桜公園はどうにかまだ存続していたので
おかげですんなりと大桜の前まで来ることができた。
しかしその間見た街の喧騒はなく、
人も見かけないまさにゴーストタウン状態だった。
いくら島国で人口が少ないからって
この時間に人を見かけないなんてことはなかったのに。

でもそれも、今日で終わらせる。

ことり。
今度こそ俺は、君を取り戻す。
そして消えかかっている世界も、元に戻すんだ。

ギターケースから相棒を取り出し、
ストラップを肩からかける。
ミニアンプを魔法陣の真ん中あたりに置き
村雨とアンプをシールドケーブルで結んで
アンプとギターの音量を最大にしてから電源投入。

よし、準備は整った。
一度深呼吸して左手をそっとフレットに添え、
軽く1弦を弾くとアンプから倍化された音が流れていく。

さて、行こうか。
村雨。
佐野さんが俺のために作ってくれた最高の相棒。
頼む、俺に力を貸してくれ。

大きく息を吸って大桜に向って、
「ことりー!」
「俺はギタリストだ。 
 だから歌うのはこれが最初で最後だ」
俺は音痴だし弾き語りなんてあまりガラじゃない。
だけど今日だけは、今だけはヘタでもなんでも歌うよ。
君に届けたい気持ちがあるから……。

ポケットからピックを取り出す。
適当に入れてきたのがまさか道化師のロゴ入りとは。
なんだか運命を感じて思わず顔がニヤつく。

1,2,3,4,1,2,3,4!
心の中でカウントをとりそして、
弦をかき鳴らす。

「出合ったときからきっとすべての世界変わり始めていたよ
 今ならこの気持ちを 正直に言える~」
去年のこんな小春日和の日の朝に、
この公園の桜並木を通った時に聞こえてきた歌声。
それに導かれてこの場所に来て君に出会った。
あの時君は恋に破れたことに泣いていて、
俺は事情なんて全然分らなかったからただただ泣きやんで欲しくって
でもどうしたらいいか全然分らなくって、
ハンカチを手渡すだけが精いっぱいだったな。

「道に咲いた花にさりげなく、笑いかける君が大好きで
 どんな宝石よりも輝く 瞬間を胸に刻もう」
それから道化師のライブ会場で再会して知り合いになった。
数日後俺は学校の階段から滑り落ちる君を助ける反動で
利き手を折ってしまって、
それでは生活出来ないからと
まりあママに招き入れられて
一人暮らししていたアパートを離れて
君の家でやっかいになって、
家族みたいに接してくれて
でも初めての経験で内心戸惑うばかりだった。

血が繋がっている人とは生活していたけれど、
あれは家族なんてものじゃなかった。
俺はあの人のただの”道具の一つ”にしかすぎなかったのだから。

「心から心から思う君が大切なものは何ですか?
 その笑顔 その涙
 ずっと守っていくと決めた 恋におちて I love you~」

道化師の曲の盗作事件で俺は退学処分になりかけて、
白河家の迷惑になりたくないからと出て行こうとした時、
君は必死になって止めてくれた。
その時”自分が白河家の本当の子供じゃない”
って聞いた時は何かの冗談かと思った。
けれどきっと俺の事を本気で家族として迎えてくれた
君の気持はものすごく嬉しかった。

たとえ血なんか繋がってなくても家族にはなれる。
君はそれを言いたかったんだよな。

「君が子供の頃に見てた夢と願いごとを聞かせて
 たとえば今は違う場所に立ってても」
母さんが見つかって不眠症になった時も
美春が妹だって判って戸惑った時も
乱れた心を落ち着かせてくれたのはいつも君だった。

自分の精神的モロさはいつも最悩まされるところだけれど、
君が嫌な顔一つせず処方にあたってくれるのは
とても力強く頼るになることか。

あ……。

村雨と足もとの魔方陣が青白く光り輝き始め
激しいスパークと共に
ゲートというやつが最大限に広がっていた。
自分の体も発光し始めてる。

「思い通りにいかない日には懐かしい景色見に行こうよ
 いくつもの思い出がやさしく 君を包んでゆくから」
いつから、好きになったんだろう?
自覚したのはおばあさまの家に強制的に連れ戻された時だ。
今みたいに離れ離れになって、
否応なしに自分にとって君という女の子の存在が
どれだけ大きかったか、ということを否応なしに思い知らされた。
たった一つの笑顔だけで、どれだけ救われたか。
優しくしてもらえてどれだけ嬉しかったか。
どんな時もそばに居てくれてどれだけありがたかったか。

俺は鈍感な方だからもしかしたらそれよりもずっと
前から好きになっていたのかもしれない。

「心から心から思う君が大切なものは何ですか?
 この街も友達もみんないつでも君の味方でいるよ always love」
それからの日々、ずっと頭の中は君のことでいっぱいだった。
どうやったら好きになってもらえるのか?そればかり考えてた。
だからあの時、君が風邪をこじらせて寝込んでしまった時、
まさか……キスする展開になるなんて思ってもいなかったな。
びっくりして心臓が飛び出るんじゃないか?ってぐらい跳ね上がって
俺にとっては道化師の音楽を初めて聞いた時以来の衝撃だったっけ。

