CANAAN【1】 [DVD]
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だって愛なんだよ~

 結構見てたのに、感想書き忘れてました。最初はちょっと説明なさすぎて展開読めなくて、どう判断したらいいか迷う場面が多かったです。意外に古い手法を使うな、というか…… 属性キャラをあまり出さない(意外ですが、これだけ女性キャラが多いのに、属性キャラはほとんどいません)代わりの説明を一切入れていないんですね。

あくまで登場人物の目線で起きた事実を追うことで、物語が伝わっていく形です。それはいいんですが、話が少し複雑なのと、演出としてハイテンションな部分があるせいで、視点を定めにくかったです。今は慣れました。ただ、こういうハイテンションなのは、話がおもしろくても「オタのり」になるので、一般の人は見ないかな…とも。

 個人的にOPを見て毎回思うのは「ああ、アルファルドが男だったら、私は心底はまるのに……」ということです。男前すぎる。最近は純愛高齢男子ばっかりしか興味がないんですが(コーラさんとか、ベジータとか心とか鋼の大佐とか)、もともとは少年の方がキャラ萌えするので……(性的な意味ではない)。

 それ以外はキレてるキャラもそれぞれおもしろくて、なかなか見応えはあります。ただ、あの痣を中心にした話だけだとすると、陰謀もので終わってしまうので、そこに個人のドラマをどう絡めていくか……ですね。


声優は、いいよなあ~

 特に浜田。何はなくとも浜田。やっぱりパトリック浜田でしょ。

 私はコーラさん好きすぎて周辺をまるごと愛し始めてるので、あんまり説得力ないかもしれませんが、一応真面目にいうと、みのさんの役は三枚目だけれども各キャラクターを結びつける接点(つまり、物語の視点)になる部分があるので、かなり多岐にわたる演技力が求められていると思います。ぶっちゃけ、みのさんを「うぜえな」とか「イラネ」と思われてしまうと、作品のかなりの部分が失敗してしまうのです。この手の役割の人は、自分自身にはなんの能力もなかったりするので…… そこを如何に「愛すべき人物」として演出するかという点において、このキャスティングは成功だと思います。

 この辺は、サンタナ役のカーター平田の声質との対比もうまくて、一緒に行動していると、平田声の落ち着いた低い感じと、浜田の少しうわずった(演技です)高めの甘い感じの残る大人声とで、いい感じにバランスを取っているのです。2人の会話を聞いているだけで、キャラクターの精神的な背景まで察することができるのですね。

 さらにキーパーソンとして大塚民夫。この人はずっと出ていると、他を圧倒してしまうタイプの声ですが、使い所が非常にいい。全体をきゅっとしめる役割をしてると思います。

 で、やっぱ最高なのは大川透でしょ~!! もう最高だった!w もともとが渋い声なのに、あの演技!惚れる! M男のカミングスがアルファルドに抵抗しようとするくだりなんか、愛を感じましたね!

 この系統の声優好きにはたまらないですよ、このアニメ。


田中理恵最高! 惚れるvvv

 あ、いかん。女性声優にふれなかったw

 女性陣もかなりいいです。メインキャラはほぼ実力波で、一番演技が危うい能登さんをハッコーというとこがまたうまい。声に特徴があるので、あの使い方は正解だと思いました。

 個人的には、まず夏目役の皆川純子さんが非常にいい。とにかくいい。この手の声の人としてはトップクラスにセクシー。また少年の役もやりましたが、そちらもすごくよかったです。この人は、もっと他にもいろいろな演技を見てみたい声優さんですよね。

 で、女性声優一番はやっぱり田中理恵さんでしょ~! 最近田中さんの演じるキャラの幅広さと、確実に演技していく手堅さにもう惚れそうです。最高だ! ここんとこパトリック浜田を追いかけて、ふだんみないアニメまで見ているのですが、そこでよく田中さんにあたります。まるで、女版浜田のような使い勝手のよさがあるようです。この人はもっと当たり役に恵まれてほしいなあ……。

 といろいろ書いてますが、私は声オタではありますが(諸事情によりアニメ関係なく、声の良さにはすごくうるさいんです、昔から)、声優オタではありませぬ。


高齢男子の純愛が非常に美味しいです

 これ男性向けフォーマットに乗せた少女漫画だこの前、某G子さんと話したときからちょっと思っていたのですが、これ見せ方は男性向けですけど、中身はめちゃめちゃ古き良き少女漫画です。これをリリカルにやると、「少年は荒野をめざす」になったりする感じ。多分、男性には、マリアとカナンの関係、カナンとアルファルドの関係はわからないと思います。

 むしろ、ハッコーに憧れてたみのさんの方が脇にいってるあたり、完全そうですね。あの辺の大人の男女の機微は、ほんとにうまいアニメで、みのさんはハッコーの謎めいたところに惹かれてたんだけど、もうハッコーのなかには、サンタナがいるのも悟っていて、それがただならぬ背景があるのもわかっていた。だから、引いた位置で不器用なふたりを手助けしていたんでしょう。サンタナの不器用さに友情みたいなものも感じていたからかも。

 その辺をほんとにうまく間で表現していて、これほんとたまらんよ。男の純情といえば、カミングス。まさかあんな展開になるとは、どこまでM男なんだ…… 

 しかし最高だ。このアニメ、高齢男子の純愛好きな私には、もういろいろ身もだえる話が多いです。まあ、大概悲恋なんですけど、この手の厳しい恋をごり押しでハッピーエンドにするには、相当なバカでないとダメ(@コーラサワー)なわけで、そこを突き進むほどにはもう若くはないんですよね。臆病っていうのもあるし、諦観もあるし、賢くなっちゃって「なるようにしかならない」こともわかってるから。その辺がもどかしくもあり、美味しくもあり。

