トルストイ『復活』 | crisの高校野球観戦記

トルストイ『復活』

まず記念すべき第一回目はロシアの「文豪」、トルストイの『復活』を取り上げてみたいと思います。実は私はロシア文学はかなり好きでたくさんの作品を読んでいます。もしこのブログを毎回読んで下さる人がいるとすればロシア文学に関する私のマニアっぷりにびっくりされることでしょう(笑)それはさておきトルストイはあまりに知名度が高すぎるので名前くらいは知っておられる方が多いかと思います。『復活』という作品を読んだことがなくても特に年輩の方なら「カチューシャ可愛や、別れの辛さ…」という歌が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
さて、この『復活』、物語としては清廉な恋愛小説のような感じですが、ある意味でトルストイの特徴が最もよく出ているのではと思います。というのはトルストイは作品を通じて自分の哲学を語りたがる傾向が特に強いからです。まあ文学者なら誰でも多かれ少なかれそういう傾向はありますが、トルストイの場合は作品の最初から最後まで「人はいかにして生きるべきか」という哲学を振り回して読者を引っ張っていこうという意図がありありと出ています。当時のロシアの政治体制等についての批判が露骨ですし、全体にヒロインのカチューシャの悲劇がクローズアップされ過ぎているきらいがあり、余計に話が押し付けがましく感じられるのです。そういう意味ではむしろ『イワンの馬鹿』のような寓話の方がトルストイの哲学はダイレクトに伝わっているのではないでしょうか。ドストエフスキーやツルゲーネフと並んで「ロシアの3大文豪」とされているトルストイですが彼はむしろ哲学者や求道者としてのイメージが強いのです。そういう意味では私が文学としていいなと思うのはドストエフスキーの方なんですが、彼についてはまた改めてコメントしたいと思います。