意を決して学園祭の時、
告白してそれを受け入れてくれて
いやもう校内を全力疾走したいぐらい嬉しかった。
毎日毎日幸せすぎて、
俺そのうち死ぬんじゃないか?ってぐらいに思えた。

でも道化師のメジャーデビューが決まった時、
自分が君と離れたくないという理由で断って、
そのことで君と意見が食い違って喧嘩して悲しかったけど、
それは君が俺の将来を思いやっての考えだったんだよな。

いつだって君は俺の事を考えていてくれて、
だから「ありがとう」って言いたい。

「心から心から思う君が大切なものは何ですか?
 その笑顔 その涙
 ずっと守っていくと決めた 恋におちて」
正直、君がなんで「消えてしまいたい」だなんて願ったのか
いろいろ考えてみたけど全然分らなかった。
不安に苛まれていたことに気がついてやれなくてごめん。
それで君を守りたいだなんて、ヘソでお茶沸かすぐらいおかしいよな。

けれど、いつも、そう思ってるんだ。
願ってるんだ。
君がこころ穏やかに過ごせるようにと。
そのために俺が守らなくっちゃって、
強くなくちゃいけないんだって。

「心から心から思う君が大切なものは何ですか?
 この街も友達もみんないつでも君の味方でいるよ」
俺だけじゃだめならみっくんもともちゃんもまりあママも暦姉さんも
師匠も修ちゃんも美咲姉さんも美晴も月城さんも母さんだっている。
みんなみんな、君の事大好きで大切だって思ってくれてる人がいる。
だから君は一人じゃない。

「心から心から思う君が大切なものは何ですか?
 その笑顔 その涙
 ずっと守っていくと決めた 恋におちて I love you」

ことり。

好きだ。

だから……。

ゆっくりとギターの演奏を止めると目の前に広がっていた
漆黒の渦がパン!と花火のようにはじけ飛んだ。
青白い光は収束して消えていく。

静寂だけがあたりを包んだ。
周りにある森の木々と
大地に根を伸ばす草がなびく音だけが聞こえてくる。

辺りを見回してみたがことりの姿が見つからない。
失敗、だったのか?
そんな……。

俺の歌は、
想いは、届かなかったのか?

ミシッ!
お腹のあたりで嫌な音がした。
すると村雨のボディに綺麗に縦にひびが入ったと思ったら
バァン!とまるで桜の花びらのように木端微塵に砕け散った。
あの時の”雫”のように。
ギターの弦6本が細い1弦から順番にはじけ飛び
ネックはちょうど真ん中のフレットから真っ二つに割れ
手からこぼれ落ちるように地面に破片が拡散する。
肩からするりとストラップが流れるように地上へと吸い込まれていく。
まるで力をすべて使い果たしたかのように。
魔力ってヤツに耐えられなかったのかもしれない。

村雨。
すまない……。

うっ……
急に力が抜け膝から地面に落ちそのまま前のめりに倒れこんでしまった。
両手も動かず支えることも出来なかったので体全体を強打してしまい、
体に激痛が走る。
この前と同じく”魔力”を使いすぎてしまったんだろう。
もう頭のてっぺんから足の指の先までピクリとも動かない。
ササササーと時折大桜を中心にして周りで生い茂っている
木々の葉のかすれる音だけが耳に聞こえてくる。
なんだか闇に体が浸食されそうな感じがして恐怖する。

くそっ!くそっ!くそっ!
ちくしょう!
自分の無力さに打ちひしがれる。

先生、朝倉。
ごめん。
俺、ダメだったよ。

結局何も出来なかった。
しょせん俺の歌ではことりの気持ち、
変えることも動かすことも出来なかったってことか。
精一杯やったつもりだ。
けれど、結果が伴わなければ何も意味がない。

ことりが戻らないって事は
世界が明日にでも完全に無くなってしまうってことなんだろうか?
そもそも明日なんてくるんだろうか?
消えてしまったらどうなるんだろう?
天国にでも行くのかな?
でもそこでまた彼女と会えるならそれはそれでいい……

訳なんてない!

こんなんじゃ、父さんに顔向けできない。
志半ばで逝ってしまった父さんだって
もっと生きていろいろやりたかったに決まってる。

それに俺は往生際が悪いんだ。
たかが1回でダメだったからって諦めてたまるもんか!
2回だろうが3回だろうがやってやる!

動いて、くれよ。
体に力を込めて立ち上がろうとした時だった。

大桜の向こう側で
どさっ!と何かが落ちるような音がした。
なんだ?
ありったけの力を振り絞って片ひざ立てて
ようやく上半身だけ起こすと
大桜の木の幹の裏側から何かが見えた。

まさか?!

