機の事故や、自動車事故、自殺、死刑などに衝撃を受け、「死」というものに対する恐怖を強く抱きました。
この「死」をテーマとした点はダミアン・ハーストとも共通していると考えられます。
《土曜日の惨事》1964年
《惨事 電気椅子》1963年
これらの作品では、死を連想させる交通事故や電気椅子のイメージが作品となっています。
彼はこれらを反復させたり、色に変化をもたらしたりすることで、「死」の惨さを薄め、恐怖を和らげようとしたのではないかと思います。
ウォーホルは「もしアンディー・ウォーホルのすべてを知りたいのならば、私の絵と映画と私の表面だけを見てくれれば、そこに私はいます。裏側には何もありません。」という言葉を残していて、彼の作品は見る人の考え方を映し出す鏡となり、「死と惨事」シリーズのような重いテーマのものについて自身の考えを見つめ直すきっかけとなると感じました。