 しかし、サンタナの受け臭さは最高だな! 最近、わんこ系無自覚受け臭い男キャラが、ほんとに美味しいぞw

 

カナンとマリア、カナンとアルファルドの関係

 図書館で借りた空の写真集、カードに強くてきれいなあなたの名前がある~ と歌ったのはドリカムですが、まさに精神は「眼鏡越しの空」です。これを学園ものにしなかったのはわかる気がします。レズじゃないんです。ごっこでもないんです。女性には、一時期、何の色もない、何ものでもない、それでいてきれいで強くて凛としたものに憧れるころがあります。

 それは友情のなかに見るのかもしれないし、理想のなかに見るのかもしれないけれど、女性という怒濤の“性”に翻弄される前に、胸の奥から生まれてくるような、そういう憧れの感覚です。

 彼女たちの根底にあるのは、別のものに憧れる、進化しようと思う、そういう少女から成熟時期にある女性特有の感覚で、それが原動力だと思います。

 カナンは、それをマリアに見たし、マリアは、それをカナンに見て、アルファルドは、それをシャムに見ていたんですね。アルファルドは、シャムによって自分自身が最後にはそれになれると思っていたのだけれども、シャムはそれを否定し、カナンという理想形を前にして、試みることなく諦めてしまった。だから、アルファルドはカナンに執着するわけです。
 一方、カナンとマリアの方は、生きているので、次第に憧れるだけではだめだということに気付いていきます。子どものように、ただ欲しいから傍にいる、のでは、だめだということを知って、最終回の別れになるわけです。憧れから、生きた人間を相手に“想う”ということに変わり、この辺で、みのさんがやったように「引く」ことでも、それを大事にしていけるということに落ち着く。

 この辺は少女期の無邪気な憧れを、劣化させることなく、どう抱き続けるかという命題への答えな気がします。


アルファルドの取り戻したかったもの

 彼女が取り戻したかったのは、シャムとの時間でしょう。彼女は、カナンも持っていた想いを一番取り返しの付かない形で失ってしまったので、ずっとこだわり続けることになるんですね。

 この辺、なぜカナンが”カナン”で、アルファルドがカナンになれず”アルファルド”なのか、というタイトルへの答えにもなってますね。
 それまでアルファルドはまさに「強くてきれい」な女だったのに、最終回で、すごく寂しくて、孤独で、子どものように幼い心を持っていることがぐっと感じられるようになります。それはちょうどマリアに出会う前のカナンがそうだったように、です。

 このアニメ、ほんとにすごいなあと思うのは、多分シーンや台詞だけ切り取ったのでは、アルファルドの孤独は絶対わからないと思うんですよ。それを、放送を積み重ねることと、演技、シーンという間で視聴者のなかに積み上げていくんです。だから、アルファルドがかわいそうだって思わせるような恣意的なものは全然ないんです。

 なのに、最終回で、彼女の名前のもつ意味、彼女の抱える孤独っていうのが、すごいぐぐっと迫ってきます。まったく同情できるようなキャラではないのに、です。

 いや、まじこれ男キャラだったら、超はまったわw 男キャラだとここまで延々書いてることが台無しですがw、でも、女キャラでこれだえ萌え震えきましたからね。

 ラスト、自由になったふたりの対峙は、とてもよかったです。全然救いはないんだがw


女性バイプレイヤーがよい

 で、可愛いのがユンユンですね。この手の女キャラはすっごいうざいはずなのに、まったくそれを感じさせません。というのは、彼女はうざいだけのキャラじゃないからなんですよ。ユンユンは前向きで、明るくて、お節介で、騒がしい女なんですけど、甘えは一切ないんです。ものすごく諦めてるんですよ、自分のことには。

 それは彼女がボナーとしてのこれまでがあって、すごく苦しんで、自分自身をきちんととらえた結果でてきた、「明るさ」だからです。自分には未来がない、だから、今、その瞬間をせい一杯生きる、という、そういう選択をしているんですよね。きちんと、「明るさの背後」にある彼女の人生がわかるようになってる。これがほんとにけなげで可愛らしい。ほんとに、こういう表現うまいです。

 リャン・チー様wのよさは、筆舌に尽くしがたいんですがw、キワモノキャラですが、これもすごいけなげ。で、ラストで、ふっとアルファルドがリャン・チーのことを思い出したりして、「ああ! よかったね、リャン・チー様! アルファルドが覚えててくれたよ!」って言いたくなってしまったw

 そういうキャラの一方で、夏目のようなクールなキャラもいて、ほんとにバランスがいいです。


しかし作品としては今一歩

 ただし、難点もなくはないです…… というのはやっぱり、「ここまで大きな舞台で、女の友情かよ」って言われたらそれまでなんですねw やはり男性が大好きな「使命」とか「世界を揺るがす」的はハッタリもドラマを盛り上げるには必要なわけで、そういうオスっぽい仕掛けがなかったので、どうもその辺が物足りないです。もうひとつ何かあれば化けたと思うんですけど……。

 もっとも、私はこの手の今一歩花咲きらなかった難解なものが好きなので(笑)、私的にはかなり好みですがw 好きな人はずーっと好きでいるタイプのアニメですね。

 あと、ラストシーンのみのさんのファッションはどうよ………。


 この人物造型が、OOにあったらなあ…… とか思いました。あちらは設定やら舞台やら、そういった条件はそろっていたのですが、なにしろ人間ドラマの伝え方が下手で…… コーラさん以外(こいつは30分で伝わりすぎw)。
 と思ったら『ストレンヂア』の監督か…… 納得です。

 とにかく、監督の手腕か、脚本の手腕かわかりませんが、次回作も楽しみにしたいと思います!