動かない体を奮い立たせて
這いつくばって匍匐前進で
少しずつ少しずつ近づいていく。

大桜の根元の向こう側に風見学園本校の女の子の制服、
あのクリーム色のジャケットとブルーのギンガムチェックの
ワンピースが視界に入る。
近づくにつれ見覚えのあるロングブーツ、長い髪、
そして右の前髪あたりにつけている水色のばってん型のバレッタ。

服が石などであちこちすり切れ、
土で泥だらけになりつつもようやくそこまでたどり着くと

ああ、ああああ。

もう何も言葉が出なかった。

胸元に祈るように両手を重ねて、
桜の花びらの絨毯の上に眠るように横たえてる。
姿を見ただけで泣きそうになった。
いや、もう泣いていたかもしれない。
ただ嬉しくて嬉しくて嬉しくて。

さらに近付いて表情を覗き込むと
どこからともなく舞い降りてきた桜の花びらの一欠けらが
彼女の頬に落ち着くと眠り姫がゆっくりと瞳を開いた。

「凛……くん」
ひさしぶりに聞く声は、
もう何年も聞いていないような感じで、
でもそれは間違いなく彼女のもので。
上半身だけ起き上がると降り積もっていた桜の花びらが
はらはらと舞い落ち、彼女はこちらに近づいてきて
汚れることなんておかまいなしに俺を抱きしめてくる。

温かい、このぬくもりも
肌の感じも甘い香りも
間違いなく本物の彼女だ。

「聞こえたよ、凛くんの歌」
とど……いたんだ、俺の歌。

俺はようやく動いた右腕だけを彼女の背中にまわして
声を絞り出すようにして
「二度と、俺の前から勝手に居なくなるな。 
 もし次にやったら……一生、一生許さないからな」
「うん」


つづく

―――次回予告
みなさんこんにちは、鷺澤美咲です。

ことりさんが戻ってこられて
よかった。
本当によかったです。

凛さん、
もうことりさんの手を離してはいけませんよ。


さて次回は……

長い間ご愛読ありがとうございました。
いよいよ、いよいよ次で最終回です。

去りゆく人を島から見送り、
そしてことりさんから
自分が消えてしまいたいと願った理由が聞かされます。


次回、D.C.F.L 最終回「そして……」
長らくの次回予告拝読ありがとうございました。

みなさん最後まで読んでくださいね。


凛がことりのために作った曲

Crystal Kay 恋におちたら

D.C.F.L (ダ・カーポ ファンダメンタル・ラブ)
第117話「セカイハカノジョトトモニアル」

家に帰りさっそく作曲からとりかかった。
港からの帰り道、
イメージだけは頭の中にあったので
それを具現化させるだけだし、
H.C.Pでも俺のメインの仕事の一つでもあったから
夕方にはほぼ完成形が出来てしまった。
ひと段落したところで
グウウ、と不意にお腹が大合唱を奏でる。
そういえばずっと作業に集中していたから
お昼ごはん食べるのすっかり忘れていた。
時刻もすでに夕方6時を過ぎかかっている。
部屋を出ると廊下もリビングも真っ暗だった。
あれ、おかしいな。
母さんこの時間なら仕事から帰って来ていてもよさそうなのに。
残業でもしてい……る。
まさか……。
サーっと背中に嫌な汗が流れていく。

慌てて部屋に戻って携帯を取り、
アドレス帳を確認してみたが、
悪い予感は的中するのか母さんのアドレスが無くなっていた。

っ!
再び部屋を出て母さんの部屋まで向かうが、
美春の時と同じくドアの存在がなくなっていた。

う、う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

思いっきり壁に拳手を叩きつけてしまう。

ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!

何度叩いたって状況が変わらないのは分ってる。
けれど、そうせざるをえなかった。
心の底から湧きあがる悲しみとか怒りとか
そういった負の感情をどこかに吐き出さないと冷静でいられない。
右手がズキズキ痛んだが、
それよりも心が細い針で射し込まれたような気がした。

たった数時間でこれかよ!
今朝一緒に朝ごはん食べて、
「行ってきます」って言って外へ出て、
「行ってらっしゃい」の言葉が最後だなんて。

家族と呼べる人が誰も居ない。
とうとうひとりぼっちになってしまった。
それは本当に悲しいことだな。

でも、不思議と絶望はしていなかった。

ことりさえこちらの世界に連れ戻せればきっとなんとかなる。
それが、唯一の希望だった。

…………………………………………………
……………………………………………
………………………………………

ん?
寝ぼけ眼で辺りを見回すと自分の部屋だった。
時計の針は5時を過ぎている。
あれ?
俺どうしてたっけ?
目の前にある机の上には
言葉が羅列された白い紙とシャープペン、
すり減った消しゴムにそのカスが乱雑していた。
あ、そうか。
歌詞書いてたんだ。
どうやら夜中までやっていて
そしてそのまま机の上で眠ってしまったようだ。
ヘッドフォンもいつの間にか外れて首にまで落ちてるし。

窓から見る外の空は白みがかっていて
もうすぐ朝が来るのを待ち構えている。
ようやく出来上がった歌詞。
だけど正直自信がない。
H.C.Pで活動を始めてからはもっぱら作曲担当で
これはことりの仕事になっていたので
歌詞にはさっぱり手をつけなくなったからだ。

誰かが「いいよ、これ」と言ってくれれば
多少なりとも自信が持てるんだろうけど、
もうそれを評価してくれる仲間もいない。

まだ道化師に所属していた時は
いっぱい曲と歌詞を書いてテツさんに見せては
話のネタにされダメ出しを食らいまくり
相当何度か落ち込んだ記憶があるしなぁ。

だからもしこれをテツさんに見せたら
笑われそうな気がしてならない。
でもこれが俺の彼女に対する”想い”ということだけは間違いない。

それに今日が最後のチャンスの日。
これでことりを連れ戻す事が出来なかったら世界は完全に消滅して
もう二度と朝日にお目にかかることはない。
映画とかだったら世界を救うための救世主的扱いなんだろうけど、
あいにく俺はそんなヒーローなんて柄じゃない。
「っしゃ!」
自分で自分の両頬を叩いて気合いを入れて立ち上がる。

どちらにせよコレでいくしかない。
他の方法なんて思い浮かばなかったし。
今の自分にこれ以上のものは作れない。

結局のところどうあがいたって背水の陣。
だから、あとはやるだけだ。

リビングに行き朝食はトースターで焼いた食パンに
美春が大好きなマーマレードのジャムをのせ、
後は気合一発のため店はなくなってしまったのに
何故か豆は家にあった瀬馬さん特製ブレンドを
コーヒーメーカーで作りブラックでいただくことにした。

脳が活性化されたところで
部屋に戻り相棒の手入れを始める。
弦をラジゲージに張り替え
チューナーで音階を整える。
軽く道化師のスタンダードナンバーを弾いて
弦の張りや音の鳴り響き具合を確かめる。
出来あがった歌詞と楽曲の最終確認。
準備を整えたところで
「いってきます」
と、誰も居ない家なのに挨拶してから鍵をかけ
外に出ると思わず足を止めてしまった。
目の前に異様な光景が広がっている。
道路があり標識があり電信柱はあるけれど、
周りの家がなくなっていた。
でも完全ではなく遠くに数件、まばらにぽつりぽつりあるぐらいだ。
まるで台風か何かで一瞬にして全部吹き飛ばされたかのようだ。
やはり先生がおっしゃっていた”加速度的に消えていく現象”がピークに近いんだろう。

俺は肩にかけた相棒を背負いなおして
一路芳乃家を目指した。

………………………………………………
…………………………………………
……………………………………

「出来たんだね」
「はい」
芳乃家に到着し、
玄関で出迎えてくれた朝倉に通された寝室、
と言っても畳の上に布団がひかれていて
そこにパジャマにカーテガンを羽織った先生が
上半身だけ起こしている状態だった。
いつもはアップサイドテールにされている髪が下ろされていて
なんだか落ち着いた外国の令嬢に見える。
近くによって横に相棒を置いて正座する。
日頃の多忙さと魔力が急激に低下してしまった影響で
先生の体力は極端に低下してしまったらしい。
医者に見せてもただの過労と判断されるオチだからと
病院には行っていないようだ。
いや、そもそも初音島総合病院すら消えてしまったんだから
本土に行かないと医者すらいないのが実情だけど。

先生にはあらかじめ俺の作戦を電話で説明しておいた。
特に反対されず「やってごらん」と言われたので
素直に進めさせてもらった。
どちらにせよ俺とことりが心を、
気持ちを通じ合わせなければこの問題は解決しないらしい。
今の自分にこれ以外の方法が思いつかなかったのも事実。

「ごめんね」
「いえ」
本当は先生が一緒に行ってくださって
魔力の増幅をしてくれればいいのだが
やはりもうその力すらないらしい。
ことらとしてはことりを助けるヒントをくれただけでも十分だ。
後は俺ががんばればいいだけの話。

それに朝倉が事前に
大桜の前の魔方陣を書き直してきてくれたらしいし。
だから準備は万端だ。

「行ってきます」
立ち上がろうとしたその時だった。
「待って」
「ギター貸して」
そう言われたので素直にギターケースから相棒を取り出し
目の前に置くと先生はボディに両手を添える。
すると先生の髪が重力に反比例し、
体の周りが青白く光り輝き始める。
魔法が発動しているんだ。
でももう魔力はないって……。

しかし光が一瞬で消えると、
「先生!」
糸が切れた操り人形のように後ろへ倒れていくがその瞬間、
朝倉が上手く受け止めてくれた。
相変わらず抜群のタイミングでフォローできるヤツだな。
「だい、じょうぶ。 力を……使い…果たして、眠くなった……だけだから」
ふわりと桜の香りがした。
「ま、ほうが発動す……れば、楽器が……力をかし……てく……れる……よ」

目の前に置かれた村雨に目が行く。
コイツが俺に力を貸してくれるようになったと、
そう解釈していいんだろう。
相棒をギターケースへしまい、
「さくらは俺が見ておく。 行って来い!」
「ああ」
俺は飛び出すようにして外へ繰り出していった。


1時間後、
俺達3人は早速あの大桜の前にやってきた。

音量を出す機械が欲しいと言われたのでまた一旦家に帰り
さすがに大型のチューブアンプなんて持ってこられないから
9Vの電池で稼働する小型のミニアンプを準備してきた。

大桜の前では先生と朝倉がメジャー片手に
どこから持ってきたのかライン引きで真白な
直径10m程の円の中に六芒星を書き込んでいた。
先生曰く魔法陣ってヤツらしい。
円上にはどの国のとも思えないような文字を
先生が本片手にチョークで書き込んでいく。

マンガみたいな、
朝倉の家で以前みせてもらった
RPGゲームの魔法を繰り出す時の光景が
目の前で繰り広げられるって不思議な感じだ。

さて、先生の立案した作戦はこうだ。

奏人の魔力は演奏していくと
徐々に加速していくタイプらしい。
なので力がピークに達した時、
先生が魔法陣の力を発動させ魔力を倍加、
その力でゲートをこじ開けるという算段だ。

準備が整ったとのことなので魔方陣の中央に移動する。
「初めてのことで戸惑う事かもしれないけれど、
 自分には力が、魔法があるって信じるんだ。
 信じないと魔法は発動しないよ」
「分かりました」

相棒のネックストラップを肩からかけシールドをジャックに差し込み
ミニアンプの電源を入れ音量をMAXにする。
ギター側も最大にしてピックアップもリア側にして太い音を出せるように調節する。

魔法、か。
そんな眉唾物に頼らざるおえないとは、と思う反面
ことりの手がかりが全くない状況では信じるしかない。

否定的な邪念は取り払い
深呼吸をして心の中で呪文のように
”自分には魔法が使える力がある”と何回も言い聞かせていく。

さて、何を弾こうかな。
選曲は任されたので直前のインスピレーションに従おうと考えていた。
曲は何か力が溢れるような
テンションが高くなるようなものがいいな。

う~ん、
だったらやはり”道化師”しかないよな。
俺がギターを、音楽を目指したきっかけでもあり
ことりとのつながりも深いものだ。

この消えつつある世界で”道化師”も”ない”存在になっていた。
携帯で5人のアドレスが消えていたし
メジャーデビューに際して設けられたHPもなくなってしまっていた。
でも俺の中に、俺の心の中にはきちんとまだ、ある。
みんなで演奏した時の
熱気も残響も
すべて、手の中にある。

よし、Let's Go!

いつもどおり弾いているだけ。
何か自分から力が溢れているかどうかなんて何も感じない。
本当に俺に魔力なんてあるんだろうか?
いや、信じるんだ。
父さんはこのために来たんだ!
父さんが出来なかったことを俺が代わりにやるんだ!
そしてことりをこちらに呼び戻すんだ。

体がノッてきた。
「よし。 姫りん、行くよ!」
先生が日本語とも英語とも聞き取れない不思議な言葉で、
いわゆる”呪文”ってヤツを唱えると魔方陣が青白く輝き、
俺の体からもまるで風呂上りの湯気のように
ゆらっと天へ登っていく。
自分の体が発光しているなんて、
まるでマジックショーか何かにしか見えない。

カッ!と目が眩みそうな閃光が発すると
目の前の大桜にはバチバチバチっと雷みたいなスパークと
空間が裂け漆黒の穴が徐々に広がっていっていた。
暴風が吹き荒れ まるでブラックホールのように
周りの物を吸い込んでいく。
こんな現象が目の前で起こってるなんて……
俺が起してるのか?
これが”奏人”の力なのか?

あまりにもの光景に茫然となり
一瞬手が止まりそうになったが
「続けて!」と先生の大声で”はっ!”と我に返り演奏を続ける。

正直なんだかよく分らないけれど俺はただ弾き続けるだけだ。
ことり、帰ってきてくれよ。
君がいなくちゃ、俺は……。

「すげぇ」
「これなら!」
朝倉と芳乃先生が歓喜の声音をあげてくれた。
しかし……。

「あ、ゲートが……」
バチバチッ!
激しいスパークの後、
漆黒の闇の穴はこちらの意思とはまったく無関係で
どんどん小さくなっていき最後には消えてしまった。
空しい風だけが俺達をあざ笑うかのように通り過ぎていく。

なっ!
突然力が抜けて膝が折れてしまう。
「姫乃っ!」
自分の体のコントロールが利かないっ!
まるで鉛か何かを背負わされてるかのような、体がものすごく重い。
地面がまるでスローモーションのように差し迫って来て
”あ、俺倒れるんだ”と自分の事が自分の事でないような感じになっているが、
手でそれを防ごうにも脳から腕に命令してもちっとも言う事を聞かない。

ヤバイ!
そう思った瞬間だった。
「大丈夫か?」
地面にダイブする手前で朝倉が抱え起こしてくれた。
た、助かった。
ナイスフォローだ朝倉。

肩を貸してもらい体を引きつつ
大桜の木の下まで運んでもらって
木にもたれかかるようにして体を休ませることにした。
指先もまったく動かせることができず
まったく何も出来ない状態だ。
く、苦しい。
はぁ、はぁ、はぁ。
しんどくて息するのも辛い。

魔力ってヤツはこんなにも体力を消耗するとは……。

先生はその間何か調査しているようで
朝倉はそんな先生を手伝っている。
しばらく休憩してようやく体が動くようになったので
のそりのそりと二人に近づく。

「失敗、ですか?」
我ながらバカなのか
分りきっていることを聞いてしまう。
静かにうなずく先生。
「白河さんが、拒絶してるんだと思う。
 こっちの世界に戻ってくるのを。
 だから弾かれたんだ」
「そんな……」

ことり、なんで。
なんでなんだっ!

もう一度やろうとしたが先生に止められた。
今の俺の力量だと1日1回が限界らしい。
修行をつめば数回には引き伸ばせるらしいが
それは10年以上かかると言われた。
それにこれ以上やったら命の保証すら出来ないとも。

先生曰く身をもって体験したが
やはり魔力は相当な体力を消耗するらしく
使い過ぎると下手をすれば命すら削りかねないようだ。
文献では過去に魔法の力に溺れて自滅した人間もいるらしい。

くそっ!

……………………………………
………………………………
…………………………

先生の計算によるとあと3日で世界は完全に消えてしまうと予測された。
世界の崩壊はすでにもう知らず知らず限界まで来ているらしい。
その証拠に初音島駅が無くなっていたし
初音島と本土を結ぶ鉄橋すら消えてしまっていた。
駅前の商店街もまばらになり人もあまり見かけなくなってきた。
家だけあって人がいないゴーストタウン状態のところだってある。
この崩壊を止めるには明日中にはことりをここに連れ戻さないと
復旧限界点を突破して仮に彼女が返ってきたとしても
もうこの世界は元に戻ることが出来ないらしい。

だから今日含めて3日だから
今朝からだと残されたチャンスはあと2回。
たった2回しかない。

久しぶりにかなりしっかりと睡眠をとったので
体力は完全に戻っていた。
もう一度あのゲートとやらを開ける自信はある。

ベッドから降りリビングに入ると母さんはすでに起きていて
朝食の準備をしていてくれた。
よ、よかった。
母さんがまだ居てくれたことにものすごく安堵感を覚える。

「あら、おはよう凛」
「おはよう母さん」
何気ない日常。
何気ない会話。
何気ない出来事。

今回の事で当たり前の事であった事が
どれほど大切であったか実感出来た。
いつもと同じ日常は時には退屈でもあるけれど、
本当はそれが一番大事なものだったんだな。

リビングを見回すと妹の姿が見えなかった。
さすがにまだ寝てるのかな?
いつも人が気持よく寝ているところを
フライングボディアタックで強襲されてきたのでたまにはお返しでもしてやろうかな。
なんて思いつき、
「美春起こしてくるよ」
「美春? 誰?」
え……。

「やだ凛ったら。 もしかして女の子連れ込んでるの?」
なっ!

ドクンドクンドクン。
心臓から流れていく血液が逆流しそうな、
それでいて血の気が引いていくような感じだった。
母さんに驚かれないようにトイレに行くふりして美春の部屋まで向かったが
なんとそこにはもう部屋の扉すらなく壁になっていた。

そんな、そんな、そんな……。
くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

思いっきり壁に八つ当たりしたい衝動に駆られる。
がグッとこらえた。

美春……。

いつもバカ明るくて楽しそうで、
こんな俺を兄と慕ってくれて
大切な大切な大切な俺の家族で妹だったんだ。
かわいい俺の妹なんだ。
なのになん……でっ?!

………………………………………
…………………………………
……………………………

学校に行こうにもその学校すらもうなく、
今俺がやるべき事は決まっているので
とりあえず芳乃先生のお宅へお邪魔することにした。

美春の事を説明すると残念そうな表情をされ
さらに悪い知らせと、
先生の魔力がもうほとんど底を尽きかけていて
魔法陣の増幅が出来ないと言われた。
つまりあのゲートとやらを自分の力で開かなくっちゃいけない。

「ごめんね。 何も力になれなくって」
「いえ。 先生はよくやってくれてます」
先生がいなかったら彼女の居場所も
連れ戻せる可能性すら看破できなかったからな。

「あのね、姫りん。  彼女の願い、何か思い当たるフシはない?
 それを解決しない限り何度やっても同じだと思う……」

ことりが何故”消えてしまいたい”と思ったのか、か。
いまだに分らない。
彼女が抱えていた問題って?

俺にも言えないような心配事、
不安を抱えていた?
しかしそれがなんなのかさっぱり見当がつかない。
あ~、なんで俺ってこんなに鈍いんだろう。
自分自身が嫌になる。
彼女なら俺の事なんてなんでもお見通しなのに。
一体俺は今まで彼女の”何”を見てきたんだろうか?
彼女の事を本当に理解してきたのだろうか?
それすら怪しくなってきた。

ちょっとでもいい。
何か、彼女が変化したしゅんか……ん。
「先生」
「それが原因かどうかはわからないんですが
 よくよく考えてみるとことり、
 桜が枯れ始めてからなんだか様子が変だったんです」
そうだ。
消えてしまう前の数日間を思い出してみると、確かに変な点がいくつかみられた。
やたら俺にべったりだったし、
いつも以上に甘えてきた。
それに離れるととても寂しそうな表情もしていたっけ。
今までそんな事無かったから”変だな”とは感じていたけど、
でもさほど気にもとめていなかった。

思い返してみれば彼女の態度に違和感があった。
「先生みたいに桜が枯れたせいで魔力がなくなった、とか」
いや、まさかな。
ことりまでも俺みたいに摩訶不思議な力があるとは思えないし。

しかし俺の話を黙って聞いていてくれた先生は眉間にシワを寄せて
「いや、案外当たってるのかもしれないよ」
「これはあくまで仮定だけれど、
 たとえば昔何かを願ってそれを大桜が受理した。
 だけど桜は枯れ始め魔力を維持出来なくなってきたから
 その願いが消失してしまって……」
「消えたくなった?」
先生は静かにうなずく。

「先生」
「俺が”母さんに会いたい”という願いも受理されたんですよね?」
「うん」
「その仮定が正しいのなら魔力がなくなってきているのに
 何故俺は母さんと一緒にいられるんでしょうか?」
もし魔力の力が作用して母さんと再会したのなら
その効力が消えたら元に戻ってもいいはず。
「魔法はね、現在進行形の”願い”のみ力が作用しなくなったようなんだ。
 君の願いはもう完了しているよね?」
そっか。
確かに俺の願いはもう叶ってるからな。
先生は悲しそうな表情を浮かべて
「音夢ちゃんもね、実は危険な状態なんだ」
そう言えばことりが消えてから学校を休んでたよな。
小さい頃から入退院を繰り返してたって聞くし。
あ、でももしかしたら先生みたく魔力を、
な訳ないか。
朝倉とは義理兄妹で血のつながりがないんだから。
「病気か何かですか?」
否定するように左右に首を振って
「昔ね、お願いしたんだよ。 
 お兄ちゃんと”恋人同士になれますように”って」
なっ?!
それって現在進行形の願いなんじゃ……。
朝倉さんがそんな願いをしていただなんて。
まぁ確かに世間体を考えたらいくら血が繋がっていないとはいえ
義理兄妹で恋人同士になるのは難しいのかもしれない。
俺が転入して間もない頃、杉並が仕組んだとはいえ学校での批判もあったし。
「魔法はそんな音夢ちゃんの純粋な願いを消そうとしている。
 けれど”想い”で無理やり押しとどめてるから体に相当な負荷がかかってるんだ」
先生は話を続けられて魔法の事はまだ完全には理解出来ていないけれど
人の”想い”の力は時として魔力を凌駕することもあるらしい。

またゲートを開かせて欲しいと嘆願してみたが、
渋い顔をされてしまった。
今の状態では自分がサポート出来ないから
昨日よりも魔力の維持が極端に低下するだろうと。
それにことりが”帰ってきたい”と願わなければダメらしい。

くっ……。
あれでダメなら、今日なんて絶対無理じゃないか。

「姫りんはさ、本当に白河さんの事が好きなんだね。
 うらやましいな。 そんなに一途に想われて」
「先生……」
「君の気持が届けば、すぐにでも帰って来てくれそうなんだけどね」

先生はもう1回文献をあらってみると言われたので
俺はやることもなく、とりあえず外へ出て
あてもなく歩くことにした。

……………………………………
………………………………
…………………………

島の桜達は完全に枯れてしまい
もう空に桜の花びらが風に舞う事もなくなった。
空ってこんなにも広かったっけ?

もういっそのことこのまま何もせずただただ自然に身を任せて
みんな全部消えてしまった方が、
天国とかで会えるのかな?
消える=死ぬという事と同義語じゃなければ
そもそも天国なんてあるんだろうか?

気がついたら桜公園まで来てしまっていた。
中央の噴水広場まで来た時、
少しばかり疲れたので噴水の縁のところに腰を落とす。

ふぅ。

この先に、あの大桜があるんだよな。
今の、俺の力だけでゲートを開かなければ
ことりを連れ戻せない。
けれど、力が足りないからまた失敗する可能性が大きい。
それにことりの意思が反発したら……。
ああっ、もう!
一体全体どうしたらいいんだよ!

周りは閑散としていた。
というか誰も居ない。

なんだか一人だった。
たった一人だった。
この世界にたった一人だけ取り残されてるような感じだ。

ふざけあえる友達も、
音楽を一緒にやってくれる仲間も、
隣でいつも微笑みかけてくれる最愛の彼女もいない。

…………………………………。

昔はそれでも平気だっただろう。
他人の事は気にしない、
ただ自分の勤めだけをこなせばいいだけの平坦な毎日だった時は。
でも今は、今は、今は……。

もう、一人は嫌だ。
嫌なんだ。

孤独に耐えられないのが”弱さ”なら、
俺は弱くてもいい。
それでもいい。

否、結局一人で生きようとしていたこと自体が傲慢なんだ。
誰だって一人で生きてなんていけない。

ことり……。
君をどうやってつれ戻せばいい?
何か悩んでるんだったら一人で背負うなって、
あの夏祭りの帰り道言ったのに?!

「君の気持が届けば、すぐにでも帰って来てくれそうなんだけどね」

ふと、先生がおっしゃっていたセリフが心によぎった。

俺の、気持ち……。

はっ!
そうか。
そう、だよな。

よく思い出してみたらことりはどんな時でもどんな事でも
俺の辛さや悲しみを一身に受け止めてくれていた。
その大きな愛情で。
俺も、俺も同じようにしてあげればいいんだ。

彼女が何に悩んでるか知らない。
何に苦しんでるかも、
辛いかも知らない。

それをきちんと聞いて受け止めて
一緒に解決方法を探してあげればいい。

だから、俺の気持ちを届けよう!
きっと、帰ってきてくれるはずだ。

でもどうやって伝えればいい?
今の俺でゲートを持続できるのは約5分間だけだ。
その間に何ができる?

脳みそをフル回転させていた時だった。
ふと、聞こえてきたのは覚えのある声とメロディ。
道化師の歌だ。
桜公園では一定時間有線放送を流すようになっている。
安っぽいスピーカーだからか、
はたまた年代物だからか、
時折音が割れてテツさんの歌声がひどく感じる。

テツさん、マヤさん、シュウさん、クマさん、サラさん。
ふと、いつでも頼りになる兄貴達の顔が思い浮かぶ。
俺、もうどうしたらいいと思う?
なんて、聞きたくても俺の携帯のアドレスに5人の名前はない。
だから連絡がとれないし、
仮にとれたとしたってそれは単なるアーティストとファンの関係だけだろう。

きっとこの世界が始めからことりがいなかったようになったからか
俺もおばあさまの所に引き取られなかったことになっているからか、
道化師と出会わなかった事になっていたようだ。

記憶では残ってるのに、
史実は違うだなんて、悲しすぎるな。

テツさん、
「誰かに思いを届けたいのにはどうしたらいい?」
天を仰ぎ、居もしないのに尋ねたりなんてしてみる。

もちろん、答えなんて返ってくる訳
「俺達には最強の武器があるだろう、凛」

えっ……。
テツ……さん?!

慌てて周りを見回したがもちろん誰も居ない。
なんで声が聞こえたんだ?
今の、夢?
それとも幻?

それでもいいや。
仮に目の前に居て尋ねたらその答えが返ってくるだろうと思えるから。

「ありがとう」
そうか、
そうだった。
そうだったね。
俺達には最強の武器がある。
それは一緒にバンド演奏して
俺があなた達から教わった事だ。
言葉も宗教も国境も
下手をすれば宇宙すらも超える最強の力が?!
忘れてたよ。
かつては俺もその力に救われた一人だった。

あと一日しかないけど、
出来るか?
いや、やるんだ?!

立ち上がり空を見上げ
まぶしいぐらいの太陽を片手で遮った。

そうだ、世界はまだこんなにも明るいんだ。
だから、
だから、
ことりも、友達も、家族も、世界も、
全部全部取り戻してやる!

俺は新たな決意を胸に秘め
一路天枷家へ急いで駆けて行った。


つづく

―――次回予告
みなさんこんにちは、鷺澤美咲です。

まさか凛さんにそのような大役が運命づけられていたとは。

しかしようやくことりさんをこちらへ
連れ戻す方法が手に入ってよかったですね。
後はがんばってください!


さて次回は……

ことりさんをこちらの世界へ連れ戻すため
曲を作り上げた凛さん。

さぁ後は歌うだけ。

D.C.F.L最終回まであと2話です!

次回、D.C.F.L 第117話「セカイハカノジョトトモニアル」
みなさんまた、読んでくださいね。